半身の記憶


「ん・・・ざく・・すぅ・・」
「わかってるって」
腕を引いて身体を引起こして、胡座をかいた膝の上に落とす。後ろに倒れ込む背を両腕で支えて、ゆっくりと動きを再開する。逃れようとでもするように浮く腰を捕まえて、腰を押さえつけたら・・・

後ろに支えを失った身体がガクンと倒れた。慌てて背中を支えて自分の胸に凭れさせる。
「あぶないなぁ」
セフィロスは荒い息のまま、がくがくと頷く。その度に回された腕が、鉄の戒めと化してザックスの首を引く。ザックスは、セフィロス自身にも刺激を与えてやれるように、腹をぴったりと密着させて上下に揺らした。この体位を好むのは、こんな風にお互いを抱き合う事が出来るからなのかもしれない。お互いの背に腕を回して、お互いを強く抱きしめて。


貪り食いたい

狂気にも似た熱情がザックスを駆り立てる。

足りない
物足りない
全てを己のものにしたい

掴んだ顎は口付けの合図。待ちわびる唇に自分の乾いたそれを押し付ければ、その舌を絡め徒労と遮二無二もがく。暴れるセフィロスの舌をからかう様に掠めて、歯列の裏を探り、夢中で貪って来る唇に軽く歯を立てる。その余裕ありげなザックスの仕種は、セフィロスを苛付かせるのに。

「う・・ん・・」
混じり合った唾液の味を楽しむ間すら、セフィロスはもどかしげに硬い黒髪を掴む指を緩めようとはしない。強く舌が吸われる感覚が、ザックスの腰に痺れるような疼きをもたらす。薄く目を開けてみると、目の前に小刻みに震える銀の睫毛。薄い瞼に舌を這わせれば、羽毛のような溜息がザックスの喉をくすぐる。

足りない
しめやかな肌が貪欲に吸い付いてきても
身中の熱を熱いほどに感じていてすらも
まだ、物足りない

セフィロスは腹に当たる自分のものが、双方の汗やら自分自身の先走りの汁やらでぬるついて、滑り易くなったのが物足りないのか、もどかしげに首を振る。それが、セフィロスの感情表現。
「どしたの?ヨくないの?」
わざと意地悪く問うてはみるが、返事が返ってこない事は判っている。
「ねぇ、どうしたの?ちゃんと言わなきゃ分からない」
それでも聞いてみずにはいられない。

今、前を刺激してやれば直ぐにいってしまうだろう。でも、中だけで感じさせてやりたい。自分を。自分の熱を。だから強く抱きしめて思い切り突き上げる。少しでも多く楽しませてやれるように。少しでも多く快感を与えてやる事が出来るように。

セフィロスはこの期に及んでも、声を出すまいとでもするようにザックスの肩に顔を押し当てたままだ。
「つっ・・・てぇ!」
いきなり歯を立てられて、ザックスは思わず悲鳴をあげた。咄嗟に顔を上げたセフィロスを不意に握り込んでやれば、驚いて出した声が引金になって、乾いた喘ぎは、いつしか悲鳴に近い嬌声にかわる。

聞かせてくれ、その声を
お前が俺を感じていると
聞かせてくれ

もっと深く、もっと激しく・・・いくら与えても、与え足りない。気持ちいいか?満足しているか?俺を感じているか?

「俺が欲しいか?」
頷く度に揺れる髪が、淡い光を弾く。さざめいては濡れた肌を愛撫する。
苦しげな鋭い息遣いが、肩に食い込む指が、ザックスにセフィロスの厳戒が近い事を教える。
「言ってみろ・・・俺が欲しい、と」
セフィロスの根元をきつく戒めて問うザックスの息も荒い。
「ん・・・ほし・・」
拘束されて達する事の出来ないセフィロスは、ガタガタと全身を震わせて、ザックスの方に一層爪を食い込ませるが、その痛みですらも今や快感を掻き立てる。
「言え、セフィロス。俺が欲しい、と!」
凶暴な情欲に突き動かされ、ザックスは尚もセフィロスを突き上げる。
「欲しい・・・ざっく・・ス!欲しい!」

「うわ・・・!」
開放された途端、セフィロスは白濁した精をお互いの胸に飛ばし、セフィロスの体内が大きくうねって、ザックスもまた、その波に呑まれてしまう。溺れる者の刹那の喘ぎ。顔中に接吻の雨を降らせて、ザックスは自分が飲み込まれて行くのを感じる。


放った後の開放感と虚脱感。
空っぽになった陰嚢が、日向に転がった猫のように満足げに蠢いている感覚。


なのに

この物足りなさは何だろう?
この狂おしさは何だろう?

どこかで半分に分かれてしまった自分を懐かしむように
どこかで置き忘れた自分の居場所を求めるように
いくら抱きしめても、物足りなさが付きまとうのは何故だろう?

俺達は帰りたいのかもしれない。お互いの中へ。自分の居場所へ。

そんな事を考えながら、軽く身じろいたセフィロスを抱く腕を緩め、ザックスは軽く寝息を立てはじめたセフィロスの髪に向かって呟く。

セフィロス

セフィロス、俺を感じたか?



華南しゃん、ちゃんとヤってるけど・・・ただやってるだけですね。ごめん・・・私って、たぬ師匠の影響、とっても受けてます。対面座位はたぬ師匠んとこのセフィロスが気に入ってる体位の筈。