I LOVE YOU OH NO!
from press sheet of the album "Welcome To Plastic World"
20世紀の無視できない発明プラスチックス
お気に入りのアーティストのトリビュート・アルバムが出ると聞いても、胸がときめかなくなって随分経つ。凡庸なカヴァー集であることが多く、中に「おやっ」と思う曲が1、2曲あればいいほうだからだ。ところが、「ウェルカム・トゥ・プラスチック・ワールド」は捨て曲なし。全曲オモロい。 東京ニューウェイヴ・オブ・ニューウェイブ・シーンの活きのいいバンド、スプージーズとモトコンポ。一聴、孫世代はモトに忠実かと思いきや、オリジナルと聴き比べると、かなりBPMアップ!ガレージ&サーフ・テイストが注入された「DIAMOND HEAD」に、エレクトロ感溢れる「DELICIOUS」と1999な音になっているのであった。 |
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子供世代も、だんご3兄弟よろしくそれぞれアプローチが違っていて楽しい。(以下、便宜上のたとえで恐縮ですが)3男に位置する東京スカパラダイスオーケストラとFANTASTIC PLASTIC MACHINE。振り返れば、当時はテクノ・ポップ好きと第2次スカブームを起こしたスペシャルズやマッドネスのファンはけっこうかぶっていて、仲良くツートーン・ファッション(市松模様)に身を包んでいたのであった。スカで行かず、原曲自体ソウルフルな「CARDS」をファンキーにカヴァーしたスカパラ。ルイ君のシャウトは、後期プラスチックスのトシちゃんのヴォーカルをホーフツとさせて、愉快。スカで攻めただけでなく児童合唱団とおぼしき歌声が笑えるFPMの「WELCOME PLASTICS」。オリジナル自体、「ウェルカム・ビートルズ」(作詞:安井かずみ/作曲:井上忠夫)の替歌だったわけで、この辺のユーモアある編集センスはユニット名にプラスチックスを入れてるだけある。
次男にあたる福富幸宏と砂原良徳。2人とも技あり。「TOP SECRET MAN」はパリの馬鹿ノリ・ディスコを横目で睨んだサウンドに、ライラ・フランス嬢のロリ声を乗せるところがトレビアン。「ROBOT」はクラフトワークの同名異曲と合体したサウンド・デザインが最高。SEの一つ一つに砂原氏のテクノ・ポップっ子ぶりが偲ばれる。 |
川勝正幸(エディター) |