Slow Dance



Dance



微かな歌曲が流れている。何処かで聞いた事のある旋律だが、思い出せない・・そんな類いの曲だ。曲は時折かすれて途切れ勝ちである。古いレコードなのかも知れない。今時レコードなんて・・と思われるかもしれないが、ここは、古い蓄音機にくるくる回る黒い盤・・そんな情景が似合う場所なのだ。

蛍の光のような淡い金の光が、ホォルを照らしている。無数の、金の、光。壁だけではなく、天井も床も、金の光で覆われている。夢幻の空間であると・・

そんな、薄暗いホォルに鮮やかなのは、軽やかに踊る銀蒼色の髪だけ。華やかに微笑んで、くるくると回る。歌はホォルの全体から聞こえてくるようだ。四面、天井、床・・・そんな事がありえるだろうか?

銀蒼の長い髪を揺らしてくるりと回り、アフロディーテは微笑う。
「今度はお前が回る番」
銀蒼の瞳が、悪戯っぽい色を浮かべてきらめいた。
「あほ!回んのは背が低い方なんだよ!」
悪態吐くが、アフロディーテはころころと笑うだけだ。何言ってんのさ、殆どかわんないじゃないか、などと言って、またくるりと回る。
自分に背をもたげた、確かに同じ位の背丈の、だが一回りは華奢な身体に腕を回して、デスマスクは、回んのは小さい方なの、と耳元に囁いた。くすぐったげに肩をすくめると、後ろに回した手で突っ立った銀の髪をかき上げながら
「じゃ、そういうコトにしておいてやる。ホントは俺の方が高いんだけど」
肩に頭を乗せて、アフロディーテは上目遣いに囁く。
「ね?」
背筋を伸ばすと、成程、銀蒼色の頭の方が、突っ立った銀白色の髪よりも少し高い。
「ヒールが高いから、だろ。ばーか」
「デスマスク、意地になってる」
「なってる」
「なってねぇったら!」
ひょいと華奢な身体を抱き上げて、くるりと一回りする。
「そら、回ったぞ」
アフロディーテが楽しげに笑い、やっぱり意地になってると言った。うるせえな、と呟いたデスマスクは、アフロディーテを抱き上げたままホォルを後に宮の奥深くへと去って行った。


彼らを見送って、歌い続けていたデスマスク達も、一つ、また一つと静かになっていく。一面のデスマスク達が音を静め瞼を閉じれば、金の光も段々まばらになる。彼らが眠りに落ちれば、ホォルには深い闇と沈黙があるばかり・・・



(でっぴーの呟き:
やっぱ俺様ん宮の音響設備に適う宮は、聖域中どこを探したって他には見つからないっぴよ!可愛いデスマスク達、今夜はありがとう。お礼に明日は熱湯ぶっ掛けの刑にしちゃうっぴ!うきゃっvv)


注)でっぴーは184cm、アフロは183cmらしいです。