喜多郎ミュージック・ガイド
Young Persons' Guide to KITARO Music #31
released 2002
MONK'S INTRODUCTION
HAJIMARI / 太始
SOZO / 創造
CARAVANSARY / キャラバンサライ
SILK ROAD / シルクロード
MAGMA / マグマ
MERCURY / マーキュリー
WATER OF MYSTERY / 神秘の水
ESTRELLA / エストレイヤ
KOI / 恋慕
WA / 和
FREE FLIGHT / フリーフライト
HEAVEN AND EARTH (*)
all songs written and arranged by KITARO
additional musicians:
Keiko Takahashi: keyboards
Shinji Ebihara: keyboards
Yayoi Sakiyama: violin
Tomoko Nomura: percussion
Yakushiji Monks: chanting
Shan Xiang Tu: chinese pipa on (*)
2001年8月末から9月はじめにかけて奈良の薬師寺で行われたliveを収めた2枚組liveアルバム。この時期のKITAROさんのliveでよく演奏されてた曲が収録されてるんだけど...、憶えておくべきなのは、「このアルバムで聴ける演奏は、普段のKITAROさんのliveで聴ける演奏とは結構ちがう」というコト。(でも、このliveアルバムを聴いて「KITAROさんって最近はこういう演奏してるの?」って心配する必要はないよ。「このアルバムだけが例外」って考えた方がいい。)
普段のKITAROさんのliveとの一番のちがいは、musicianの人数。少ない。その結果、鳴ってる音の数が少なくって、サウンドのブ厚さ、variation、表現力、色彩美...とった点で、どうにも聴き劣りしちゃう。中でも、普段のliveで欠かせない存在とも言えるいるdrummerとguitaristがいないのは、イタ過ぎる。KITARO liveを体験したことがない人でも、KITAROさんの他のliveアルバム(「IN PERSON / イン・パースン」は除く)を聴けば、「KITARO liveでは、drumsもguitarも大いにフィーチャーされてて、重要なパートになってる」ってことに、誰でも気が付くハズ。
Drummerがいないことで、このアルバムで聴ける演奏は(普段よりも)ダイナミズムに欠けるし、rockのフィーリングも極端に薄くなってしまっている。普段のliveで唸りをあげまくるdistortionのかかった(歪んだ音の)electric guitarも聴くことができない(例えば、drumsとelectric guitarが入ってこない "KOI / 恋慕" なんて、目を覆いたくなるばかり...)。もう一つ気になるのは演奏の繊細さ。KITARO Musicの演奏は表現力の繊細さが命!だけど、このアルバムで聴ける演奏は、普段のliveで聴ける繊細さと比べると足下にも及ばない。Percussionistの演奏の表現力不足も原因かもしれないけど、それ以上に気になるのがmixing。例えば、Liveの会場で "FREE FLIGHT / フリーフライト" を聴いたことがある人なら氣が付くと思うけど、このアルバムで聴ける "FREE FLIGHT / フリーフライト" は明らかにダイナミズムに欠けている。この曲の普段のlive演奏は、極々小さい音で演奏が始まって、曲が進むにつれて少しずつ音が大きくなっていって、最後には音の壁となって大音響で響き渡るようなarrangeになっている。だけど、このアルバムではゼンゼンそういう風には聴こえない。でもarrangeからして、KITAROさんは実際に会場ではいつも通りのダイナミズムあふれる "FREE FLIGHT / フリーフライト" を演奏したんだと思う(まず間違いない)。ということは、liveアルバムを創るためのmixingの段階でダイナミズムがなくされてしまったということになる。このアルバム全体から感じられるダイナミズムの少なさは、mixingにも原因があるのかもしれない。なぜこういうliveアルバムを発表することになったのか、本当の理由はわかんないけど、もしかしたら、このアルバムの背景にあった「SILK ROAD PROJECT」と呼ばれるプロジェクトが関係してるのかもしれない。
というわけで、これからKITARO Musicを聴いてみようとしてる人が最初に聴く一枚ではない。KITARO liveに出向いて「サイコー!」って思って帰ってきた人が聴くアルバムでもない。KITARO liveに出向いて「サイコー!」って思って、liveアルバムが聴きたくなったら、「BUDOKAN / 武道館」「ASIA / 亜細亜」「LIVE IN AMERICA」「AN ENCHANTED EVENING / 天空への響き」の中の、どれかを聴くこと。ただし、「THINKING OF YOU」「ANCIENT / エンシェント」「AN ANCIENT JOURNEY / 永遠の時を」といった、いわゆる“new KITARO music”路線のアルバムだけが好きな人には、オススメのliveアルバムかもしれない。
"MONK'S INTRODUCTION" と "WA / 和" は、このアルバムでしか聴けない曲だけど("MAGMA / マグマ" はアルバムには初登場だけど、2000年発表のlive video「TAMAYURA」に収録されてる)、"MONK'S INTRODUCTION" はKITAROさんたちによる演奏ではなく、薬師寺の僧侶によるchant。"WA / 和" はKITAROさんによるエスニックな打楽器(和太鼓含む)の演奏を中心としたimprovisation(即興演奏)で、薬師寺の僧侶によるchantも加わっている。
ちなみに、このliveアルバムにはDVD video versionもある。収録曲は同じだけど、ボーナス・トラック扱いの "HEAVEN AND EARTH" だけは、演奏シーンが収録されてない(音だけ収録)ので、そのつもりで。
「英題がちがう」と思ったらKITARO Music 英題“同じ曲”表へ
質問などあればココへ