土の中では今にも卵がかえろうとしているようだ。じっと見ていると地面が何度か盛り上がった。
顔を出したのは3匹のニブルワニの子供だった。
きゅうきゅうとないている。鳥みたいに刷り込みはあるんだろうか?
宝条が言うには、3匹とも雄だそうだ。
「お前が名前をつけてあげなさい」
というので、セフィロスは一番大きいワニをセフィロス、後の二匹をそれぞれ、ザックス、クラウドと名付けた。すぐにわかるように、背に油性のインクで印をつけた。
3匹のちびワニは水槽の中のプールで泳いだり、レンガの島の上でひなたぼっこをしたりする。
3匹は仲が良さそうで、ちょっと羨ましい。
ところで、宝条が言うには、ワニは温度によって、卵の中でオスかメスかが決まるらしい。3匹とも同じ場所にいたから仕方ないけど、ちょっと可哀想だ。女の子がいないのは。とくにザックスには。
「でもそのニブルワニは普通のワニとは違うんだ」
どう言う事かはまだ詳しくわかっていないので、これからこの3匹を観察して行くそうだ。
X月X日(晴)
水槽の中を覗いてみると、3匹はそれぞれ離れて泳いでいた。
昨日は仲良くじゃれあっていたのに、どうしたのだろう。お互いをまったく気にしていないようだ。
水槽の中の温度は24度だ。
「宝条、この温度でいいのか?」
「さあな。ワニにとって快適な温度はわからん」
餌の魚の切り身を投げ入れてやると、ザックスとクラウドはたくさん食べたが、セフィロスはあまり食べなかった。
きっと24度はあつくて食欲がないのかもしれない。
X月X日(雨)
今日は肌寒い。ワニはは虫類だから、寒さには弱いだろう。
水槽の中では3匹が身体をよせあっていた。きっと寒いのだろう。
温度は20度になっていた。
X月X日(曇)
今日の温度は25度だ。
水槽の中ではまたザックスが元気がいい。セフィロスはプールの中を泳いでいた。クラウドはザックスに追っかけまわされている。
「どうやらそのワニたちは温度によって行動がかわるようだな」
俺がいないうちに、特徴のある行動を発見したそうだ。
は虫類はどうか知らないが、魚類はたとえばオスばかりを水槽にいれた場合、なんと、その内の1匹がオスにもかかわらずメスのような行動をとるそうで、なかにはメスになってしまうこともあるらしい。
「どうやらこの3匹は温度によって、オスメスの役割がきまるようだぞ」
クラウドの上にザックスがのっかっている様子を見て、俺は背筋が寒くなった。
X月X日(晴)
今日の温度は26度だ。
水槽の中のワニはどうしたことだろう、ザックスがやたらと元気がいい。でもクラウドとセフィロスはじっとしている。
じっと眺めていると、なんとザックスが二匹に攻撃を加えはじめた。
クラウドは水の中に逃げたが、セフィロスは水槽の隅に押しやられて小さくなっている。ザックスはどんどんとセフィロスに体当たりしていた。
ザックス「今日は26度だぜ!」
セフィロス「くっ……なぜ俺ばかり虐めるんだ!」
ザックス「クラウドはさっき降参したからな。あんたも素直に負けを認めちゃあどうだ?」
セフィロス「誰が……」
ザックス「は、あんたが涼しい顔をしてられるのもそのうちさ」
なんだかそんな風に言っているような気がする。
X月X日(晴)
温度計は27度になっていた。
水槽の中を覗いてみると、なんてこった!今日はザックスとクラウドがセフィロスに攻撃を加えている!
俺は助けようとしたが、宝条が人間がさわると、においがワニに移るからだめだと言った。においがつくと、たとえ親子でも敵と間違える場合があるそうだ。
セフィロスは2匹におしあいへしあいされ、ひっくりかえってしまった!
セフィロス「くっ、どうする気だ!」
ザックス「へっへっへっ、どうだい、いい眺めじゃねえか」
クラウド「ほんとだよ、やっぱり綺麗だ。セフィロス」
セフィロス「あっ、やあっ!」
ザックス「ほう?あんた、ここ感じるんだ」
セフィロス「やっ、ああっ……!」
ザックス「クラウド、押さえてろ」
セフィロス「ひっ……やめろっ!」
ザックス「やめてください、だ。ちゃんと言えるだろう?その可愛いお口でいってみな」
セフィロス「んっ、ひっ、ああああ!」
俺は水槽をがたがた揺らすと、3匹はびっくりして水の中に逃げ込んだ。
良かった……俺は安堵した。
X月X日(曇)
今日はどうだろう?温度計は28度になっている!大人しかったセフィロスも攻撃的になるんだろうか。もしかしたらセフィロスの反撃があるかもしれない!
セフィロスはのしのしとザックスに近寄った。
俺はその様子をじっと息を潜めて見守っていた。
がんばれ!セフィロス!勇気を見せろ!
ザックス「おお、あんた……」
セフィロス「今日は28度だ……とうとう、この時がやってきたようだ。今まで受けだった俺にも、ようやく反撃のチャンスが巡ってきたというわけだ」
クラウド「せ、セフィロス……?あんたは生まれながらの受けだろう?俺達に抱かれるのをあんなにも喜んでいるじゃないか」
セフィロス「ばかな……いつまでもお前達のいいようにされてたまるか。私だって時には逆になりたい」
ザックス「俺に受け役をしろっていうのか?ずっと受けだったくせに生意気だぜ。あんたは受けって運命なんだよ」
セフィロス「ふっ……生まれながらの、などという言葉は好かん。運命などという言葉も敗者の使うもの。なにも努力をせず拗ねたやつらの常套句だ。私には相応しくない」
ザックス「はん、わかっちゃいねえな。あんたは……」
セフィロス「何をわかっていないというのだ?」
クラウド「セフィロス……今日は27.9度なんだよ」
セフィロス「な……!!」
ザックス「つまり、あんたは今日も受けってことさ!!」
「ああっ……!!」
セフィロスはよろよろと床に両手をついた。
「俺の敵とは……運命なのか……」
はらはらと涙を流すセフィロスをよそに、水槽の中ではワニセフィロスのうえにのっかってザックスが腰を振っていた……
おわり
ワニにになっても鬼畜い絶倫ザックス、素適過ぎ〜vv華南しゃん、お見事!な短編をどうも有難う。しかも「わに」にかけてくれるなんて、ワタクシ最高に幸せざまぁすよ(はぁと)ホント、華南しゃんって軽くてひねりの効いた文章が上手で羨ましいです。でも、こんな素適日記を頂けてわたしゃ本当に果報者(^^)図々しく強請ってよかったvv