注:これはフィクションです。
  実在の人物、地名などとは一切関係ありません。
  特に漫画家とか。





尾田は聞かないでおこうと判断したにもかかわらず、意思に反して言葉が口から漏れた。

「先生も・・・容赦なくやったんですね?前回?」

荒木は肩をすくめた。
「やったさ。詳細を聞きたいかい?ベテランを何人打ち切ったか?
新人を何人打ち切ったか?優勝するまでに?」

岸本が身をすくませるのがわかった。
「いや・・・いいです。」尾田は首を振った。「意味がないです、そんなことを聞いても。」

しばらく沈黙が落ちたが、ややあって、珍しく弁解するような調子で荒木が言った。

「仕方なかったんだよ。半分狂ってるような奴もいたし、平気で他人の漫画をパクろうって
いう奴もいたし、あからさまに同人狙ってやがる奴もいたし、
どうしようもないマンネリにおちいってしまった奴もいたし原稿落としまくる奴もいたし!
それでも連載が続く奴がいるのはどういうわけだ!?クソッ!クソッ!舐めやがって・・・!!」

荒木の独白は終わりそうになかった。
「せ・・先生?先生!?」岸本は怯えている。




荒木は我に帰った。
「あ・・ああ失礼。それでだ、比較的(私にとって)面白そうな奴はすぐに打ち切られてしまって、
派閥を作ることもできなかった。で、私は・・・じゃあ打ち切られることにします、
とは思えなかった。」
少し間を置いて、付け加えた。「やるべきこともあった。そのためには、打ち切られるわけには
いかなかった。」

尾田は顔を上げた。
「何を?」

「決まってるだろ。このくそやくたいもないジャンプのシステムを潰すんだよ。
いいかね?私はジャンプのシステムを恐怖しているんじゃあない・・・。
ほんのちょっぴり『あなどれない』と感じているんだよ・・・!。
真の帝王は恐怖しない!翌日にストレスを残さず、今夜の安眠を得る!
そのためにも、不安の種は潰しておく必要があるんだよ。わかるね・・・?」

そう言ってウリィィィと薄く笑う荒木の口元から、白い牙が覗いたのを
尾田は見てしまったような気がした。




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