注:これはフィクションです。
  実在の人物、地名などとは一切関係ありません。
  特に漫画家とか。





「荒木」
尾田が声をかけると、荒木は振り返った。
「どこまで行くんだい?」
荒木がウリィィと笑った。
「もう少しだ。いいからついてこい」
(中略)
「どうやって、マシリトをぶったおすんだ?こんなところに何があるんだい?」
荒木は、尾田の顔を見ることなく笑んだ。
それから言った。
「まあいいから、あっちを見ろよ」
荒木は、ケニー・Gという男が使っていた、名も無い幻覚のスタンドを発動させた。
尾田と岸本は一緒に、荒木が指差した方へ顔を向けた。
きしんだドアの向こうだった。
机、いくつかのGペン、そして、奥のほうには、書きかけの原稿が散らばっていた。
机の上のところどころに、紙の切れ端のようなものがうかがえた。
もっと近くで見たなら、きっと、あれはスクリーントーン、あれは、消しゴムのカス、と判別できるのだろう。
荒木が言った。
「今まで慣れ親しんだ、仕事場の風景だ。集英社はあっちの方になるのかな?見納めになる。よく見とけ。」




「まさか、このために、ここまで来たんじゃないだろう?」
荒木は、笑った。
「まあそう急ぐな」
それから、岸本に
「原稿を見せてくれ。ジャンプへの最後の入稿だ。チェックしとかなきゃならない」
と言った。
岸本が、手にしていたNARUTOの原稿を荒木に差し出した。
荒木がそれを受け取った。ページをめくり、中を確かめた。
荒木は、それを返すことはせずに、ザ・ワールドを発動させた。
「憶えてるか、二人とも。俺は何度か言った、俺は単に仲間が欲しいだけで、結局、いつかお前達を打ち切ろうとするかもしれないと」
尾田は眉を持ち上げた。
「言ったよ」答えた。
「けど、------」
「だから」
荒木が言った。
「貴様等が打ち切りだ!」
荒木が発動させていたザ・ワールドが、すっと尾田たちに向かって構えた。




「なんだい、そりゃ?」尾田は言った。
「ここまで来て冗談か?」
「冗談?なんのことだ?」
荒木が言い、ザ・ワールドが拳を握った。それで、尾田の顔から笑みがひいた。
右腕のなか、岸本の体がこわばるのがわかった。
荒木がさらに言った。
「貴様等2人は、この荒木の運命という路上にころがる犬のクソのように、邪魔なものだったが最後の最後は、この荒木に利用されるのが運命だったようだ・・・フハハハハハ!!!」
荒木の口元に、薄い笑みが貼りついていた。これまでみせたことも無い、酷薄な感じの笑みだった。
尾田はようやく言った。
「なんだって、何を言っているんだ、一体?」
「同じことを2度言うのは嫌いなんだが・・、無駄無駄・・・!」
荒木の牙が鈍い光を放った。-----WRYYYYYYYYY---------
「私は、貴様等を打ち切る・・!優勝するのは、この私だ!!頂点に立つものは常に一人・・!!悪いな・・!フハハハハハハハハハ!!」
尾田の口元が震えた。うそだ。こんなのはうそだ。




「じゃあ、今までのは全部芝居だったってのか?おまえ・・・、おまえ、俺たちを何度も助けてくれたじゃないか?」
荒木は冷静に答えた。
「助けてもらったのは、こっちの方だ・・!さしもの私といえど、君たちがいなかったなら富樫にやられていたかもしれなかったからな。」
「そんな・・。じゃあ井上さんの話も全部嘘だってのか?!」
声が震えていた。
「嘘だ・・!」
荒木はあっさり、そう答えた。
「私が去年の、打ち切りゲームに参加してたのは、本当で、井上雄彦っていう作家がいたのも事実だ。しかし、私はその井上とはなんの関係もない。あの写真とサインは、忍び込んだ家で偶然みつけたものだ。さて、君たちは、なぜ私の嘘を簡単に信じたと思うね?」
「そんなのわかんないよ!本当に嘘だったのか?」
荒木はWRYYYと笑った。
「これだよ・・!」
荒木の髪が「キャバァ」っと逆立った。




----肉の芽----これは、ある気持ちを呼び起こすコントローラー!!
カリスマッ!!ヒトラーに従う兵隊のような気持ち!邪教の教祖に憧れるような信者の気持ち!
尾田達2人は荒木に心酔し憧れの作家のように感じ、深層心理で忠誠を誓っていた・・・!!

「そんな、はずは・・・?」
尾田はまだ信じられなかった。
「じゃあ、じゃあ、あのニセロボピッチャは?」
荒木はそれにもあっさり答えた。
「たまたま、例の画材屋で見つけたのさ。何かの役に立つかとおもってね。どうやら、役にたってくれたようだ。」
闇がますます、深くなりつつあった。荒木の時間だった・・。
荒木が続けた。
「DO YOU UNDERSTAND?!私を信じた時点で君たちの負けだ!!いや、出会った時点でな・・!」
尾田は、思った。
そんなはずは・・・・ない。
「荒木さん、僕達が、あなたを本当に信じるかどうか、試したいんですか?井上さんに信じてもらえなかったことを、まだ気にしているんですか?」
荒木は肩をすくめた。
「やれやれだぜ・・・。最後まで作り話を信じているとはな・・・!」
と言った。
それが最後の言葉だった。
荒木は、軽い動作でザ・ワールドをもう一度かまえなおすと、おもむろに時間を止めた。
「ザ・ワールドォ!時よ止まれェ!!」
「ムーダムダ無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」
荒木の嬌声が響いた後、完全に夜が落ちた。


【残り1人/打ち切り終了・以上集英社発行週刊少年ジャンププログラム実地本部選手確認モニタより】



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