注:これはフィクションです。 実在の人物、地名などとは一切関係ありません。 特に漫画家とか。 「よお、待ったかあ?荒木」 マシリトが部屋に入ってきた。 「何か用でもあるのか?こっちとしては、無駄な話はしたくないんだがな。無駄、無駄・・・」 マシリトが湯飲みを口に運びながら苦笑いした。 「元編集長に向かってそんな口きくもんじゃないぞ〜。優勝したっていっても、態度によっちゃ打ち切りになっちゃうぞ〜富樫には、俺もずいぶんてこずらされたけど、今回のゲームで、ついに打ち切られちゃったな〜」 マシリトは、続けて言った。 「打ち切りバトルで、トトカルチョやってるのは、知ってるか、荒木?」 荒木は、柱の男が人間を見るような目で言った。 「あってもおかしくないな、お前等趣味の悪い連中なら」 「それでさ、俺、富樫に賭けてたんだ。二万円。編集長っていっても、たいした給料もらえないからな。けっこう大金なんだよ。けど、お前のおかげで負けちゃったな〜。まあ富樫は残ってたら残ってたで、迷惑なんだけどな・・・。」 「やれやれだぜ・・」 マシリトは笑んだ。それから言った。 「お前、尾田と岸本をずっと一緒にいただろ。それで最後にあの二人を打ち切った。そういうことになるなあ?」 「当然のことだ」 荒木は即座に答えた。 「全てのものは真の帝王であるこの荒木のためにある!!支配者とは恐怖しないものだ・・!私には一片の恐怖でさえも、私が求める平穏の障害となる・・!あの二人は少々あなどれなかったので、消去させてもらったよ・・!」 また、荒木にあの牙があらわれた・・・。 それで、マシリトはまたにっこりと笑みを広げた。 「あのさ、荒木。これ、ほんとは言っちゃいけないんだけどさ、実を言うとほらあのジャンプマークには、マイクが隠されてるんだよ。だから、原稿書いてるときに君たちが喋ってることは、編集社につつぬけなんだ。----知らなかったろうけどさ。」 けだるげに受け答えしていた、荒木がそれでようやく反応を見せた。 「知るわけ-----ねえじゃねえか」と言った。 「-----じゃあ、あれか、俺があいつらをどんなふうに打ち切りに追い込んだとか仕事中に吐いた愚痴とかも全部聞いてたってわけか」 「うん、そうそう。それにしても富樫はひどかったな〜。賭けには、負けたけどうれしくなかったとは言わないよ」 マシリトがうなずいた。 「けど、あれはひどいよ、荒木。"万一そんなことができたとしても、集英社はマシリトなんか平気でクビにするぞ、多分"だったっけ、お前言ったけど。これでも結構偉いんだよ。ジャンプの編集長って。だれにでもできる仕事じゃないし。」 「なんで俺にそんなことを話すんだ?」 「いやあ別にい」マシリトは答えた 「ただまあさ、お前の漫画がちょっとおもしろかっからな、特別におしえてやろうかなって」 「そりゃ、光栄だ・・」 荒木はそっぽを向いたが、マシリトが「おもしろかったけど」とやや語調を強めると、その顔を戻した。 マシリトが続けた。 「なあ、俺ちょっとだけ気になるな〜」 「------何がだ?」 「おまえさ、何で富樫を打ち切った後すぐにあの2人を打ち切らなかったんだ?やれたはずだろ?俺は、ちょっとそれだけが腑におちないんだよ」 「それは俺があいつらに言ったとおりだ」 荒木は淀みなく答えた。 「ちょっと、自分が平和に漫画を書いてた時の風景ぐらい見せてやろうと思ったのさ。冥土の土産ってやつにな。俺はこれでも、礼儀を重んじる方なんだぜ。何せ、あいつらのおかげで俺は優勝することができたんだ」 「あのな。荒木。俺、以前にお前が参加した、前回の打ち切りゲームのプログラムの記録を取り寄せたんだ」 言って、しばらく荒木を見つめた。 