でっぴー、バレンタインデーを考える、の巻

 バレンタイン・デーが近いってんで、ここ聖域も、なんとなく華やかだ。イベント大好き女神の影響か、ここんとこ聖域は何かと、こういう特別な日のたんびにお祭り騒ぎになっちゃうのだ。

 毎年この季節になると --- というより、毎月イベントの直前になると盛り上がっちゃうミロとカノンのお天道様コンビのみならず、今年はムウまでが、ここ数年かけて編み続けていたアルデバランへの羊毛セーターが遂に完成だとかで浮き足立ってるらしい。
 星矢と軽く練習試合のはずが、結局、聖衣をボロンボロンにされたユニコーンの邪武が(あの青銅ウマ・コンビは手加減ってものを知らないっぴからね)修復された聖衣におっきなピンクのハートがくっついていたと嘆いていた。かといって、ムウ本人に文句も言えず、今度は一輝に試合を挑んで、また聖衣を壊してもらおうなんて言ってたけど・・・ったく、あの連中は聖衣を何だと思ってるんだか・・・

 でも、でっぴーには2月の風が冷たい季節・・・アフロは相変わらず口もきいてくれないし・・・・・

くっすん・・・・・・


 はぁ?

 なんだって?

 地中海性気候のギシシアに冷たい風は吹かないって??

るっせーぞ!ゴタゴタ御託を並べると、冥界の穴に突き落とすぞ、ゴルァ!!!



「何を昼間から一人で、死仮面に向かって怒鳴りててているのかね?」
いきなり俺様の背後に現れたのは、毎度おなじみシャカである。
「よぉ。なんだ、今日はちょっと遅かったっぴね」
いつもは昼前にぬぼっと現れるのに、今日に限っては、もうすっかり3時のおやつ時だ。茶は11時、と勝手に決めてるこいつには珍しい。
「ちょっと下界に用があったものだからな。ふっふっふ」
シャカが妙に嬉しげに含み笑いなんぞしたものだから、死仮面達は恐れをなして、いきなり蒼褪めてしまった。

「お前が下界に行くとは、これまた珍しいっぴ。今頃シベリアじゃ熱波で、シロクマ野郎が溶けて流れ出してるんじゃないっぴか?がはははは!
「ふふっ・・・またカミュに焼きもちかね?見苦しい。だが、まぁ、いい・・・私には関係の無いこと・・・で、アフロディーテは、まだ先日、君が彼の薔薇を損ねたことを根に持っているらしいな・・・ふふふのふっ」
くわーっ!やな野郎!!!!

「まぁ、君も出遅れないで、アフロディーテの機嫌を取るべく、さっさとプレゼントでも調達に行けばどうかね?この、神に等しい私からの忠告だ。つまり、 ご神託のようなものだな・・・有難く受け取りたまえ・・・ふふっ」
なぁにが『ご神託』だよ、ナルシーが!って ------
ん?
「あ、もしかしてお前、サガにプレゼント買いに、下界に行ったのか?」
「まぁ、君には無縁だろうが・・・ふふふふっ」
ふふふふ、ふふふふと、気色悪い乞食坊主だ。

「で、何買ったんだよ。まさか、また去年と同じものじゃないだろうな」
シャカがサガに何を押付けようが知った事じゃないんだが、ふと、いやーな予感を感じて、俺様は思わず聞かずにいられなかったんだっぴ。なにしろ、こいつは去年のバレンタインデーには、 バー○ント・カレーのルーの箱に赤いリボンをくっつけてプレゼントした、とんでも野郎なんだから


「バレンタインにはチョコレートを贈るが慣習だが、生憎サガは甘いものは好まぬ。その点、色が少し薄いだけで、見た目は板チョコと殆ど変わらないからな」
シャカはワケも無くふんぞりかえって、エラソ−に言ったもんだ。
「で、サガはそれを食べたのか?」
「当然だ」
俺様の脳裏に、ふと特大カレールーをかじっているサガの姿が浮かんだ。愛の力は偉大っぴ・・・・

 しかし、サガの不幸はこれだけで収まらなかった。吹き荒ぶ風の中を、いつもと同じ薄着でふらりと現れたシャカが、湯気の立つ甘茶をすすりながら、俺様に尋ねたのは2月も末だった。

「してデスマスクよ、ホワイトデーというものは知っているかね」
「あん?当たり前だろ。今度は男の方からホワイトチョコレートを返す日だろうが」
「そうか・・・・」
博識な俺様の返事を聞くと、シャカは何処か遠いところを見る目で考え込んだ。え?なんで目を瞑ってるのに、『遠いところを見る目』がわかるかって?付き合いが長いと、イヤでもわかっちまうものなんだっぴよ。解りたくないけど・・・・

 暫く黙りこくっていたシャカは、ふいににっこりと嬉しそうに微笑んだもんだ。俺様はてっきり、シャカがサガに何か貰えるんじゃないかって期待してるんだと思ったっぴよ。

ところが、だ。

 あれは3月13日の金曜日、いつもより遅くに姿を見せたシャカは、俺様ん宮の台所に入ってくるなり、嬉しそうに ブルーのリボンをくっつけたハ○スの『牛乳から作ったまろやかクリームシチューの素』を引っ張りだしたっぴ。

「何だよ、それ」
「見て解らぬか?全く君は察しの悪い男だな。ホワイトデーのプレゼントに決まっている」
「はぁ?」
「男の方からホワイトチョコレートを贈ると言ったのは、他ならぬ君ではないかね。私はオトコであるから、明日サガにこれを渡すのだ」
どういう筋道で、そういう結論に行き着くんだよ・・・

「ホワイトデーにはホワイトチョコと言ったも君だ。少しは自分の発言に責任を持ちたまえ」
って、このルーがチョコの変わりかよ?いくらサガは甘いものが苦手だからって・・・・(遠い目)俺様の脳裏に、今度は特大クリームシチューのルーを齧っているサガの姿が浮かんだ。あん時は俺様、ちょっとサガっぴに同情しちゃたっぴよ・・・



 あれから一年、シャカもちっとは成長して、カレールーとチョコレートの違いくらいは解る様になっていればいいんだが。


「ふん!毎年毎年、代わり映えもしなければ成長も無い君と、神に等しいこの私を、一緒にして欲しくは無いものだな」
ほんっと、憎たらしい野郎だな。
「それじゃ、何を買ったのか、言ってみろよ」
「そんなに見たいかね?これだ」
シャカがもったいぶってスーパーの袋から取り出したのは -------


やっぱり、カレー・ルーだった。
でっぴー、マンモス脱力



「それのどこが去年と違うんだっぴ。やっぱりカレールーじゃないか!」
「よく見たまえ。去年は普通のバーモントカレーだったが、今年は

『じっくり煮込んだ熟成こくまろカレー

ブーケガルニ入り・激辛
だ!」
シャカは相当ムッとした表情で、俺様の鼻先に箱を突き出した。流石は激辛だけあって、強い刺激臭がつーんと鼻を抜ける。マンモス辛そう・・・(TT)

 別に俺様がこいつを食うわけじゃないんだし、どーでもいい事なんだが、サガってば一体何が楽しくって、こんな奴と付き合ってるんだろう・・・そして、そんな悪趣味野郎を教皇に掲げる俺達って一体・・・と、ふと物思いに沈んでしまう俺様だった・・・・・



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