「ハローウィーンですわね!」
女神の高笑いに不吉なものを感じたのは俺様だけじゃなかった筈だ。
去年はグラード学園祭に「冥界ツアー」なんて出し物で荒稼ぎしたものの、冥界から帰ってこれなくなったガキ続出(当たり前だろーが)で、サガ、ムウ、シャカが冥界中、迷子探しをしたもんだ。この騒ぎで、ハーデスのおっさんは、またいじけて瓶に潜り込んでしまい、冥界どこでもドアを提供した俺様にまでとばっちりが来て、サガには教皇宮まで呼び出されて延々説教されるし、ムウには聖衣の修理にワザとらしく手を抜かれるし、シャカにまで散々嫌味を言われて、俺様ってばマンモス・アンラッキーっぴ。だいたい、俺様は女神の聖闘士らしく、女神の願いを聞き入れただけなのに・・・・俺様、かわいそう・・・
ともあれ、去年のイタイ経験を踏まえて
「今年の学祭は、外部の者の手伝いは一切禁止と致します」
と、辰巳が宣言したのも、無理はないのだっぴ。
「あら、アタクシは学祭なんてどうでもいいわ。でも、折角年に一度のハローウィーンなのですもの。いつもお世話になっている聖闘士のみなさんに楽しんで頂きたいの。それがアタクシからのせめてものお礼です」
な〜にが、お礼なんだか・・辰巳ときたら
「そんなにも人のことをお気に掛けられるとは・・ご成長なさって・・」
なんぞと涙ぐんでいる。ホント頼りにならないおっさんだぜ・・・だいたい、ハローウィーンってのはアメリカやらイギリスの行事じゃねーか。ここはギリシアだぞ、ギリシア。
「聖闘士の皆さんは幼い頃から修行と訓練に忙しく、楽しい行事を子供らしく満喫する機会も無かったのです。アタクシがゼウスやハーセス、ネプチューン達との和平を成し遂げ、束の間の平和を楽しんでいる今こそ、聖闘士の皆さんに僅かな慰めと童心に返る時間を楽しんで頂きたい・・・それが、アタクシの願いです」
サガまでが、うんうん肯いてる始末。こーゆー単細胞だから黒サガに乗っ取るられっるんだっつーぴ!それに「和平を成し遂げた」って何だっぴ?みんな女神のキレぶりに呆れて、触らぬ神に祟りなしで見てみぬフリを決め込んでる、って方が正しいんじゃないか。こいつら絶対たぶらかされてるぞ・・・
「それで、一体具体的には何をなさろうと、お考えなのですか」
と、しゃしゃり出たのは、半分透けてるアイオロスの幽霊。こいつ、女神に負けずイベント好き、しかも幽霊が活躍するイベントだってんで、異様に張り切ってるのがミエミエだっぴ。
「聖域にホーンティッド・ハウスを設定して、皆さんに肝試しをして頂きます」
ほーんてぃっどはうすぅ???
「そして、最後までその宮を抜ける事の出来た方には、カボチャ型バッグ入りキャンディーを差し上げる・・・訓練をも兼ねた、そして楽しい企画だと思いますの・・・おーほっほっほ!」
「流石は女神、素晴らしい企画力であられる!しかも、訓練を兼ねているとは・・・常に私たち聖闘士の事を気遣っておられる、優しいお心使い」
そりゃー、お前は死んでるから訓練も何もあんまり関係無いもんな。
「不肖アイオロスも、出来る限りのお力添えをさせて頂くつもりにございます」
「ありがとう、アイオロス・・・あなたには、いつも感謝していますよ」
「にっ・・・兄さんっ!!俺も手伝うぜ」
「アイオリアッ!!」
二人はがば!と抱き着いた・・・が、当然アイオロスはすぽりとアイオリアの身体を突き抜けて、派手な音をたてて床に突っ伏した。学習しない連中だなぁ・・勝手にやってろよ・・・・
「それで、そのお化け屋敷は、どこに創られるのですか??」
わくわくとミロが聞く。このお天道様頭はすっかり乗り気だ。
「聖域広しといえども、これ以上に適した場歩はございませんわ。勿論・・・巨蟹宮です!」
な・・・!?!?!
「ふむ・・・なんたって聖域一おどろおどろしいからな」
ぼそりとシュラが呟いた。失礼な!!!だったら、半分透けてるアイオロスが煙草の煙の間をプカプカ浮かんでるお前んとことか、夜中に聖衣が70年代のディスコ・ソングに合わせて一人でカシャカシャ踊り狂ってる人馬宮とか、聖衣を修理しているフリしたムウが藁人形に五寸釘打ってる白羊宮とか、存在自体がおどろおどろしいシャカが目ぇつぶったまま座ってぶつくさお経を唱えてる処女宮なんかは一体何なんだっぴ!!
「凡人の貴卿が、神に等しい私を畏れるは無理からぬ事。だが、しかし、おどろおどろしいとは、貴卿の宮の如き陰惨にして怨念漂う状況を指す言葉。少し言葉の使い方を勉強したまえ」
だから勝手に人の心を読むなって、いつも言ってっだろ!全くやな野郎・・・だいたい、あの巨蟹宮のどこが「陰惨で怨念漂う」ってんだよ!歌の上手な陽気なハッピー・デスマスク達が一杯居て、とっても賑やか和気藹々じゃないか・・・
「日本から氷河達も来るのか・・・ならば、私もハローウィーンのカップケーキでも焼かねばなるまい・・・」
あのなー、カッコ付けてそういうコト呟かないでくれる。寒い --- サムすぎるんだよ、テメーは!さすがの温厚にして寛大な俺様も、むかっぴーで荒れてきたっぴよ!
「これは賑やかになるな!聖域がこんなに華やぐのも、この間の青銅12宮突破競争以来だな。がーはっはっは!」
うるさいぞ、牛!
「貴鬼が喜びますね」
ムウ・・・お前まで・・・(TT)こいつ、アルデバランの気を惹こうとしているな。
しかし、何をみんなで勝手に乗り気になってるっぴ?だいたい俺様は、自分の宮を使っていいなんて言ってないぴよ。
「デスゥ・・アフロ、何の仮装しちゃおっかなん。デスはどうするのん?」
え?え?え?
アフロ????
ふっ・・・・・君ならどんな扮装をしたって、その美しさを隠す事は出来ないさ・・それでは、俺様は君の扮装に合わせて宮を飾り付けよう・・・君の美しさを一層引き立てるようにね・・・


って・・・うわー!!俺様、今、何言った???ああ(TT)アフロディーテ
君の美しさは、マジで罪っぴよー!!!(号泣)
でっぴー、マンモス胸騒ぎ・・・