土産角長牛頭蓋骨的顛末記/ロングホーンの逆襲、の巻その結末


{デ〜ス〜マ〜ス〜クゥ〜!!!!!!!}

マントラの欠片だの、天使の羽だのを撒き散らしながら、派手な雷光と共にシャカのテレパシーが飛んできたのは、デスマスクが夕食のパスタを茹でようと、鍋をかけた直後だった。
「な・・なんだよ、いきなり?!?」
「神聖なる私の宮を、よくぞ破壊してくれたな。どうしてくれようか?!」
「どうしてって、お前、俺様は処女宮を壊した覚えは無いっぴよ!変な言いがかりは付けないでもらいたいっぴね!」
「神に等しい、この私が言いがかりだと? ならば、見るがよい!己の諸行を!!」

シャカの怒りの小宇宙で鍋の中の水は一瞬にして沸点に達し、こりゃ都合いいっぴ、グラシア、グラシアとパスタを鍋に入れかけていたデスマスクの脳裏に、直接送り込まれた実況中継テレパシーの画像に、流石のデスマスクも、慌てて箱半分のパスタを床にぶち撒いてしまった(細いパスタが目に刺さった、台所床の死仮面が悲鳴をあげたのは言うまででもない)。なんと処女宮では、なにやら角の長い牡牛が大暴れしていたのである。

「な・・なんだよ、その牛!一体どっから、持ってきたっぴか?」
「何処から持って来ただと?白々しい事をぬかすでないわ!覚えが無いとは言わさぬ!!」
「俺様、金牛宮の住人以外に牛に知合いはいないっぴよ。そういや、ちょっとアルデバランに似てるっぴか?ん?ん?でぇっ!もしかして、その牛って?
「そのもしかだぁっ!」
「うわっ!近所迷惑だから、時と場所を考えずに目ぇ開けんなよ!夕食時だってのに、隣の魔鈴が怒鳴り込んできたって知らないっぴよ」

デスマスクとシャカのテレパシーが飛び交う下、獅子宮の厨房では怒りに震える魔鈴をアイオリアとレオの聖衣が必死に宥め、巨蟹宮ではパスタがぐりぐらぐりぐら煮えるその間も、牛は処女宮の支柱に体当たりをするかと思えば、シャカ自慢の曼寿紗華を食い散らす、を繰り返している。それは紛れも無く、デスマスクが癇癪をおこしてデスクイーン島を破壊してしまった際、とばっちりをくって骨と化した痩せ牛だった。但し、蘇生のついでに精を付けたか、今では立派な筋骨隆々たるブルだったが。

「骨が勝手に牛に戻ったのは、俺様のせいじゃないっぴよ。そんな、文句言ってんなら、さっさと始末すればいいじゃんか」
「・・・・・・私は無益な殺傷はいたさぬ」
「よっく言うよ。さばいて食っちまえば無益じゃないっぴ。ビーフカレー、おいぴーし。骨から煮込んで(じゅるっ)。そういや、アルデバランは丸焼きにしたらどうたって言ってたな。炭火でゆっくり、丸焼きもいいかも(ごっくん)」
「・・・・・折角ムウが丹精込めて再生したものを、食してしまっては申し訳が立たぬ・・・」
「なんか、随分とこだわるっぴね」
「こだわってなどおらぬわ!」
「やけにムキになるな・・・・・・そういえば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
印度人は牛は食べないんだったっぴね。もしかして、お前も・・・

ぎゃーっはっはっはっは!!!

笑い転げていたデスマスクは、シャカがかっと、その目を見開いている事にも、背中に極彩色のマントラを浮かび上がらせている事にも、全く気が付いてはいなかった。
「そっかぁ、インドじゃ牛は神聖だもんなぁ!ムウのやつ、わざと・・・こりゃいいや!がはははははははは!!

・・・・・てんぶ・・・・
「ん?」


ほうりぃ〜ん〜!!!!

「あじゃぱー!!でっぴー、またまた冥界で、お世話になるっぴかぁ?!?」



南回帰線上を宇宙高く吸い込まれていく竣光は、地球上各地で観察、記録された。そして、「二輝(ニッキー)」と名付けられたロングホーンは、今日ものどかに処女宮の庭で草を食んでいる。巨蟹宮で煮え続けていたパスタが一体どうなったのか、それは作者の知る所ではない。

合掌



牧場のうたを口ずさみながらメニューに戻る