Many Waters (The Time Trilogy) | Madeline L'Engle | Dell books | 1986 |
Promised Land | Connie Willis & Cynthia Felice | Ace Books | 1998 |
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牧場ハーレクインつまり言うところのfarm
romance 。ヒロイン小説としてはうまいんだろうけど、私としてはパス。いかにも小説っぽい小説も読むし、ウィリスの書くものはなんでも平均以上に好きなんだけどこれはどうも。まあ西谷祥子(古いよ)が描くSFネタラブロマンスみたいな感じか。
アメリカの農業地帯を彷彿とさせる、辺鄙な農業惑星ケラモス。田舎を嫌う母に5歳で教育のため都会に送られたディラナ(ラにアクセント)は母の死後、農場を売却するためケラモスに降りた。そこでディラナは、ケラモス独自の土地所有規制法により、ミルフロアス農場の共同所有者のタナー家の長男、幼馴染のソニーとの結婚が成立していることを知らされる。
13年ぶりに再会した青年ソニーは、どんくさい田舎者。1日で惑星を去るつもりだったのに、理不尽な状況にまきこまれ、あれよあれよと言う間に、5000マイル離れた田舎の農場に旅することになったディラナ。口がうまくて惑星一の女誑しだが、頼りになるキャラバン隊隊長ジェイ、ディラナを恋敵とみて、いやみたっぷりの娘キャディス、ケラモスの生態系を守る官僚主義者ドク・ライルがいりみだれての大騒ぎ。
原住生物の出没する奇妙な森林や広野を旅し、経営の苦しい農場に向かう一行。誰もがディランナを、幸せな新婚の花嫁か、ケラモスの自然に無知な都会者、もしくは母に甘やかされた恩知らず扱いをするので、ディランナは切れまくるが、徐々に自分の無知を学び、力量を周りに認めさせていく。
一見わがままだが根はいい子の都会娘のヒロインが、素朴で誠実だが不器用で口下手な青年に最初は反発していたが、だんだん誤解が解けて……という展開に抵抗のある人(わたしだ)にはすすめない。そう書いたらネタバレと思うかもしれないが、最初の50ページでもう先は見えてるんで。恋愛小説は王道にどういう小道具やトリックを使ってなだれ込むかが見せ所で、そういう意味では出来は中程度かな。フロンティア農業惑星の制度社会や、ド田舎生活の怒って笑って泣いての人間関係、自然のディテイルは牧歌趣味(人間中心的ということ)ながら充実してるのでそういうのが好きな人はいいかも。
次にいい味なのが、ケラモスの現住生物の火猿(ファイアーモンキー)の群れ。ひかりものがすきで、火をいたずらするので住民には嫌われているが、かなりの知能があるらしい。寒くなると温泉につかってるところなどなかなかである。でもなあ、最後の最後まで、わたしは惑星ケラモスの生態系と火猿になんか重大な秘密があって、ヒロインたちのすったもんだが惑星の危機を救っちゃったりするんだと期待してたんで、ちょっと残念。
SFというより小説としても、田舎に倦んだ母親の夢を託された娘の葛藤を、一方に判断をくだすことで収めているのは惜しいと思う。一般小説ではともかく、エンタテインメントでは、母対娘というのはもっといろいろな面から書かれてもいい材料ではないか。ウィリス&フェリスの『アリアドネの逃走』では少女の冒険物としてそこが成功してたため期待していたので肩すかしだった。
The Widowmaker Unleashed | Mike Resnick | Bantam Spectra | 1998 |
The Widowmaker Reborn | Mike Resnick | Bantam Spectra | 1997 |
1997年発行(1999年のポケットサイズ版)
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しっかし、西暦2000年になって、地球を訪問したエイリアンが国連本部で平和演説をするような話を読むことになるとはね。(<誰に言ってるのか)しかもそれに意外にほだされてる自分が間抜けなのか、けっこうカワイゲがあるのか。ほだされてるのはそういう話をあえて書く作者ロバート・ソウヤーになのかもしれない。しかし誤解を招かないように言えば、50年代SFの洗礼を受けた人間
のノスタルジーなんて抜きにしても、一般読者への臆面ない受けねらい(ファンの人ごめん)がちりばめられていてリーダビリティはたっぷり。何しろ、つかみが北米を1年半、狂乱のメディア報道でくぎづけにしたOJシンプソン裁判の再現という設定なのだ。
時は、OJ裁判の直後のロサンジェルス。地球人を殺したという第一級殺人罪でロサンジェルス地方検察局は、地球訪問中の異星人を告発し、大統領科学顧問に依頼された人権派弁護士が異星人の弁護に立つ、という話。
OJ裁判の北米的記憶がないとちょっと読みにくいかもしれない話かもしれない。そりゃ世界的に報道されたから、和訳でも面白いだろうけど、1997、8頃の北米の住人だったら、ロサンジェルス地方検察局とか、hung
jury(評決不能)とか聞いただけで強制的にさまざまなイメージが浮かぶから。
さてストーリーの最初。突然現れた非人間型(4肢・脊椎)異星人トソックの地上連絡艇とのファーストコンタクトから始まる。優れた天文学者でPBS(資金形態が違うけど、アメリカの教育テレビ)の科学番組の人気ホストでもある、クリート(クリータス)・カルホーンはトソック人との友好的なファーストコンタクトに成功する。アルファケンタウリ星系から、冷凍睡眠しながらの恒星間航行を達成した異星人は、破損した宇宙船の修理の期間、地球に滞在することになり、優れた科学力をもって各国に歓迎される。
しかしトソック人の一行と、クリートや友人の大統領科学顧問フランク・ノビリオ、他国の科学者たちが滞在することになった南カリフォルニア大学の寮でクリスマスの夜、惨劇が起こる。地球に例のない鋭利な凶器で切断された死体が発見され、その疑いはアリバイのない異星人の一人ハスクにかかる。証拠をかため満を持して、異星人を告訴するに至ったロサンジェルス地方検事。対して司法の独立の手前介入できない大統領とフランクは、少数民族の人権擁護派として多くの黒人被告人を弁護してきた黒人弁護士デイル・ライスに弁護を依頼する。ハスクの否定にもかかわらず、すべての証拠は彼の犯行を指ししめし、裁判は不利に進む。異星人を、アメリカ人の間でさえ民族偏見による構造的な問題が周知になっている、アメリカの陪審裁判は正当に裁くことができるのだろうか?人類以上の科学力を持ち、友好的なトソク人の一人に死刑を求刑することができるのか?
