第一話 恐るべきホモ(前編)

 もともと新宿3丁目あたりは、ホモの楽園としてしられている性のパラダイスです。
その頃そのあたりでその頃一番過激なショーやることで有名だった在る劇場から突然電話をもらいロクな状況説明もないまま劇場に呼びつけられました。
トラブルの原因はちょうどその日から乗り込んできたショーでした。
ショーのジャンルは残酷ショーでした。
 別にそれ自体は驚くにあたりません。流石にその頃少なくなってきたとは言え、まだまだ人気の在る出し物だったからです。
 でもやや通常のショーとは違っていたのです。どこをどう間違えたものか出演者が2人とも男だったのです。其れも若くて格好いいジャニ系の男のコというのならならまだわかりますが、2人とも40手前のオヤジでさらにデブですらありました。それになぜかこの2人が、とてもよく似ています。 
 最初はきっと2人おそろいの巨大なアフロヘアーのせいでそうみえるのだろうと思っていましたが、後で本人達から聞いたところ2人は双子の兄弟だということでした。
 一体何処でどう道を踏み誤ればこんな事になってしまうのかわかりませんが ショーの内容もやはりその外見にたがわぬとんでもないものでした。

 このショーの上演中に照明マンが、何人もやめてしまいましたが、それもムリはありません。

 其れまでストリップが作り上げてきたどんなに得体の知れない出し物も彼等のつくり出した異様な世界に到底太刀打ちできるものではありませんでした。 
 まず真っ暗なステージに太鼓の音が鳴り響きます。
 するとスポットライトがついて舞台中央に仁王立ちしている太った中年男にあたります。
その太った中年男は、巨大なアフロヘアーに何故か般若の面、ピンクのスケスケのネグリジェを身に付け下にはフンドシが透けて見えています。
 やがてもう一人のデブがフンドシ1枚で現れ、ネグリジェのデブを追いかけます。
 2人は狭い舞台を物凄い勢いで走り回り客をビビらせます。
やがてありがちなラテン系ムード音楽にのって2人はカラミ始めました。
 濃厚なディープキスのあとは肉弾相撃つ格闘技のようなカラミでしかも解説?つきの本番クロクロでした。
 約15分程の時間だったはずですが、時計のハリが逆に進んでいるんじゃないか?というぐらい長い時間に思えたのは私だけではなかったはずです。
 立ち上がりの曲が流れ、ほっとしたのもつかの間本当のショーはここからがスタートだったのです。
 彼らのショーは、本番マナイタショーだったんです。
ハジメは冗談かと思いましたが、彼らは真剣でちゃんと客をステージにあげプロとしての職務をはたし始めました。

 客もシャレであがっただけですから、スキがありました。
 プロはそのスキを見逃しはしません。
 お客のチンポはあっという間に中年デブ、アフロのケツのアナへと吸い込まれていったのでした。しかもそれだけではありませんでした。
 当然のようにもう一人のデブがお客のケツのアナにマーガリンをヌリはじめ、そのまま挿入に及んだのでした。
 晴天の霹靂でした。
 目からウロコがおちるとはこのようなことをゆうのか?と思いました。
 これはもう、犯罪以外のなにものでもありませんでした。
それまでショーの演出を散々手がけていましたが、犯罪ソノモノをショーにしているのを見たのははじめてでした。
 思えばストリップの演出というのは、基本的にいかに犯罪をそうじゃないかのように見せ、女の娘を納得させぬがせるか?という一点かかっていたようなものだと思っていたからです。
 いつも警察の殴り込みにおびえ(手入れともいう)少しでもエゲツないショーをこぎれいに見せ、警察のおなさけをかおうとしていた自分が情けなくなりました。
 一体この後どうなるんだろ?頭のなかでたくさんの犯罪の名前が、バシ、バシ飛び交っています。
 そのどれにも自分が引っ掛からないことを確認できたところで、照明サンに明かりをオトしてもらいました。
 モチロンですがアフロブラザーたちは、少しも反省なんかしていませんでした。むしろ、途中で電源をきられたことにハラをたてていて、<あのまま、続けてりゃ、お客も気持ちよくなるから絶対、苦情なんてこないのに途中でやめたら、そりゃあ、いたいわよ!>などといいながら、ケツから血を流しているお客をおきざりにして、さっさと楽屋へときえてゆきました。
 幸いなことに、お客さんの度量が広くパトカーではなく救急車を呼んで欲しいと、言ってくれたのでコトは大事にいたりませんでした。お客はケツから流れる血をヌレタオルでおさえつつ劇場のタダ券を握り締め、社長の車で病院に運ばれていきました。
 でも、流石は新宿、ナカビ〔5日目のこと)を過ぎたあたりから、そのスジのお客が集まりはじめ、劇場は朝から立ち見がでるほどの盛況となりました。もっとも、ステージがなぜかマーガリンとウンコが入り交じったような独特の臭気がただよい、ほかの踊り子たちからの苦情が絶えず支配人は、疲れ果てていましたが。
 まあでも、そのあとはおよびがかかるでもなく静かな日々がつづいたためか、その後このアフロブラザーは暫く私の記憶から消え去っておりました。

 

 

続く

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