日本W杯出場決定に寄せて


皆さん、フランスで会いましょう!

ワールドカップに魅せられ始めたのは、マラドーナの「神の手」「ごぼう抜きドリブルシュート」を観て以来。4年前のドーハの時も日本が出場するという実感はいま一つ湧かなかった。しかし、今日、とうとう新生日本代表が自分達の手でフランス本大会への切符を手にした。それも、最後は中田、城、岡野といった若手の力で勝利したことが本当に嬉しい。壁の前まではベテランの力でたどり着くことができても、それをこじ開けるのはやはり未知の可能性を秘めた若者達であって欲しかったから。

予選中、あちこちの友人から様々な言葉をかけられた。「やっぱり無理だよ」「実力ないんだから」「諦めが悪いねえ」などの冷淡な声に憤りを感じたことも多々あったが、自分が望んでいるものが明確であり、その可能性があるかぎり応援する気持ちに迷いはなかった。客観的に実力を判断することは勿論必要であるし、正直日本代表が他国よりも遥かに抜きに出ているとは私も思わない。しかし、ただ実現する可能性が低いというだけで自分が欲しいものを簡単に諦められるならば、それは人生の歓びを無駄に棄てているに等しいのではないか。

日本を離れてから、日本人としての自覚が強まった私には、日本代表の応援はスポーツ観戦の域を遥かに越えたものであった。負ければ心底悔しがり、勝てば狂気乱舞する。日本という国を愛し、誇りをもち、そして自分の国が世界の列強と同じ舞台に上る日を夢見続けてきた私には、1997年11月16日という日は本当に特別なものになった。

予選中、ずっと励ましの言葉をかけ続けてくれたイタリア、スペイン、韓国、アメリカ、そして日本の友人達には本当に感謝している。来夏、日本代表が彼等の国と、またJリーグでプレーしてくれた世界のトップ選手達と、フランスの地で闘う日が本当に待ち遠しい。私も是非、フランスに行ってその現場に居合わせたいと思う。

最後に、メールや電話で喜怒哀楽を共にした、Y, Y, D, T, H, Mに心から感謝。さあ、祝杯をあげよう!

(付録:私の喜怒哀楽の経過)

9/7:ウズベキスタン戦

インターネットで結果のみ知った後、先輩Nさんが日本から持参してくれたビデオで数日遅れで観戦。大観衆の熱気に感動。神に取り憑かれた前半と、守備が乱れた後半との落差に一抹の不安を抱く。

9/19:UAE戦

インターネットで結果のみ知った後、こちらのレンタルビデオで数日遅れて観戦。酷暑の中、よく頑張ったと思う。韓国戦への期待が高まる。

9/28:韓国戦

まさに天国と地獄。インターネットとの接続を絶ち、2時間遅れで衛星テレビ観戦。山口の先制ループゴールに歓喜。その後の怒涛の逆転に韓国の底力を感じ圧倒される。この試合あたりで一部マスコミへの不信感が頂点に。試合前から勝たねばならないと騒ぎ、試合後にはもう終わりと糾弾するのは、まったく長丁場の予選をわかっていない。

10/4:カザフスタン戦

インターネットでの文字中継を観る。「どうして追い付かれる?」中継者の最後の悲鳴が胸に刺さる。そして、加茂監督解任、岡田コーチ昇格。サッカー協会の旧体質に絶望し、また鬼の首でも取ったように加茂氏個人を糾弾する一部マスコミにも憤りを感じる。さらに、諦めることを勧める日本からのメールが届き始めて不愉快。

10/11:ウズベキスタン戦

終了直前に奇跡的に同点としたが、やはり大喜びはできない。もやもやが続いていたが、UAEがカザフスタンに負けたことで、次の試合が大一番となり気合いが高まる。

10/26:UAE戦

天王山を応援するために、太平洋を渡って国立競技場へ。Y, Y, Eと同志と共に応援する喜び。呂比須の芸術的先制弾に見知らぬ他人とも抱き合って喜ぶが、その後同点に追い付かれ、ロスタイムも殆どなく終了。暴動というマスコミの表現は嫌いだが、会場に鬱積した不満を体感し、私も虚脱感を感じる。

11/1:韓国戦

インターネットで生の文字中継を観る。ライブでは始めて。4-4-2という本来の形に戻して勝ったことに大感動。やはり代表を信じようと思う。翌日の衛星テレビ中継も安心して楽しむ。しかし、掌を返したように褒めちぎる一部マスコミへの不信感はますます高まる一方。

11/8:カザフスタン戦

インターネットで生の文字中継を観る。まだまだ油断はできないので力が入る。結果には大満足。しかし、中山のパフォーマンスやドーハ組を特別扱いする一部マスコミに、消えて無くなってもらいたいと感じる。3決の相手はサウジでもイランでも構わないと思っていたら、イランに。出場停止や監督交代等などを聞いても、まだまだ油断できない。

11/16:イラン戦

私がインターネットで生の文字中継を観ると日本は負けないので、ゲンを担いで今日もそうする。先制に歓喜。逆転されても、画面には日本の攻撃の模様ばかり出てくるので、これまでの日本代表とは違った強さを信じることができた。そして、五輪組で同点、ずっとベンチだった岡野がVゴール。新しい日本代表の門出にふさわしい。試合が終わるとこちらは夜が明けていた。日本の夜明けだ。


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