芭蕉


1644〜1944。伊賀の人。江戸前期の俳人。京都で俳諧を学
び、江戸に下り、深川の芭蕉庵に住み、談林俳諧を脱却して、蕉風
を確立。各地を旅して発句や紀行文を残し、旅先の大阪で病没。そ
の句の多くは「俳諧七部集」に納められている。紀行に「野ざらし
紀行」「笈の小文」「更科紀行」「奥の細道」、日記に「嵯峨日記
」などがある。                       



春たちて まだ九日の 野山かな

はつむまに 狐のそりし 頭哉

曙や 白魚しろき こと一寸

梅が香に のつと日の出る 山路かな

草の戸も 住み替わる代ぞ 雛の家

水取りや 氷の僧の 沓の音

神垣や 思ひもかけず 涅槃像

父母の しきりに恋し 雉子の声

雲雀より 空にやすらふ 峠かな

春雨や 蜂の巣つたふ 屋根の漏り

雪間より 薄紫の 芽独活かな

山路来て なにやらゆかし すみれ草

よく見れば なずな花さく 垣根かな

辛崎の 松は花より 朧にて

八九間 空で雨降る 柳かな

四方より 花吹き入れて 鳰の海

潅仏の 日に生まれ会う 鹿の子かな

ほろほろと 山吹散るか 滝の音

古池や かはづ飛びこむ 水の音

くたびれて 宿かる比や 藤の花


俳句の部屋へ戻る

ホームページへ戻る