好き好き、北村薫 |
朝霧 北村薫 東京創元社 ![]() |
■STORY■ 円紫師匠シリーズ第5作。そして現時点での最新作。 初登場の時には十代だった主人公も、大学を卒業し『みさき書房』に就職することになった。 社会人となった私は、さらに色々な人と知り合っていく。 今回も円紫師匠は主人公を見守るように、人の心で出来た謎を解いていきます。 ■COMENT■ ストーリィ紹介が本当にだらしないですね。でも、この本に関しては、あまり細かく書いて しまうと作品の香味が失われるような気がしますので、まあ許してください。 今回の私が付ける「白眉」といえば、推理ではなく、セリフでした。出版社の先輩の 「損するのが分かってても、出さなきゃいけない本て多いでしょう。(中略) 本屋が稼ぐっていうのは、売れない本のため。ね、社員のっためじゃないの。一億入ったら、 《ああ、これだけ損が出来る》と思うのが本屋さんなの」と、いうセリフ。 こういう本屋さんが多ければ、私はいつまでも本を読んでいけそうな気がするなあ。 作品の内容ついて少し語ると、どうしてこのシリーズの愛はいつも苦いのか、と、思う。 主人公『私』自身の愛はまだ語られていないけど、それが苦くないように祈ってやみません。 (99.07.22) |
夜の蝉 北村薫 東京創元社 ![]() |
■STORY■ 円紫師匠シリーズ第2作。 大学1年の時に第2外国語が一緒で知り合った、正ちゃんと江美ちゃんも引き続き登場。 私は、あわい恋心を覚えたり、初々しい愛を間近に見たり。 今回も円紫師匠は主人公を見守るように、人の心で出来た謎を解いていきます。 ■COMENT■ 文庫の裏表紙に「第四十四回日本推理作家教会賞を受賞し、覆面作家だった著者が素顔を 公開するきっかけとなった」って書いてありました。ちっとも知らなかった(笑)。 今回も殺人事件はありません。 そこにある謎は、ほんとうに些細といえば些細に見えます。 でも。今回、思ったのは、「何よりも謎で恐ろしいのは人の心」。世の中で一番のミステリですね。 私は前に読んだこの作品をこのレビューのために再読して、前はあんなに醜い、ずるい、と思った 場所が、今回はそれほどでもないのに気がつきました。大学生の『私』は、やっぱり「コワイ」と 思ったようです。 人間の欲望もいろんな切り口で見ることが出来ます。 (99.07.22) |
空飛ぶ馬 北村薫 東京創元社 ![]() |
■STORY■ 私は、本読みで寄席にも通う、ちょっと変わり者かもしれない女子大生。 大学の雑誌の『卒業生と語る』企画で前からファンだった落語家、春桜亭円紫師匠と知り合うこととなる。 この円紫師匠、凡人には見えないようなところが見えてしまう人で、ふとした謎をするりと解いてしまう。 『鮎川哲也と十三の謎』の一冊として刊行された、円紫師匠シリーズ第1作。 ■COMENT■ はじめてこの連作長編を読んだとき、ひさしぶりに面白い推理小説を読んだ気になった。 なにしろ殺人事件のひとつも起こらないのに、面白くてするする読んでしまうから。 ところで私は落語が好きである。大学の時、教室で古谷三敏の『寄席芸人伝』を読んでいて、 「あなたもその本が好きなの?」 と、声をかけられたのがキッカケで友達になったやつがいるくらい。 確かに、お嬢さま学校で『寄席芸人伝』を読む女子大生って、かなりのマイノリティだったろう。 主人公の「私」だって、寄席に1人で通ってしまうというあたり、充分マイノリティだろう。その上、 「神様、私は今日も本を読むことが出来ました」 と、つぶやいて眠りにつく女子大生だよ。 ・・・とても親近感を覚えるではないか(笑)。 ともあれ、最近こんなしっとりした推理小説にはお目にかかってない。それこそ出会いを神様に感謝したくなるシリーズだったと思う。 (99.06.07) |
