「そこちょっと、右にずれてんぞ!おらおら!もっと左だ!」
天井に張り付いてる死仮面達に指図して、乞食坊主のシャカのせいで穴の開いた宮の屋根を修理中の俺様を下から呼ぶ声がする。見下ろしてみれば、何の事はない、シャイナだった。
「なんだ、W杯以来だな。俺様に何か用か?」
「あんたに用があるから来たのさ。でなきゃ、こんな辛気臭いトコにわざわざ来るもんか」
全く愛想のない女だな。だから嫁にも行けないんだっぴ。
「何だよ。俺様はマンモス忙しいの。用ならさっさと言え」
「とのかく、ちょっと降りてきておくれよ」
だーもー、面倒くさい女だな。だけど、確かに屋根と下とで怒鳴りあっているのもバカらしいから、ちょっくらテレポートして、ひらりと地面に降り立った。俺様ってばかっこいい・・・
「あんたに用があるのは、実はあたしじゃなくて、このコなんだけどね」
シャイナの背後から、おどおどと顔を出したのは星華ちゃんである。星華ちゃんはハーデス騒ぎの後、日本に帰ったんだが、高校卒業後は結局、住み慣れたアテネで大学に通うことにしたのだ。
「お、星華ちゃんv久しぶりvv相変わらず、めんこいっぴね」
なんてったって現役女子大生、お化粧もほんのり。女らしくって、なかなかいい感じっぴ。シャイナも少しは見習えよ・・・・と、いえば、シャイナっていつから星華ちゃんと仲良しになってんだ?
「何言ってんだい。あたしと星華ちゃんはずーっと前からマブダチさ」
「マブダチって・・・やっぱお前、元ヤンぴーだろ・・・なんかウラがありそうだな・・・ん?
あ!そういや、お前、星矢にほれ・・・」
「サンダークロウッ!!!(ばりばり)」
オマエな〜、いきなり引掻くなよ!いくら俺様が優しいジェントルマンでも、いい加減にしないと、そのうち冥界に突き落とすぞ!!しかし、ウマを落とすには、まづ姉からって魂胆か、こいつ?
「あの・・・お忙しいデスマスクさんを煩わせて、ほんっとに申し訳ないんですけど・・・」
「こいつに気を使わなくてもいいんだよ。忙しいっても、どうせ屋根の修理なんだから」
「うるせーぞ、シャイナ!!で、セイカちゃんっ、そりゃ俺様って黄金聖闘士だし、毎日世界の平和を護るため、みんなの地球を守るため、多忙なのは事実だが、他ならぬ君のためなら、このデスマスク、敢えて時間を割くも厭わぬさ・・・ふっ・・・・」
「なぁにカッコつけてんだか」
「シャイナ、いい加減にしないと黄泉比良坂をゴロゴロ転がるハメになるぞ!!雉も鳴かずば撃たれまい、って諺覚えとけ。さ、セーカちゃん、こいつのことは放っといて、遠慮しないで言ってみな」
「ありがとう。デスマスクさんって優しいんですねっ」
ふふっ・・・解りきったことを言うんじゃないぜ、お嬢さん。
「あの、バレンタイン・デーが近いから」
うん、うん!で、俺様に告白に来たのかな?
「デスマスクさんに」
だけど星華ちゃん、俺は阿修羅の道に生きる男・・・俺に惚れちゃあいけないぜ・・・
「お聞きしたい事があるんです」
解っておくれ、君の涙は見たくない・・・・全く俺様ってば罪なオトコvv
「デスマスクさんは、とっても親しくしておられるって聞いたから」
へ?
「だから、デスマスクさんなら、彼にアタシを印象付けるようなプレゼントには何を選べばいいか知っておられるかもって・・・きゃーっ!言っちゃったぁ!!シャイナ〜、あたしっどうしようっ!!」
なに?俺様じゃないの?
なんだよ、見る目の無い女だ。所詮はシャイナなんかと仲良くしてるだけあるっぴ!
P!
P!
「で、誰のことっぴよ?それを言わなきゃ、どうにもなんないっぴよ」
あんまし焦らすものだから、忍耐強い俺様もイライラしてきた。俺様はどっかの坊主とは違って、人の考えを盗み読みはしないから、ちゃーんと口に出して、はっきり物事言わなきゃわかんないの!
