65歳以上への年齢に配慮した手術
(1)術前の栄養状態の評価、心臓と肺の評価
65歳になると心配なのが栄養が不足していることです。
特に栄養失調である方は、免疫力の低下があります。
そこで、あらかじめ点滴したりすることで栄養を回復をはかることがあります。
もっとも心配なのが、心臓と肺です。心臓は、New
York Heart Associationの分類を用いてIII度以上の異常をもたれる方は手術できない場合もありますし、前立腺で治療にこられていても循環器で心臓をしっかりなおすことを優先します。
心筋梗塞をおこして3か月以内にふたたび心筋梗塞をおこす確率は37%以上です。またその死亡率は50−80%です。心臓は大変重要です。
わたくしのところではさらにGoldmanの心臓危険因子評価というのをおこない、その評価で心臓の負担が強すぎる方はまず循環器科での治療をすすめるか、もしくは前立腺肥大症にたいする別の治療(局所麻酔でもできます)に変更します。
(2)肝臓、腎臓の評価、糖尿病の評価
肝臓では、肝臓の酵素が100を越える方では肝臓の機能を確認して手術します。
腎臓では、腎臓機能に応じて手術を変更します。
(3)術前からおこなう術後感染の対策
感染症はたいへん重要です。とくに尿道にカテーテルがはいっている場合は、細菌が尿からはいります。その確率は8−10日のカテーテル留置で50%以上の患者さんが感染するそうです。
ですから早期にカテーテルを抜きます。
また余分な抗菌剤は使用しません。余分に飲むことで、結果的に耐性菌(抗菌剤がきかない菌)でできてしまうからです。
(4)術後の疼痛対策
徹底したいたみの対策が必要です。もし1日入院されるのでしたら硬膜外持続カテーテルという一晩中麻酔が背中にはいるものをもちいて痛みを全く感じなくします。また、陰茎のものに麻酔をうまく追加することで感じなくします。(ただし、これには高度なテクニックが必要です)
(5)こわい肺塞栓症に対する対策
最近、肺塞栓症が話題です。これは手術が長引くと足に血管のつまりができてこれが肺にまで飛ぶものです。
この予防の基本は、短時間で手術をおわることです。私のところではこの危険な体位はわずか1時間余です。
(6)術後のストレス潰瘍に対する対策
術後ストレスを感じる方はあらかじめ胃薬を飲んでいただきます。この発生率は0.06%といわれます。
(7)術後の痴呆についての対策
健全な精神をお持ちの高齢者でも、35%に術後痴呆をもち、15%に重症の痴呆になるそうです。そこで、日帰りにより自分の家で落ち着いてすごしていただきます。
|