300ページ中250ページまでは、面白いことは面白いけどいくらなんでも、これはロスでの異星人裁判という設定の特異さにあまりにたよったワンアイデアストーリーのキワモノと見られてもしかたないのじゃないのと思っていた。ところが、最後にいたって話は急展開、前半のOJ裁判もどきの展開の急所急所にちりばめられていた、天文、進化生物学、心理、神学、フーダニット、ホワイダニット、ハウダニットの疑問点が、つぎつぎにからみあって答えが明かされていく。根本にあるミステリ的謎とSF的骨格はたしかなもので、これだけのアイデアがあるのにこうもちゃらちゃらと読者サービスしなくてもいいじゃないかと思うんだけど、そこをあえてもてなすのがこの作者。そして、いくら面白いとはいえ裁判の展開に溺れてるんではないかい?と思わせるところが、ある意味壮大なミスディレクションになって、ファーストコンタクトストーリーに意外性をもたらしている。(いや私がひっかかったという意味だけど。)友情の泣かせから、おめでたい理想主義までとりそろえた、はではでしくって知的なエンタテインメント。
The Widowmaker | Mike Resnick | Bantam Spectra | 1995 |
(originally published: 1968)
ジョン・ディクスン・カー最後の長編。2000年末現在唯一の未訳長編らしい。19世紀半ば、アメリカ南部の大都会ニューオーリンズの深い闇で展開する復讐殺人の謎ととおっとりしたロマンス。ミステリとしては邦訳がなくて惜しいというほどではないが、カーのファンとしては読んで損はない。角田喜久雄の時代小説みたい。犯人の正体や殺人手段もその程度の謎。怪奇趣味もあまり生きてないし、思わせぶりだけで展開してないねたが多い。しかし時代設定や小道具は興味深く、ストーリー展開は安定していて手堅い。するする読めて、読んでいる間は退屈しなかった。それだけという感じもある。
時は1858年、南北戦争直前。所はミシシッピ河口のニューオーリンズの街。英国領事のディック・マクレイは、高名なクレオール系の社交婦人ド・サンセール夫人の訪問を深夜に受けて、美女で名高い彼女の娘マルゴットの奇妙な振る舞いをこぼされる。令嬢の問題は、20年前に奴隷拷問と魔術の疑いで暴動によって街を追われた名門貴婦人デルフィーネ・ラローリーと、この半世紀に渡り今なおニューオーリンズの魔術世界に君臨するブードウ―の女王マリー・ラヴォーという女に関わりがあるらしい。
一方、マクレイも同時期に身辺にしのびよる怪しい尾行者を感じていた。そして白人の血をひく混血美女たちが、上流階級の紳士の愛人の地位を勝ち取るためにひらかれる怪しげな夜会で、マクレイは自らの瞼の美女に再会することになる。勝ち気で奔放なマルゴットを始めとした、謎多い令嬢たちと恋人の紳士たちがすったもんだを繰り広げる中、ラローリーの養い子である復讐者がフランスから帰国したという知らせが届く。同時に、ラローリーの追及者であった街の名士の一人が、マルゴットの父母やマクレイ、令嬢の素行の探偵を買ってでたミステリ好きの上院議員のたちの目前で、謎の転落死を遂げる。馬車の中から人間は消失し、どこからともなくブードウ―の呪物があらわれる。はたして謎の復讐者は存在するのか?
古風でもったいぶった会話。ニューオーリンズの街の濃密な闇。怪しげな夜会と空き家の冒険。クレオールの名家の気の強い令嬢とブードウークイーン。荘園主や上院議員、法曹といった南部上流階級と英国紳士、自由ムラート(混血)、奴隷で構成される偽善的な社会は、古風な小説の舞台としてはもうしぶんなし。ミシシッピを上下する蒸気船の関係者がいれかわりたちかわり現れるところも、古いアメリカ小説を思わせる。
キンタグリオ三部作の2巻と3巻。進化した恐竜キンタグリオに生まれた知的好奇心の強い若い恐竜アフサンの探求を描いた『占星師アフサンの遠見鏡』の続編。各巻のストーリーにふれるとその前の巻のネタバレになるのでちょっと紹介のしようがない。2巻の登場人物(恐竜)や、たちむかう挑戦の性質を紹介するだけでも興をそぐところがあるわけだしなあ。やっぱり設定で驚かせる1巻が一番面白いかな。強烈な縄張り本能に支配される、肉食性恐竜であるキンタグリオは、知性によって種族の宿命を乗り越え、彼らの世界をおそう危機をきりぬけられるのか?2巻はビーグル号の航海と殺人(竜?)事件のフーダニットと王位争いと謎の遺跡。キンタグリオにまつわる最大の謎があきらかになる。3巻は精神分析と夫婦愛とひねったファーストコンタクトとクラーク。これで3題話的に1巻のネタがわかる人が居た(いるか?)ら申し訳ない。とにかく知的興趣とスピーディな展開が楽しい小説。