「-----それでさあ、どうもその記録から見る限り、お前と井上雄彦が特別な関係にあったということは読み取れないな〜」 「井上だと?だからそれは俺のつくり-----」 荒木が割り込んだが、マシリトはさらにかぶせるように「おまえが」と続けた。荒木は口を閉じた。 「-------お前が尾田達に話したとおり、お前は2度井上の仕事場をたずねてるけど----最初は数分だったし2度目はお前の優勝寸前で、しかも井上はもう打ち切られてた。盗聴の記録を見ても----おまえに、井上の漫画に特別な関心があった様子はない。----そのことは憶えてるかな?」 「だから、俺と井上は何の関係もない。聞いてたんだろう?」 「けどさあ、少なくとも二度目のとき、おまえはそこで2時間も原稿をながめてたじゃないか、荒木」 「たまたまさ、漫画を書くのにいい場所だったんでな。ひまつぶしに、置いてあった原稿を読んでただけだ。だから、俺は井上の名前を覚えてたんだ。まあ、なかなかおもしろかったんじゃないか?俺には、負けるがな。」 (中略) 「俺、ずっとこのゲームの記録取ってたんだよ。でさ、お前が尾田と岸本を----追い詰めた後尾田が打ち切られるまでに2週、岸本が打ち切られるまでに3週もかかってる。普通なら即打ち切りにはずだろ、このタイムラグはなんだろうな?」 荒木は黙っていたが、本人が意識しているかどうか、口の先から白い牙が覗いていた。 「そういう、場合だってあるんじゃないのか?俺には、やつらのネタが完全に尽きていたように見え---」 「もういいじゃないか、荒木。な。終わりにしようよ」 荒木の目を覗き込み、しかし空裂眼刺驚(スペースリバースティンギーアイズ)を警戒していたが、諭すように小さくうなずいた。そして、言った。 「尾田と岸本はまだ、グリードアイランドにいるんだ。まだ原稿書いてるんだろ。集英社のコンピュータに入ったのはお前さ。あるいはお前の仲間か。お前は、首輪の外し方を知っていた。俺達が盗聴してることも知ってて、お前が2人を打ち切ったというラジオドラマをしてみせたんだ。そのあと、2人の首輪を外した。---違うか?名演技だった、じゃないよ。今の今まで名演技をしてたのさ」 荒木は、マシリトの方を凝視していた。奥歯をかみ締めているせいで、いまやその口元にはっきりと牙が見えた。 「さっきのヘリさ、島にインク撒きに行ったから。最近開発された滑らかさと伸びをかねそなえた、新インクで集英社マンセー2号ってやつだよ。見張りも残ってる。尾田と岸本の原稿は、もうだめだよ。」 (中略) 「やれやれ・・。インクの無駄遣いだ。やめておけ」 「無駄遣いかどうか、後で調べたらわかるよ。」 それから、「そうそう」と言った。懐からすっと、ホイポイカプセルをとりだし、投げた。 奇妙なロボが姿をあらわした。----Dr.マシリトだ、クソ!----- 荒木は目を見開いた。 「お前のことも内々で処理することにしたよ。ジャンプにとってよくないからな〜。ゲーム中の激しい争いで、ネタが切れて、打ち切り。どうだ?ああ、心配するなよ。お前に仲間がいても絶対調べ出してやる。お前から聞く必要はないよ」 荒木がロボのコクピットのマシリトに視線を動かした。 「馬鹿な・・!この-----」口を開いた。完全に、血がしたたっていた。 「この荒木がアアアアアアアアアアAAAAAAAAAA!!!!-----WRYYYYYYYYYYYY!!これは、何かの間違いだ・・・。植物のように平穏に生きたいと願う、この荒木飛呂彦の人生に、こんなヒドイ事が・・・・。このビチグソがあああああああああああ!!!」 戻る |