バークレーからポートランドへの単独ドライブは1泊2日の強行軍でした。海岸も林も確かに美しいのだけれど、感動は初めだけで、途中からは単調で飽きてしまい、内陸の幹線をひた走りました。はてしなく続く直線には参りましたが、どうにか無事に到着しました。
ドライブの途中でとうとう恐れていたことが起きました。シー・ランチという当業界では有名な海沿いの高級別荘地を見学していた時のこと。住民以外は立ち入り禁止と言われ帰ろうとしていると、親切な50代後半から60前半の一人暮しのおじさんが中を案内してあげるというではありませんか。第一印象でゲイであろうことは見当がついていたのですが、そんなことはバークレーでも日常的であったし、腕力で負ける可能性もありえない老人だったので、喜んでついていくと、「泊まっていっても良い」「プール(住人専用の素晴しいのがあるのは有名)に行こう」など見え見えのお誘い。軽く流していると、「僕はゲイだ。君は大変魅力的だ。きっとゲイに大変もてるに違いない。」とあまりに直接的なアプローチ。「私は女性にしか関心はないし(本当)、今はしっかりつきあっている彼女がいますから(うそ)」と断わって話は完結し、その後すぐに見学を終えて立ち去ったのでした。彼は、小学校の先生であり、知的な紳士だったのでよかったのですが、後から少しずつショックに感じてきたのは、「自分は100%ストレートに見えるから、ゲイは近づいてこない」という確信が崩れたことでした。友人には、本人はストレートであっても、ゲイやレズにアプローチされた例はいくつかあったけど、いざ自分の身にそれが起きると、ちょっと勘弁して欲しいと生理的に思ってしまった。「性的嗜好は個人の自由」「自分は同性愛には無関心」という2つは、今後もずっと変わることはないと思うが、今までは無意識に共存していたのが、今後は少し気に留めておかないといけないかなあ、と思います。
ポートランドへ入って1週間、ようやく段ボールも全て解き終わり、家らしくなりました。学生だったこれまでと比べて、自宅でくつろぐ時間が増えると思われるので、限られた予算の中、家具などの選択には結構時間をかけ、それなりに満足の行く空間となりました。バークレーの家具は殆ど全て後輩に売り払ったため、学習机とテーブルはアンティーク屋の中から探し出し、本棚は買わずに木製の空箱を利用するなど、なかなか楽しめました。また、ついに念願のカプチーノマシンを購入したためもあり、外に出ずに自宅でごろごろしている事が多くなりました。1ベッドルームのアパートは、セキュリティロック付で、4階のため安全。住み込みの大家が大変親切で気さくなおじさん。都心から15ブロック程と交通至便、反対に1ブロック行くとカフェや洒落た店が並ぶ商店街、バス停まで徒歩0分、スーパーマーケットは道路の反対側と、利便性は抜群。風通し良し。家賃は駐車場とユーティリティ込で$520/月と格安。文句は殆どありません。ちなみに、消費税0%はものすごく大きなメリットです。
ポートランドはバークレーとかなり似ており、(今の季節は)晴れが続くさわやかな気候。木々が大変多く、都心から郊外のショッピングセンターまで簡単に行き来できる大きさです。ウィラメット川はなかなか立派な幅で、まだ見ぬコロンビア川は全米第3位とさらに大きいらしい。都心からも1時間で行ける高峰フッド山では1年中スキーができます。人々は白人がかなり多いが、アジア系や黒人もそれなりにいます。日本のものは食材から書籍まで何でも手に入るし、10月頃には紀伊国屋書店とスーパー宇和島屋も開店するそうです。バークレーよりも、少し涼しく、緑が濃いのは、9月末から延々と春まで続く長雨を恐れさせますが、こちらの人は傘をあまり持ち歩かないらしい。それほど軽い雨ということなのでしょう。
インターネットで知りあった日本人と既にテニスを1回しました。彼は州立大学に留学している24歳のしっかりした若者です。新しい街に移って知り合いが一人もいない、という状態では、インターネットの力に感謝するところが大です。まあ、仕事が始まれば、自然とアメリカ人の友人が増えていくと思います。