マルタ共和国
Jan.10.99

マルタ共和国【Malta】


地中海に浮かぶ、小さな国。とても、日本人が行くとは思えない、島国で、私は二週間、夏休みを過ごしたことがある。
なぜ、こんな時期にマルタを思い出したかというと、たまたま「今まで旅行したなかで、一番よかった所は何処」と、質問されて、とっさに上がったのが、このマルタ共和国だった。
ヨーロッパの国は、覚えきれないが、恐らく20カ国くらいは、行ったと思う。その中で、一番楽しかったのが、この国だった。
妻も、この国はお気に入りである。また行こうねと言いつつも、まだ果たせていない。

当然、二週間の間、日本人観光客なんか、一人も合わなかったし、ホテルのフロントで、チェックインの時、国籍を"Japan"と書いたら、「日本人を見たのは、生まれて初めてだ」と感嘆された。

マルタは、歴史の古い国だ。先史時代のB.C.5000年くらいから文明が栄え、いまだに解明されていない、建造物がいっぱい残っている。
現在の首都は、Valettaだが、昔はMdinaという街が首都として栄え、いまでも遺跡がいっぱい残っている。

地理的には、イタリアのシチリア島から、さらに南に向かった所にあり、3島からなる。
本島の他に、Gozo島、Comino島(夏しか行けない、無人島)があり、物好きな私は、この三つ全部に行ってきた。

かつては、英国領だったため、英語が結構通じるが、地元のマルタ語が公用語。
このマルタ語ってのは、言語学的には、アラビア語に近い。アルファベットで表記される、唯一のアラビア系の言語だと聞いた。
「神」なんて言葉は、「アラー」だと言うから、完全にアラビア語だ。但し、「ありがとう」なんかは、「グラーシェ」と言うので、これはイタリア語に近い。

物価は随分安かった。海は奇麗で、海産物は豊富だった。
地元の市場みたいな所で、材料を買ってきては、キッチンでいろいろ作って食べた。
レンタカーを借りて、国中を回ったが、信号機というものを、一度も見かけなかった。そんな、のどかな国である。


少し話が、外れるが、マルタ騎士団国という国があるのを、ご存知だろうか?
慌てて地図を、広げても絶対に見つからない。
なぜなら、領土も国民も持たない、不思議なバーチャル国家だからだ。
それでも、ちゃんと外交関係を、多国とも持ち、外交官や、パスポート、通貨などを発行する事が出来るのだ(でも、国民がいないから、お目にかかれない)。

元々は、11世紀ころに、十字軍遠征に伴って、エルサレムに巡礼する、カトリック教徒の旅の安全を、ケアする団体として、聖ヨハネ騎士団というのが、結成された。
これが、段々当初の目的から、逸脱して軍事力を持ち始め、スペインから、マルタ島を領土として、与えられた。
これが、騎士団たるゆえんだが、その後、ナポレオンが、エジプト遠征の途中で、立ち寄り、占領してフランス領にしてしまった。

この時、騎士団達は、為政者としての立場を追われ、亡命政権として離散したのだが、ナポレオンの後に、イギリスが占領して、そのまま領土も、国民もいない状態で、200年が経過し、現在に至っている。
ところが、当初のカトリック教徒の支援団体としての、医療活動や、社会福祉事業は、各国続けられ、国家は、存在しているという、歴史に翻弄された、不思議なバーチャル国家なのである。
私も、ドイツに住んでいた頃、良く黄色い車に、赤いマルタ十字のマークをつけた、この団体が、社会福祉事業をやっているのを、よく見かけたもんです。