「ひさご」京都 祇園下河原 親子丼 |
阪急電車に乗って京都におもむき、四条河原町に到着したのが丁度昼時であったならば、地上へ出たら迷わずにそのまま東へと歩を進め、『ひさご』の親子丼を食すべきです。 夏の京都の暑さの中を歩いて到達するには少し遠いと感じる程度の距離はありましょうが、円山公園の南、四条の喧騒とは一歩離れた場所ではんなりと、しかし気取らない昼御飯をいただけるひとときが持てる幸福を味わうことができます。 場所柄、《祇園の舞妓さん御用達》なんてキャッチフレーズがついてしまいそうですが、実のところまったく気取らない店であって、あたりの柔らかな主人が迎えてくれるでしょう。 暖簾には大きく『ひさご』の文字が書かれているものの、これを読みこなすことが難しい向きには(要するに私がそうなのですが)、店の左端にある「親子丼」の看板を目印とするとよいでしょう。 看板の通り親子丼で有名な店ではありますが、所謂丼物・うどん・そばを扱った店で、一通りのメニューは存在します。ただしそれらの中には、「あまきつね」「花まき」「けいらん」「のっぺい」といった(少なくとも私には)正体不明の京都メニューも含まれており、それらについては各自素性を確かめてきてください。 小振りの丼に盛られて出てきた親子丼は、とろりと溶けた卵の上によく香る山椒が振られています。この全体のふんわり柔らかな具合がここの親子丼の最大の特徴であり、他で食す機会のないものなのであります。それに鶏肉の柔らかさが対応しており、最後までおいしく食べた丼は小振りだったはずなのにその実深さがあり、全体に随分ボリュームもあったことに気付かされます。 食べ終えて一杯850円の代金を支払ったあと(この店では親子丼は高いほうに属します)、午後の予定に余裕があるのであれば、付近の路地を散策しつつ少し北へ上がって、『長楽館』の喫茶室で食後のコーヒーをいただくのも良いでしょう。古い立派な洋館の中で、古ぼけた味のコーヒーをいただくことができます。 |
最終更新日04/09/10