PLASTICS INTERVIEW before DEBUT 2
![]() Masahide Sakuma |
プラスチックスのメンバー全員がテクニックを追求する音楽に好意を持ってないこと、その反発を表現行為に転嫁するうえでパンク・ロック(特にセックス・ピストルズ)が触媒的な役割を果たしていたことは偶然かもしれないが興味深い。
Mビートしかないシンプルなコンセプトにひかれた。セックス・ピストルズは、基本的にはミュージシャンじゃなかったし、今まで音楽をやってきた人だったら、おそらくああいうことはできなかったと思う。 技術的にもうまいミュージシャンがエリート意識と格闘しながらそれを越えたところで演奏を展開するというのとは全く逆の、ノー・ミュージシャン・バンドの理念の結晶みたいなところがプラスチックスにはある。
C重いものじゃないみたい。 と言いながらも、彼らは自分たちのやっていることを明確に把握している。 その意味で、彼らはきわめて過激な存在である。ディーヴォの方法論が思い出される。しかしドラムもベースも放逐してしまった点で、プラスチックスはさらに北極のアイスクリームである。 S極端までいかないと面白味がない。 のである。 彼らの方法論の核をなすのがリズム・ボックスとシンセサイザーによるリズム・コンビの導入である。
T複雑なことをやって効果があるのはあたりまえ。単純なことをやって効果を出したかあった。 |
![]() Chica & Hajime |
しかも彼らの過激さは、リズム・ボックスをアクセサリーに使うのではなく、作品構造からボーカルや演奏のスタイルからステージ・アクションまで、すべてを想定するものとして導入している点である。メロディも歌もいったんデジタルなリズムに分解され、再構成される。ギタリストがえびぞりフレーズを弾くわけでも、ボーカリストがセクシーに尻を振るわけでもない。客席の熱狂が演奏者の神がかり的な即興を誘い出すといった神話も拒絶している。 Hオリジナルを作った時点で"トーキョープラスチック"というコンセプトがあったわけです。プラスチック・イコール・都会的・宇宙的というイメージと、トーキョー・イコール・ツー・マッチ・インフォメーションとね。日本は明治以来ずっと近代化イコール西洋化みたいなところで、追いつけ追いこせでやってきたんだけど、東京で起ってることを見てると、追い越しちゃってる部分もあるわけ。猿真似と言われるけど、それをまたどんどん真似ていって、もうルーツが何なのかわかんないようなグショグショでヘンテコなオリジナルみたいなもの、たとえばラブ・ホテルなんかそうでしょう。ぼくらの音楽もラブ・ホテルみたいなものだと思うんです。そういう何が何だかわからないオリジナリティみたいなものを、音楽に限らず、東京から送り出せたらいいなあと。 しかし、この方法論の新しさや過激さは、彼らの歌ではないが"トゥー・マッチ・インフォメーション"の波にさらわれれば、たちまちのうちに風化してしまう弱さを持っている。少なくとも今の時点ではまだ彼らの演奏がそうした懸念を完全に吹き飛ばすだけの力を持っていないことは確かだ。もちろん、そのことは彼らにとっても既に最大の関心事としてあるはずである。 彼らにリズム・ボックスが好きなのかと訊ねると、しばしの沈黙があった。 S病気だね、一種の。たとえばスネアのおかずを入れようとすると、実際に音が出る1小節前にスイッチを指令しなきゃならない。非常に歪んでるんですね。とてもつらいですよ。でも、まあ、世界一器用な人やなあと、リズム・ボックスのことを信頼してあげている。練習の時も、普通のバンドだったらこの曲はブギでやろうとかいってリズムを決めるでしょう。ぼくらの場合は、リズム・ボックスについている記号を使ってロック2にしようとかロック3にしようとかやってる。 |