97年10月12日

仕事が忙しくなる合間を縫って、いよいよポートランドの娯楽三昧。まずは水曜の夜、久しぶりのオペラ「ドン・ジョバンニ」。いつも仕事でもノータイ&チノパンだが、今日に限ってはスーツ姿で出勤したら、皆にどうしたんだ?と聞かれた。全く。でも、会場ではドレスアップした紳士淑女に囲まれ良い気分。女遊び狂いの悪人が最後は地獄に落ちるという単純なストーリーはなかなか笑えたが、オペラそのものの出来はいま一つ。ホールが広いためか音が散漫で、主役もオケもぱっとしない(召使は立派すぎで主役かと思った)。面白かったのは、韓国美人Jee Hyun Limが重要な役(ドンに誘惑される田舎娘)で出演していたこと。アジア系の出演に嬉しくなってしまった。

翌木曜日は美術ギャラリーツアー。毎月第一木曜日は市内の全ギャラリーが無料開放しており、一部ではワイン&オードブルのサービスつき。同僚女性3人(独身40代主任カナダ人、35歳位1児の母、25歳くらい新婚熱々)に、遅れて動物園のスタッフJ(主任の大学以来の友人のカナダ人、独身男性)が合流し総勢5人。ダウンタウンにはソーホーをずっと冴えなくした感じの倉庫再利用ギャラリーが一杯あり、アメリカ新進アーチストの作品か名作のコピーを並べている。はっきり言ってどれも冴えない。アメリカ芸術の底の浅さを再確認した感じ。明らかにウォーホルを真似たポップアートが物悲しい。これでも見入っている人も結構いたから、私の趣味に合わないだけか?で、芸術はさっさと切り上げて食事をすることになりアイリッシュ・パブへ。新婚妻のおのろけから結婚の話しになり、そして日米加における結婚の比較で盛り上がる。内容は省略しますが、「普段は明るく振る舞っている人々が、実体験を赤裸々に語ると恐ろしい」です。

そして、先週末にシアトルのワシントン大学で勉強しているMさんを訪ねた。片道3時間の自然の中のドライブは快適。一番驚いたのは、シアトルが大都会だと感じたこと。以前、サンフランシスコから訪れた時は大変落ち着いた小さな街だと感じたので、「大きな小都市」ポートランドに住んでから大きさの尺度が随分変わったのだと実感。こうなると、東京へ帰るのが恐ろしい。また、シアトルの日本人コミュニティは充実している。紀伊国屋書店もスーパー宇和島屋もあり、Mさんの住むアパートには日本人の表札がごろごろ。しかし、久しぶりに安心して日本人と会話を楽しめた。

仕事の方では、5回の住民オープンハウスが終了。住民相手にアドリブで英語で応対するのはなかなか楽しい経験。とりあえず、突飛な質問に平易な言葉で答えられたのは自信につながった。議員と住民のディスカッションからも、いろいろ考えさせられた。民主自治の実現は難しい。そして、先週からは、いよいよ政策諮問委員会の山場へ突入。再重要問題である「購入可能価格の住宅供給に関する規制導入」に関する議論では、革新派と漸進派が真っ二つ。スタッフは右往左往し、傍聴席には30人を越す市民がプラカードを持って押しかける。感動したのは決戦投票に至るまでの過程。革新派の市民団体代表および漸進派の不動産業代表がそれぞれ陳述を行い、その後で諮問委員会の委員(各市長や学識者など)ほぼ全員が自分の意見を述べ合った。どの意見も論拠のあるしっかりしたもので、市民も業者も政治家も皆よく勉強している。こちらの会議には下打ち合わせなどないから当然か。また、反対意見への無意味な野次などもなく、皆が他人の意見をきちんと聞いていた。さらに、議長を中心にユーモアのぼけと突っ込みも入り、心地よい緊張の中での決戦投票では1票差で漸進派案の勝利。そして、後腐れなくすぱっと解散。議事運営かくありたい。今週から議会審議も始まる。住民から議員まで、幅広い人々と話すことが、本当に楽しい。


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