めりめりとさらに強い力で押さえつけられる。
やっと辿り着いたはずの「底」でまた埋め込まれるのか。
たしかに物事に終着地はないのだろう。
考えてみれば「底」だと思っていた場所まではいとも容易く落ちて来たっけ。
今度は硬い足元から少しずつ埋まっていく。
すべてが埋まる前にからだが折れてしまいそうなほど
強引なその力はだんだん意識が遠のくにつれて慈悲深いものに思えてくる。
ここはどこの地なんだろう。
四方は壁に囲まれて、見上げても空らしい光も見えない。
声を出したら悲しすぎるくらい響いて上に向かって消えていくだろう。
いっそのこと、致命的な石の欠片の一撃でも降って来て欲しいくらいだ。
まだここは重力の及ぶ地だから。
独房なんてものじゃない。
誰の存在も感じやしない。
「ほっといてくれ」とか「独りにして」なんて言ってる寂しがりのひとは、
あまりの孤独さに一瞬で現実を認識できなくなるだろう。
ここに来たらきっと、もう二度と独りにしないでと願うひとがほとんど。
そう願って自力で這い上がっていくことも出来るだろう。
まれに中身が空っぽなひとが現実の光景をそのまま受け入れてしまうことがあるらしい。
意識と現実のギャップがゼロだから区別することが出来ないのだろう。
まるでここにいるのが当然のごとく、たまに吹き降ろす風で何かを思い出しそうになりながら
時間の感覚すら忘れてしまう。
わずかに消え残る感情の欠片が無意識に考える。
この力に慈悲があるかどうかなんてことはどうでもいい。
足の先から頭までめりめりと埋め込まれた先はいったいどこなのか。
呼吸が出来なくなる前に見えない足の先から、するりと密度のない空間へすりぬけて、
また地上と呼ばれるようなところへ落ちてゆくかもしれない。
「底」なんかじゃなかったのか。
ここもまた中空に浮かぶただの通過点に過ぎなかったのか。
丸い地球に、果てしない宇宙に「底」なんてあるわけがなかったのか。