まちづくりプランナーとしての私の目標

日本企業への帰国予定まで半年を切り、今後のキャリアについて現時点での考えをまとめる機会を得ました。
留学出願の当時に書いた文書（非公開！）と比べると、３年で随分と考えが変化したものだと我ながら驚きます。
まだまだ発展途上人、次の３年でどこまで発展するか、希望と不安が交錯します。

＜長期的な目標＞ 　米国留学および実務経験を通じて養われた長期目標は、故郷である東京の「まちづくり」（注１）の仕組みの改善に貢献していくことである。これは日本全国の都市に共通して言えることであるが、従来の東京の「まちづくり」は体系的な仕組みが弱いために個別プロジェクト（注２）単位での断片的活動を寄せ集めたものであったが、経済活動や環境問題が広域的になり社会の仕組みが急激に変わりつつある現在、その有効性を失いつつある。今後は、都市圏レベルの視点において、個別プロジェクト同士の整合性が保証されるような仕組みへの移行が不可避となろう。鍵となるのは、実効性を持つ都市圏マスタープランの作成および実施であると思われ、その前提にあるのは、経済および地理的には現実の都市活動圏を反映し、政治的にはより住民に密着した方向へ向かう自治制度の変化である。 　しかし、上記のような仕組みの改善は社会の抜本的な改革と等しいので、個人や企業で簡単に扱える問題ではない。より現実的な方法は、既存の仕組みの中で個別のプロジェクトの成功例を積み重ねて行くことで、やがてはその結果が必然的な仕組みの改善を押し進めることであろう（注３）。そして、個人レベルでは、米国での知識と経験を生かし、市町村マスタープランの作成および実施、条例を含む開発／デザイン・ガイドラインの作成、地区活性化／開発の計画および実施などを、住民参加型の手法を取りながら手がけていきたい。

＜短期的な目標＞ 　私の実務経験は帰国時（注４）において合計約５年ほど（留学前の３年強と米国での１年強（注５））に過ぎず、さらに日本から３年ほど離れていたこともあり、帰国後は東京および日本の「まちづくり」の仕組みの再学習を行いつつ、長期目標の実現に向けて実務経験をさらに重ねて行くことが不可欠である。そのためには、様々な種類のプロジェクトに携わることも重要だが、一つのプロジェクトを企画から実施まで一貫してやり通すことも同様に重要である。また、地理的には、日本全国や海外にも目を向けながらも、東京大都市圏を活動の拠点に据えていきたい。 　具体的には、広域的かつ多角的視野と合意形成の技術をもつ「プランナー」として、事業、設計、営業などの専門家と協同して以下のようなプロジェクトに携わりたいと考えている。 実効性のある市町村マスタープラン作成へのコンサルタント業務 （マスタープランの作成、協同作業や住民参加のコーディネート、各種主体との調整など） 地区活性化、再開発、新規開発など地区計画作成へのコンサルタント業務 （企画提案書の作成、フィジカルな計画の作成、ガイドライン作成、協同作業や住民参加のコーディネート、各種主体との調整など） 複合拠点開発の計画および実施 （企画提案書の作成、フィジカルな計画の作成、実施主体の設立および運営、協同作業や住民参加のコーディネート、各種主体との調整など） 海外の地区計画および複合拠点開発の計画 （企画提案書の作成、フィジカルな計画の作成、現地主体との調整など） 　なお、当面はラインに入り実際のプロジェクトに携わることを仕事の中心とし、スタッフ業務（マーケティング、会社の企画運営など）や委託研究などはどうしても必要な場合に限り二次的に行いたい。

注１：私の考える「まちづくり」とは、国、自治体、民間企業、市民など活動主体を問わず、住民の生活環境を向上させる 　　　ような計画の作成および実施を包括したものである。この広義の言葉使いの背景にある考えは、主体や対象規模など 　　　の異なる計画は互いに密接に関係しており、それらを切り離して扱うことは本質的意義を持たないというものである。 　　　例えば、「都市計画」と「コミュニティ開発」を対照する捉え方は、学問や日常業務の上では有効な場面もあろうが、 　　　とかく視点を偏らせ望ましくない結果を招きがちである。 注２：個別プロジェクトは、開発や建設ばかりではなく、教育や福祉などを扱ったものも含む。 注３：これは、横浜市のアーバンデザインの黎明期に田村明氏が取った手法である。なお、評論家や啓蒙家的な活動を通じ 　　　て改革を促すことは私の関心事ではない。 注４：現在のビザが切れる1998年７月末に帰国した場合 注５：インターンを含む

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