(健全な社会建設のための「情報社会に参画する態度」)
情報化の進展による影響には,光の部分だけでなく影の部分がある。
様々なメディアを通して得られる情報の中には,
誤った情報や作為的に加工された情報も含まれている可能性があり,
必要な情報を主体的に収集し,的確に判断するためには,
それらの情報がどのような過程を経て収集,処理,加工,伝達されているのか,
その仕組みの理解や,それに関わる情報手段や人間の特性の理解が重要である。
そして,そのような知識の上に立って,その情報を信頼して判断し,
行動したときに負うリスクや責任を知ることも,
自己責任がより強調される今後の社会では極めて重要である。
例えば,電子メールは,その便利さと裏腹に,誤った情報が広がる可能性も高い。
何らかの情報を受け取ったときに,その真偽を判断する方法を身につけていないと,
デマに惑わされ,気づかないうちにその拡大に加担してしまうこともある。
その一方で,情報通信ネットワークを活用すれば,
これまでマスメディア等を通して間接的にしか得られなかった様々な情報が簡単に入手できる。
情報源の違う情報を比較することができれば,
情報を正しく判断したり,批判する能力を身につけることができ,
情報化の影の影響を克服して,
一人ひとりが健全な社会の創造に参加することも期待できよう。
もちろん,我々は,より豊かな社会の実現を目指して情報手段を活用するのであり,
情報手段に依存し過ぎて,
バーチャルな世界と現実の世界との区別がつかなくなったり,
処理された情報を疑うことなく信じ込んだり,
人間が機械に使われるかのような状況はあってはならない。
直接体験と間接体験,事実と解釈,切り取られたり加工された情報と生の情報を見分ける感覚の育成が大切であり,また,人間が機械を活用するという視点を見失うことのないようにすることも極めて重要である。
(「情報社会に参画する態度」の扱いと範囲)
「情報社会に参画する態度」は,
体験に根ざした「情報活用の実践力」と,適切な知識としての「情報の科学的な理解」とに基づき,
情報化が人間や社会にどのような光と影の影響を及ぼす可能性があるのか,
また,その影の影響を克服するためにはどのような注意や配慮が必要なのか
を考えさせることで培われるものである。
具体的なカリキュラムにおいては,
学習の初期段階では,
影の影響を極力排するように,教員が情報や情報手段の活用場面を設定する必要があり,
徐々に子供たちの主体性に委ねていく過程で,影の影響やそれへの対処法を明示的に指導していくこと
が必要になる。
ただし,情報の真偽に関わることや,著作権やプライバシーの問題などについては,
具体的場面が発生したときには,それを見過ごすことなく,繰り返し触れることが重要である。
学習の範囲としては,
情報技術と生活や産業,
コンピュータに依存した社会の問題点,
情報モラル・マナー,
プライバシー,
著作権,
コンピュータ犯罪,
コンピュータセキュリティ,
マスメディアの社会への影響
などが考えられる。
なお,「情報の科学的な理解」は,ともすると情報技術の光の部分を強調することになるため,
机上の学習に終わらせないためにも,
身近な社会での活用の具体例を取り上げながら,影の影響を扱うことが望ましい。
これらの学習においては,自分自身が情報社会の創造に関与するという観点から,
単なる情報の受け手としてでなく,自らが情報の発信者になる場合の態度の育成も重要である。
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