安楽死
Apr.20.99

安楽死【euthanasia】


ここ、オランダでは、安楽死が合法化されている。

もっとも、無制限に認められているわけではなく、一定の条件を満たした場合においてだが、大半の国では、まだ法的に認められていない。

アメリカでも、州によって、見解が違ったりする、宗教的にも、医師の倫理上でも、なかなか結論の出ないテーマである事は確か。

先週、米国のミシガン州で、安楽死を推進した医師、Dr. Jack Kevorkianが、第二級殺人罪の判決を受けた。

現在70歳になる、Kevorkianは、自己の申告ベースでは、いままでに130件の、安楽死を手がけたと言っている。

彼は、安楽死の為に、「自殺装置」なるものを発明し、それを安楽死を希望する患者に使い続けた。


この、Kevorkian氏は、医師見習いの時代から、人間の死に、異常なまでの、観察意欲を持ち、病院に死期の近づいた患者がいると、その死の瞬間を克明に観察していたという。

その他にも、民族問題について、過激な発言をする事もあり、正常な感覚の持ち主かどうかという点でも、議論が多かった人ではあった。

それもあり、医師免許は既に剥奪されているのだが、裁判での、Kevorkian氏の主張は、無罪であり、苦しむ患者を、苦悩から解放してあげたという、論点が、殺人罪に問われるのかが、長い間争点になっていた。

彼が、自分の患者の自殺幇助をし、死に至る過程をビデオテープにおさめ、CBSが、公開したことから、この裁判が急に注目を浴びるようになった。


Kevorkian氏は、あくまでも、医療行為として適正な処置をしたと主張。

患者が、耐え切れない痛みから逃れるために、自ずから死を希望したと、遺族も「Kevorkian氏に、安楽死の措置をとってもらって、感謝している」と証言するに至り、非常にむずかしい裁判となった。

4月14日に裁判所の下した判決は、「有罪。懲役10年から25年」というものだった。

判決にあたり、裁判長の見解は、

"You can criticize the law,

you can write or lecture against the law, you can speak to the media or petition the voters."

"But you may not break the law, or take the law into your own hands,"

というものだった。

法治国家のあり方とは、まさにこうあるのは、当然だろうと思う。

別の国にいけば、認められるものでも、法がある以上は、罪は罪。


しかし、どうだろう。判決を下した同じ時に、ユーゴスラビアでは、NATOも、セルビアも、死を望んでいない人間を、殺していながら、両者とも、止める気配はない。

武力行使にでていなければ、この短期間に、セルビア側の「民族浄化」活動は、エスカレートしなかっただろうし、難民として逃亡する間に、命を落とす人も、いなかった筈だ。

誤爆で、NATOの爆撃で犠牲になった市民がいるにも関わらず、この攻撃を指揮する人達は、殺人罪で問う事が出来ないのが、やはり法律なのである。