Lovers' Bath Time 「やっぱり赤が一番好き。薔薇も赤が一番好き」 もとより生温かいだけだった桶の中の湯は、すっかり冷めてしまって、二人の体温と同じ温もりを留めているだけだ。もう結構な時間、ここでふやけてるよな、とデスマスクが言えば、 俺は、お前とこうしていられたら、別に何所でもいいんだがな・・ そんな思いは口には出さない。緩やかな重みを自分の膝に感じて、滑らかな肌の感触を腹に感じて、鮮やかな髪の甘い香りが鼻先をくすぐるのを感じていられれば、どこでもな・・・ アフロディーテは、ぱしゃぱしゃとと水を弾いては、水面に輪が広がって行くのを飽きもせずに眺めている。ぱしゃり、ぱしゃり・・小さな飛沫が飛んでは、雪白の肌に赤い染みを着けては滑り落ちる。 デスマスクは、ふうっ・・と、煙草の煙を宙に向かってとばし、紫煙が天井に向かって、ゆるやかに上って行くのを目で追った。そこには、死仮面を引き剥がされた死体が一つ、すっかり血も抜かれて逆さ吊でぶらさがっている・・・ (CM: いつまでも瑞々しいお肌を!エリザベート・バートリ伯爵夫人もご推薦!美容と健康には、やっぱり生き血風呂が一番ですねっ) |