myself

僕は納得せざるを得なかった。

正月も終わりで、晴れていたかと思ったら、にわか雪が降って止んだキレイな空の午後だった。

僕がこの人に会ったのは去年、あ、もうおととしのクリスマス前。

彼女がお気に入りの場所で僕達は会うことができた。

僕のどこが気に入ったのか聞いてみると、「カジュアルなところ」だって。

出逢ってからしばらく、僕達は毎日のようにいろんなところに出かけたなぁ。

でも、その後すぐに半年以上も彼女と離れ離れになった。

彼女の行き先すら知らなかった。もう会えないのかと思った。

去年の夏も終わりかけたある日、僕達は再会。

また一緒に出かけることが多くなった。

相変わらず僕はカジュアルで、彼女も以前よりカジュアルになっていた。

端から見ても僕達はとってもお似合いなんじゃないかと思った。

なのに、こんな日が来るなんて思わなかったよ。

雪が降ったせいで、細かい冷たい水分が含まれる空気に晒されて、

僕は最近の疲れを癒すかのように外の空気を吸った。

でも、いつもと違う雰囲気。

僕についた埃を払う彼女は浮かない顔をしていた。

「どうしたの?また一緒に出かけようよ。」

彼女は「今までのように君と出かけることはないと思う」と言った。

「なんで?僕達お似合いじゃない?」

彼女は正月明けから新しい仕事が決まっていた。

「新しい気持ちで新しい職場に通いたい。」

そうか、僕と一緒だと彼女は気持ちの切り換えができないのかぁ。。。

「じゃあ、僕は諦めるよ。新しいやつとまっさらな気持ちで新しい職場に行けばいいね。」

「・・・そうすればいいよ。」僕はそれ以上何も言えなかった。

僕はモスグリーンのトートバッグ。アウトレットで売られていたんだ。

彼女が好きな街にあるアウトレットモールで。

でも僕捨てられるわけじゃないよね?

公園とか自然があるところに行く時なんかは、僕とまた一緒に出かけてよ。

お弁当とか、文庫の本なんか入れちゃってさ。

僕は君の肩の角度、大好きだからね。

「君とまた一緒に出かける日を楽しみに待ってるよ」

『bag』

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