注:これはフィクションです。 実在の人物、地名などとは一切関係ありません。 特に漫画家とか。 「待て!」 萩原はその声で相手がうすただと気付いた。あの下品なギャグ漫画を描いている男(萩原はちなみに、自分より単行本が売れている男が嫌いだった)。確か、あのやはり下品な漫画を書いている尾玉なみえと仲がよかった・・・あぁそうか彼女は既に死んでいる。下品だが面白い漫画を描く女だった。 「俺は戦う気はないんだ!」 やる気がないだって?バカな。このゲームでやる気がないっていうのは打ち切りを受け入れるって意味だ。トリックか?だとしても武器を持っていないのは・・・ 「は、萩原だよ」 「萩原さんか・・・大丈夫ですか?」 「あ、ああ、怖くて、さ」 ”さ”の音が終わらないうちに萩原は右手を持ち上げていた。距離5m。外すわけがない。 しかし、その先にうすたの姿はなかった。ほんの一瞬前に予想もつかない動きでうすたは左へ跳んでいた。セクシーコマンドーの動きを応用したものだなどと、萩原は知る由もなかったが。 そして、うすたがズボンのチャックを降ろしていた。なにをやってるんだこのバカは・・・そう思う間もなく萩原の目が閃光をとらえていた。股間から放たれたペン先が萩原の右手薬指をふっとばしていた。 ああ・・・あいつ俺の指を・・・Gペンを精妙に操る俺の右手指を! 「やる気十分なんだな」 うすたが言った。 「殺したくないが、俺はやらなきゃいけない。どうしても。」 萩原にはまだ余裕があった。なぜなら・・・うすたの股間は自分の胸にむけられていたからだ。そして上着の下にはウルトラジャンプが仕込んである。ウルトラジャンプがペン先を止めてくれれば、隙をみて・・・勝てる。 しかし、ことは予想以上に簡単に終わった。うすたの股間からは何も出てこなかった。ギャグ野郎。そいつはネタ切れだよ! 萩原は自分の銃に飛び付いた。 くるっと背を向けて逃げるうすたに立て続けに発砲した。一発が大腿部あたりに命中したようにみえたがうすたは山裾の木立に消えた。 くそ! 萩原はうすたを追うのは諦めた。 そして、見た。さっきまで何もなかった空間に、わき出したように現れたその男を。襟足がいささか余計な程に長い落ち武者のような頭、その顔の中に光る冷たい目・・・冨樫義博を。 >>冨樫vs萩原編へ 戻る |