覆面作家の愛の歌 北村薫 角川書店 ![]() |
■STORY■ 覆面作家の正体は、新妻千秋。超お嬢さま。 ところが、この新人推理小説家、とってもすごい特技があったんです。それは、現実にも謎を解いてしまうこと。それと・・・。 天国的な美貌のお嬢様にハラハラする編集・岡部良介や、ちょっと面白い登場人物が毎回登場の連作推理短編。 ■COMENT■ 覆面作家シリーズの第2作目。 なぜ、2作目を取り上げるかというと、こっちを最近読んだからです(笑)。店主の都合だけですね。ごめんなさい。 私は北村薫さんという覆面作家の作品に出会って、たちまち、その静かな作風のファンになってしまいました。当初、性別もわからない覆面作家として活躍されていて、その瑞々しい、だけどちょっとだけ古風な描写から、青春時代を過ぎてからだいぶ経つ女性かと思っていたのですが、ハズレました(笑)。 私が、まだその正体を知る前に読んだのがコレ。 なにしろ、主人公が覆面作家の超お嬢さま、ですもの。読み手としたら、なんとなく実際の覆面作家・北村薫にイメージを重ねてしまいますよね?(まあ、良く考えてみたら、誰もがそう想像するの予想がつくし。そんな主人公を「天国的な美貌」と設定するのは、女性だとしたらかなりな人だわね・・・) そんな、好奇心も手伝うような設定ですが、推理は本物です。 どうぞ北村薫の世界をお楽しみ下さい。 (99.05.22) |
覆面作家の夢の家 北村薫 角川書店 ![]() |
■STORY■ 覆面作家の千秋お嬢さま。 無事に二冊目の本も出版される運びとなりました。 担当編集者・岡部良介は、千秋さんのことを憎からず思っているんですが、なかなか そういった方面の進展もありません。外出も打ち合わせだったり、取材だったり、 いっこうにデートにはならないんだけれど・・・。 覆面作家シリーズの第3作目。 ■COMENT■ 第3作目では、人物関係に重大な変化が! 良介の兄、優介が2作目で出会った恋人と結婚したのです。ううむむ。はやい。 仕事が速いぞ、優介。さすが、良より優の方が優れていると、日頃から豪語するだけのことはある。 今回の本では、さすが千秋さんと良介のまわりで話が回るだけあって、推理作家の先生も色々 登場してます。短編の割に、話の筋には特に関係なくでてくる人がかなり多い作品なのかも。 それがまた、話に厚みを与えているんですけどね。 実際、推理連作とはいえ、トリックだけの話でないのが北村薫という作家のいいところ。 ほんとうは、謎は人の心にあるようです。 そんな、二人のまわりで、ゆっくりと流れる、季節の美しさもお楽しみ下さい。 (99.05.26) |
タイトル | 出版社 | 発行 | |
円紫師匠シリーズ | 空飛ぶ馬 | 東京創元社 | 1989.03 |
夜の蝉 | 東京創元社 | 1990 | |
秋の花 | 東京創元社 | 1991 | |
六の宮の姫君 | 東京創元社 | 1992 | |
朝霧 | 東京創元社 | 1998.04 | |
覆面作家シリーズ | 覆面作家は二人いる | 角川書店 | 1991 |
覆面作家の愛の歌 | 角川書店 | 1995.05 | |
覆面作家の夢の家 | 角川書店 | 1997.01 | |
時間シリーズ | スキップ | 新潮社 | 1995 |
タ−ン | 新潮社 | 1997 | |
冬のオペラ | 中央公論新社 | 1993 | |
水に眠る | 文藝春秋 | 1994 | |
ミステリは万華鏡 | 集英社 | 1999 | |
謎物語〜あるいは物語の謎〜 | 中央公論新社 | 1996 |