喜多郎ミュージック・ガイド
Young Persons' Guide to KITARO Music #32
MICHI / 道を求めて
KAGEROH / 陽炎
SHIZUKU / 雫
FLOW / 水と雲
NEN / 念
THE WIND / 野を吹く風
GI / 儀
EVENING SUN / 夕日の谷
SILENCE / 時の静けさ
EARTH IN BLOOM / 山と花
KUU / 空
COCORO / 遥かなる心の旅
all songs written and arranged by KITARO
additional musicians:
Jonathan Goldman: chanting voice
Paul Pesco: electric guitar, slide guitar
monks: chanting
Franci Miho Shimomaebara: vocals
Nawang Khechog: tibetan flute, chanting voice
Kristin Stordahl Kanda: flute
Keiko Takahashi: keyboards
Tu Shang Xian: chinese pipa
緊張感に満ちあふれた、強力なサイケデリック・アルバム。このアルバムの前のstudio recordingアルバム3作「THINKING OF YOU」「ANCIENT / エンシェント」「AN ANCIENT JOURNEY / 永遠の時を」とは、明らかにちがった方向性が感じられるね。実は、このアルバムは、KITAROさんがスタートした新しいシリーズの一番最初の1枚。このシリーズでは、KITAROさんは音楽の中に四国八十八か所のお寺の鐘の音を取り入れてる(各曲に一か所の鐘の音を使ってる)。
これからKITARO Musicを聴こうとしてる人が最初に聴くアルバムとしても、いいアルバム。間違いなく、KITAROさんの全ディスコグラフィーの中で、最も強力なアルバムの中の一枚。だけど、もしもKITAROさんのpopな曲(例えば "MATSURI / 響宴"、"KOI / 恋慕"、"THE LIGHT OF THE SPIRIT"、"ESTRELLA"、"THINKING OF YOU"、"DANCE OF SARASVATI / ダンス・オブ・サラスバティ" といったような)が聴きたいんなら、このアルバムは後回しにしよう。なぜなら、ほとんどの曲がpopさとは程遠いから。
このアルバムの多くのパートは、サイケデリックに繰り返されるフレーズの周りで繰り広げられるimprovisation (即興演奏)。印象に残るpopなメロディは、ほんのチョットしか無い。早い話が、メロディではなく、雰囲気やフィーリングで勝負してるアルバムってこと。唯一の例外は "THE WIND / 野を吹く風" で、この曲だけは親しみやすいメロディを持ったpopな曲になってる。それゆえに、このアルバム全体の緊張感の中では完全にウイテいて、オペラでの幕と幕との間に演奏される“間奏曲”みたいに聴こえる。いくつかの曲にはサイケ的なrockのgrooveがあるけど、drum kitなどの典型的なrockのリズム楽器によるものではないので、そのつもりで。Opening numberの "MICHI / 道を求めて" ではPink Floydの影響が感じられるけど、そんなコトよりも、この曲を強力にしてる原動力は、いくつかの印象的な要素が共存してるというコト。そしてその中に、Native American fluteのsoloやスピリチュアルに力強い和太鼓など、KITAROさんでしかあり得ない要素がシッカリ溶け込んでるあたりがミソ。"NEN / 念" は、多分このアルバムの中で一番サイケな曲。この曲は僧侶によるchant、効果音、synthesiserの音、お寺の鐘の音、その他いろんな音によるカオスそのもの。とってもスピリチュアルで、間違いなく、このアルバム全体の雰囲気に大きな影響を与えてる。"COCORO / 遥かなる心の旅" は、KITAROさんお得意のドラマティックな曲。でも、その終わり方は、KITAROさんらしいアルバムの終わり方ではない。きっと、次のアルバム...このアルバムから始まった新しいシリーズの2作目に「続く」っていう意味なのかもね。
ゲスト・ミュージシャンによる演奏も、このアルバムに一層の彩りを添えてて、こういう多彩なカンジは、このアルバムの前のstudio recordingアルバム3作では感じられなかったモノ。“KITAROさんらしいアルバム全体の流れ”も、ピリピリした雰囲気の中を、いいカンジで流れてる。
KITAROさんのサイケなアルバム(「"TEN KAI" ASTRAL TRIP / 天界」「FROM THE FULL MOON STORY / 大地」「OASIS / オアシス」「BUDOKAN / 武道館」「MANDALA / マンダラ」「GAIA - ONBASHIRA」など)が好きな人には、大歓迎されるアルバム。このアルバムに一番近いアルバムは、KITAROさんのデビュー作「"TEN KAI" ASTRAL TRIP / 天界」だね。
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