linkbanner Updated on January 1, 2003

 

Frankie Miller
フランキー・ミラー


その夜、シェイ・スタジアムを埋め尽くした観衆は興奮に包まれていた。ニューヨーク・メッツが本拠地を構えるこの球場で熱烈な歓迎を受けたのは、実に14年ぶりに活動を再開したイーグルスである。伝説のグループの復活を祝う観客の中に混じって、フランキー・ミラーも気持ちの高ぶりを覚えていた。旧友のジョー・ウォルシュの雄姿を目に収めて会場を後にした彼は、一緒にいた恋人に「今晩のことはずっと忘れられないね」と語ったという。音楽に浸る喜びをかみしめていたミラーは、まもなく自分が異変に襲われることに気づいていなかったはずだ。

ミラーはこの日深夜、脳溢血に倒れ意識不明の重体に陥る。1994年8月26日、44歳の夏だった。南部臭の立ち込める黒いこぶしに恵まれた早熟のロック歌手は、人生の年輪を重ね独特の歌心に新たに磨きがかかり始めた矢先に、天性の歌声を奪われた。5ヶ月後にやっと意識を取り戻したときにも、医師はこれから一生歩行も会話もできない恐れが高いという診断を下した。

recent Frankie Millerミラーに医師の予想を裏切る回復の兆しが見られ始めたのは、病院を訪れた友人が彼の手をとってギターを持たせたときからだ。残念ながら、今の彼に若きロックスターの姿を重ねるのは難しい。言葉の発声から歯磨きの仕方まで、人間生活のあらゆる基礎を、献身的に介護する恋人の助けで学び直しているのが現状である。

それでも黄金期のブリティッシュロックを知る彼が必死に生き長らえ、リハビリ活動の水準ながらも、今や作曲も少しずつ再開したというのは、心に響く知らせだ。彼と同時代に活躍した数多くのスターたちを相次いで見舞った悲劇を思い起こせば、尚更そんな思いを強くせざるをえない。


Frankie Miller

ブリティッシュ・ロックを代表する
ブルー・アイド・ソウル歌手

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失われた声を求めて
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