注:これはフィクションです。 実在の人物、地名などとは一切関係ありません。 特に漫画家とか。 「俺はほかにも見たぜ、二人ほど」 島袋が目を大きくして、「そうなの?」と言った。 藤崎は頷いた。 「夜の間に、ちょっといろいろ動き回ったんだ。それで――一人は男だったな。 ほら、ちょっと思いつかないような、大根立ててセットした股間でさ――岡野だったと思う」 「声――かけなかったの?」 藤崎は肩をすくめた。 「ちょっとな。自分で書いておいてなんだが、俺はやっぱり、ギャグ漫画家ってのは怖いよ」 「――僕もそうなんだけど」 島袋の言葉に藤崎はしばらく沈黙し、そしてゆっくりと言った。 「いや、でも、お前はたまにシリアスも描くだろ?」 失敗してるけどな――そう言いかけて慌てて口を閉じた。幸い、島袋は気づいていないようだ。 「それに、もう一人。あの荒木飛呂彦をな、見た」 「荒木――先生かあ。あの人の漫画、ちょっと怪しいもんね。だから――」 「ああ、だから俺は仲間になるのは遠慮しといたんだ。しかし――」 藤崎はちょっと視線を空の方へあげた。 「向こうも俺に気づいたようだった。すぐに畑の畦に身を伏せたがな。背後霊みたいなのを操っていたように見えた。 ――やつはしばらく俺の方を見ていたと思う、しかし、突然姿を消したよ」 戻る |