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反逆者前線接近中
[おまけ]


<キール視点:シャルズがいない間>

 キールの作り出した魔法の明りが空中に浮いている。
 ブレーカーを上げようと、その明りと共に部屋を後にしようとして、シャルズの気配が突然消えた事に気が付いた。その少し前に、魔法の力を感じたことから、何らかの魔法の作用である事は間違いない。
「カーボニル教授」
「何だ?」
 一拍の間もなく、返事が返ってくる。
「そこにシャルズはいないな?」
「……そのようだな」
 今度は数瞬の間をおいて、返事が返ってきた。キールの質問に、あたりを探ってみたらしい。
「だが、心配する必要はあるまいて。シャルズ殿はああ見えても、お強いからな」
 そうだな、とキールは同意した。シャルズの強さをその目で確かめたわけではないが、簡単にやられてしまうような人間ではない事は何となく感じていた。
 それに、シャルズはまがりなりにも一級賢者なのだ。あまり知られていないが、一級賢者は魔力耐性を持つだけではなく、それなりに自分の身が守れる事を前提とされている。
「シャルズの持つ色は?」
「何故だ?」
 今度の答えはすぐには返ってこなかった。代わりに質問が返ってくる。
「シャルズの居場所を捜すには、シャルズの気配をたどるよりも、シャルズの持つ石の気配を追う方が楽だろう?特に、アーディルには魔法を牽制する結界がはられているんだから」
「それも、正しかろうて」
 カーボニルは一つ頷いて、キールの顔をまじまじと眺めてきた。
「だが、ともかくは光が必要であろう?」
 カーボニルはドアを開いてキールを部屋の外へと促した。どうやら、ブレーカーのある場所まで案内をしてくれるらしい。暗闇の中で我武者羅に動くよりは、学院に詳しい彼がいるほうがよっぽど安全だろう。
 促されるままカーボニルの後を追って、キールは苦笑を浮かべた。
「話していいのか?『ペン』は一級賢者の最高機密の一つだろう?」
「よく言う。『ペン』よりも機密とされる『石』の事を自ら話しておいて、今更だとは思わぬか?」
 ペンは剣よりも強し。その言葉が正しい事を証明するように、賢者の持つペンは並の剣よりも強い。それは、一級賢者にとって最強の武器であり、そして「石」は最強の防具とされているのだ。
 無論、その事実を知るのは一級賢者のみである。
「それに、貴殿に隠す必要はないと思っておるが?『雷光院』殿?」
 カーボニルは楽しそうに笑った。
「とりあえず、シャルズ殿の色を教えるのは、あの敵を倒してからだ」
 カーボニルの指先の先に、ブレーカーが見える。
 そして、それを取り囲むのは――
「ドールって事か。わざわざご苦労様なことで」
 キールはにやりと笑いながら、空中に魔方陣を刻む。ドールごときに本気の力を出すまでもないだろう。
 ドールがキールに気付いて行動を起こす前に、キールは魔方を発動させた。小さな水の塊がドール達を一斉に襲う。
「さようなら〜、また会う日までっと」
 ドールは複数で作られる事が多い。自分で考えて動く、というよりも、周りの行動を見て次の行動を決める性質を持つ彼らを退治するには、一体一体を相手にするよりも、まとめて退治する方が簡単なのだ。
「ふむ、さすがは筆頭魔術師殿といったところだな。容赦のない一撃だ」
「やるときは徹底的に、がモットーですから」
 ドールの残骸を踏みつけながら、ブレーカーに手をかけてキールは薄く微笑む。がこん、という音の後に、光が戻ってきた。
「シャルズ殿の色は緑だ」
「緑か。……よし、分かった。見つけたぞ」
 学院内にいるお陰か、街中で魔法を使うよりもずっと楽だ。
 キールはカーボニルへシャルズの居場所を告げて、自らは空間移動の魔法を発動させた。

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