チンパンジーとボノボ(ピグミーチンパンジー)に関する本から、

人と長年暮しているチンパンジーにいろいろな人とチンパンジーの写っている写真を見せてヒトとチンパンジーとに分類させた。そのチンプは分類をいとも簡単に行ったが、ただ一枚中に混ざっていた自分自身の写真のところで迷い、結局ヒトの方に分類した。

チンプ達に彼等の好物のグレープフルーツの入った箱を見せてから森に行き、中身を隠して空箱を持って帰って来る。空箱を見たチンプ達はモノが森にあることを理解する。そしてオリから解放されると我がちに森に殺到しグレープフルーツを探す。しかし、巧妙にに隠してあるのでなかなか見つからない。そのうち探し疲れ、昼寝の時間になって、戻って来て眠り始める。皆が眠りについた頃一人のチンプがこそっと起き上がり、森に戻っていく。そして、即座にグレープフルーツを見つけてたいらげた。つまり、彼は先ほど既にブツを発見していたのだった。しかし、より安全にブツを独り占めするために知らんぷりして昼寝時間を待っていたのである。

あるボノボ(カンジ君(宝の箱という意味らしい)、アトランタ在住)に関する記録、

カンジは数百の記号の書かれたボードを持ち歩きその記号を指でさして会話することができる。
記号にはバナナやリンゴやオレンジジュースなど、好きな飲食物、
遊び場、寝室、など特定の場所、
良い、悪い、喜ぶ、悲しむ、などの基本的概念と感情、
などがある。
彼がそれらの記号をいかに使うかの面白い実例が書かれていた。

例えば、寝てる人の枕を引き抜き、
「マクラ」「悪い」という記号をさしたり、

人の足元に水をかけて、
「水」「悪い」という記号をさしたりするそうだ。

つまり、彼はそれらの記号の意味をわかっているだけでなく、
それが許される程度の「悪い(いたずら)」であることもわかっているようだ。
(許されるいたずらは犬や猫も得意だが。)

カンジの好きな遊びの一つは「追いかけっこ観戦」だ。
負いかけっこも好きだがそれを観戦するのも好きだという。
それをしてもらうとき、手招きで「あなたがあなたを追いかけてください」と指示するそうだ。
しばらくすると、その反対の役目を指示するという。

また、ぬいぐるみの犬と蛇を与えて、
「犬に蛇を噛ませなさい」と「蛇に犬を噛ませなさい」と言うと、
ちゃんと噛むほうと噛まれるほうを逆にして噛ませて見せるという。

この二つの事例は行動する者とされる者との識別がはっきりできていること、
また、後の例ではその区別が文法的にも出来ていることを示している。

また、スポーツ観戦というのは他人の行為を見ることによって自分がしているかのように想像し頭の中で楽しむという高度な遊びであり、そのような他者への自己投影ができることも示されているという。

ある日研究者がどっかでぶつけて怪我して「痛い!」と叫んだそうだ。
そしたら、カンジが駆け寄って来て足だか手だかをなでたそうだ。
この行為は彼が、「自分と他人は別の感覚を持っている」という事を理解していることを示しているらしい。つまり、自分が痛くなくても他人は痛がってることがあるのだ、ということがわかっているという事だ。これはヒトでは2歳くらいから発達する能力らしい。それまでは、自分が嬉しきゃ人も嬉しいと思っているらしい。(大人になってもそういうヒトもいるが、、自分のことなのだが、)。

カンジは散歩が好きだ。研究所のひろい庭を散歩するのだ。庭には道といくつかのスポットに小さな東屋があり、特定の食べ物や飲み物が置いてある。そして、各々のスポットの写真付きのカードを作り、「今日はここに行きましょう」とカンジに見せた。しばらくして彼は庭の地理とどこのスポットで何が飲食出来るかを覚えた。で、もうカードは必要無いかと思い、持って行こうとしなかったら、カンジが自発的にカードを持って来たそうだ。カードを持ち歩くのも散歩の儀式(遊び)?の一つと思っているらしい。

カンジは独り言も好きである。人のいないとこで文字ボードの中で好きな記号を指差してブツブツ言ってるらしい。そういう時人が来るとそそくさと行ってしまうのだそうだ。

もうひとつカンジの好きな遊びは「かくれんぼ」である。ひろい庭を散歩しているときに木の上や薮に飛び込んで隠れるのが好きだそうだ。で「カンジどこいったの?」とか探されると喜んでいるらしい。なかなか見つからないときは、携帯リュックから彼の好きなものを出して、一つ一つ大きな声で読み上げていくそうだ。「これはー、リンゴでー、これはー、赤い風船でー、、」とやっていると隠れていられなくなって叫び声をあげて出てくるのだと。

彼等は又、人間がいかにして石器を用いるようになったかを調べるためカンジに石器を作らせようと試みた。食べ物を箱に入れてロープでくくり、それから、石を二つカンジに見せて二つの石を互いにぶつけて作った鋭い破片を用いてロープを切って箱を開けて見せた。カンジはその要領を理解し、さっそくトライした。しかし彼は頭はいいが手は不器用だったようだ。両手に石を持ってうまく互いにぶつけるのはむずかしかったらしい。指に怪我したりしたという。そのうち、(やけになったか?)コンクリートの地面に石を投げつけると似たような破片が出来る事を発見した。そして、両手に持って打ちつけるのをやめてしまい、もっぱら地面に投げて破片をつくってはロープを切って食べ物を得るようになったという。意地悪い研究者達は、是が非でも手で石器を作らせようと試み、地面を柔らかいカーペットで覆った。しかしカンジはカーペットを一部ひきはがしてそこで石器を作った。そこでさらに研究者達は、箱を外の芝生に持ち出した。カンジは石を一つ地面に置いてもう一つをそれに向けて投げつけて破片を作った。研究者はとうとうあきらめた。結局カンジは手で石器を作れなかったが、その知恵の深さを証明した。

、、、長々と書いたが、要するにカンジは「言葉をしゃべれず少し毛深い人間の子供」という感じである。
人間の99%の遺伝子が彼等と共通であるように、その精神的機能も又驚くほど共通している様に思われる。

文献:
チンプの話は何で読んだか忘れた。
ボノボの話はスーサベージランボー博士のカンジという本で読んだ内容。



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