「実は・・・」
はいはい。さっさと言えって!
「シャカ様・・・(ぽっ)」
「ああ、シャカね。シャカなら俺様の大親友・・・って、
シャカァ〜!?!?!」
マジ?
この娘、確かに13年間も呆けてたらしいし、いかれた馬坊主の実の姉だし、変人だとは解ってたけど・・・しかし、それにしても気は確かなのか??
「シャカって、あのシャカか?あの、半分寝てる?いっつも他人の思考を盗み読みしてる電波野郎の?あの癇癪持ちの迷惑男の??食い意地張った、あのエロ坊主の????」
「煩いね。他にどんなシャカがいるんだよ」
「サガとカノンみたいに、他にもシャカがいたら、世界はとっくに滅亡してるっぴ!」
「だから、あのシャカなんだよ。ほんとにワケの解らない男だね」
「お前が口出しするから話がややこしくなるんだっぴ!ちっとは黙ってろ!!」
「あのさ・・・取り入った事聞いて悪いんだけど・・なんで、よりによって、あのシャカを・・・・(激しく脱力中)」
「実はぁ・・この間シャカさんが、アタシのバイトしてるスーパーに、お見えになったんですぅ。商品を選ぶのを少しお手伝いしたんですけど、そのとき、近くでお顔を拝見しちゃってぇ・・・きゃー!!!!」
「運のいい娘だね、このやろっ!きゃっ、きゃっ」
シャイナ・・・お前まで・・・
「それに、近くに行くと、とってもイイ匂いがして・・・」
カレーの匂いじゃないのかよ・・・・ん〜?そっか、こないだ、サガにバレンタインのプレゼントを買いに行ったときだな。
「それにぃー!きゃっきゃっ シャカ様ってとっても綺麗なだけじゃなくって、とっても強くて、まるで夢の国の王子様なんですもの!それに、すごーく紳士だって言ってたしぃ」
そりゃ、あいつは年中夢の国にいるようなモンだが、その王子さまってのは何だよ。だいたい、あの食い意地張った自己中野郎のどこを引っ繰り返すと「紳士」なんて言葉が出てくるんだか全く理解不可能・・・ぴ・・・
「一体、誰だよ?あいつのこと『紳士』だなんて言ったの」
「えっ?サオリちゃんですよぉ」
サオリちゃん・・・・?
俺様の不可解そうな表情に気付いて、シャイナが言葉を引き取った。
「冥界に行った時、シャカが一緒だったろう?あん時のエスコートが、すっごく洗練された感じだって言ってたんだよ」
サオリちゃんて ---------------------
女神のことかぁ??
俺様、なんか力が抜けたっぴ・・・蟹座の黄金聖闘士、デスマスクをして、ここまで戦意を失わせるとは、アイドル狂いの娘二人組、畏るべし・・・しっかし、あの乞食坊主、女神の前では、よっぽどネコを被っていたらしいな。
だけど、あいつはサガと、しっかりちゃっかり毎晩ベタベタの仲。でも、あいつってば、やさぐれドリ(一輝のこと)もたまに、処女宮の地下に囲ってるから、可能性は無いとはいえないんだが。
でもなぁ・・・・・だからって、なぁに本命はムリでもメカケその2くらいには、とも言えないっぴ・・・
「あんねぇ・・・・言いたかないけど、シャカは既にもう・・・・そのだねぇ・・・」
ジャニーズコンサートの女子中学生みたいにきゃーきゃー盛り上がってるトコを悪いんだが、ここで気を持たせちゃ可哀想だよな。俺様って優しい・・・(ほろっ)でも、流石の俺様でも、シャカがオトコと出来てるなんてマンモス言いにくいっぴよ・・・
「あ?サガさんのことですかぁ?」
え?知ってんの??
「もっちろんですぅ!でもアタシ、そんな事ぜんっぜん気にしませんから〜」
???でも俺様、ぜんっぜんワケわかんね〜
「サガさんも素敵だしぃ・・・」
「なんか見たら、ちゃんとアタシ達にも報告するんだよ!」
「いやーん、シャイナのえっちぃvv」
なんなんだ、こいつら・・・・もう俺様の理解の粋を、高くガニメデまで超えてるっぴよ・・・・でっぴー、ボーゼン・・