メトロの地理情報システム

メトロの科学的かつ定量的な計画を支えているのは、世界最高レベルと言われる地域土地情報システム(Regional Land Information System=RLIS、以下「RLIS」)です。このページではRLISの概要をご紹介します。なお、憲章に定められているように、RLISデータの著作権はメトロに属し、データは有料で販売されているます。技術や著作権などに関する詳細なご質問は、メトロのデータ・センター(Data Resource Center=DRC、以下「DRC」)へ直接メールでお問い合わせください。

RLISは、ポートランド地域の土地、人口、経済に関する膨大な情報を管理するDRCによって1989年に作成され、その後も運営管理されています。RLISは数多くのレイヤーによって構成され、各レイヤーは異なった詳細データを含んでいます(主なデータ一覧はこちら)。また、これらのデータは地域全域をくまなくカバーしているので、市や郡の境界におけるデータの欠落や重複がありません。

RLISの強みはその分析能力にあります。個々のレイヤーは単独では勿論、他のレイヤーと組み合わせても使うことが出来るので、利用者は自由に新しいレイヤーを作成することができます。例えば、下に例示したような分析が可能です(分析例はこちら)。

メトロの地理情報システムは、単なる製図マシンではなく計画ツールとして不可欠なものです。その活用によるメリットとして、以下の2点が挙げられます。

  • 複数の計画案が作成され住民および議員などに公開されるのは勿論、その作成経過も外部の専門家や住民のチェックを受けるので、開かれた意思決定が可能である
  • 地域内のデータがメトロで一括して管理されるので、各自治体はデータ収集や分析よりも政策立案に集中でき、また、自治体間の調整が容易になる

なお、RLISは土地利用検討のためのシステムであり、他のシステムで作成される交通量予測モデルと災害相対危険度マップなどと組み合わせても使われます。最後に地理情報システムの知識がある方向けに、簡単な技術解説をつけました。


<RLIS Liteのデータ一覧>
境界線
  • メトロ管轄地域
  • メトロ議員選挙区
  • 近隣組織エリア
  • 学校区
  • 地域公共交通(Tri-Met)サービス対象エリア
  • 都市成長境界線
  • 郵便番号
国勢調査データ
  • 人口
  • 世帯数
  • 一戸建住宅戸数
  • 集合住宅戸数
  • 国勢調査区
  • 雇用主(9つの業態別)とその従業員数、住所
環境
  • 等高線(10フィート毎)
  • 等高線(100フィート毎)
  • 保全および保存の対象になる環境的に重要な地区
  • 土質
  • 急傾斜地
  • 植生(6種類)
  • 植生(13種類)
建築許可
  • 用途(商業、教育、工業、業務など10種類)
  • 許可年月日
  • 許可番号
  • 住所
  • 建物価格
  • 床面積
  • 課税区画番号
  • 宅地割名称
  • 宅地割番号
  • 宅地割街区番号
  • 建物数
土地利用
  • 各自治体による土地利用計画指定(標準化、21種類)
  • 各自治体による土地利用計画指定(標準化、6種類)
  • 各自治体によるゾーニング指定(標準化、6種類)
  • 各自治体による地区計画指定
  • メトロによる土地利用計画指定
  • メトロによるゾーニング指定
  • 公園・オープンスペースの種類と所有者
公共施設
  • 市役所とその住所
  • 消防署とその住所と管轄区
  • 病院とその住所
  • 学校とその種類(小/中/高)、所有者(公立/市立)、住所、学校区
道路
  • 全幹線道路(高速道路を含む9種類)
  • 幹線道路(高速道路を含む4種類)
  • 名前
  • 種類
課税区画
  • 土地利用(9種類)
  • 面積
  • 区画番号
  • 所有者名
  • 所有者住所
  • 道路名
  • 地価
  • 建物価格
  • 合計価格(土地と建物)
  • 建物床面積
  • 建物建築年
  • 州の課税コード
  • 販売年月日
  • 販売価格
  • 消防署管轄区域
  • 公園サービス区域
  • 学校区
  • 下水サービス区域
  • 上水サービス区域
水域
  • 氾濫原(100年確率)
  • 主要河川
  • 河川(3種類)
  • 小川(通年か特定の季節のみ)
  • 分水界(雨水がどの川に流れ込むかを示したもの)
  • 湿地
交通
  • バス路線と停留所
  • 路面電車(ライトレール)路線と駅
  • パーク・アンド・ライド駐車場(公共交通乗り換え用の駐車場)
  • 鉄道とその所有者
プロ用拡張ファイル(Pro Extension)
  • アドレス・マッチ用道路データ
  • 空地一覧(空地/開発済/部分的に開発された土地の開発済部分/部分的に開発された土地の未開発部分)


<RLISを用いた分析例>
目的:集合住宅市場ニーズの高いグレシャム市の公共交通周辺において、容積率指定の変更による開発可能住宅戸数の変化を知りたい

  1. グレシャム市内で
  2. 路面電車の駅またはバス停から半径800m以内の範囲で
  3. 急傾斜地を除いた
  4. 空地で
  5. 現在は市によって一戸建住宅地に指定されているが
  6. メトロのゾーニングでは集合住宅地に指定されている土地
の面積を計算し、指定容積率を
  1. 1エーカーあたり10戸
  2. 1エーカーあたり15戸
  3. 1エーカーあたり20戸
とした場合に、建設可能な集合住宅の戸数をそれぞれ計算する。


<技術解説(GISの知識のある方向け)>
私はシステムの専門家ではありませんので、ここでは概要のみご紹介します。

RLISはcoverageおよびgridの両タイプのデータを含み、UnixシステムのArcInfo上で走らされています。ArcInfoは操作が複雑なので、GISを専門とするエンジニアおよび一部のプランナーによって操作、管理されています。そして、詳細かつ膨大なデータは必要ない大半のプランナーは、RLISのデータをshape fileに変換したRLIS Liteを、デスクトップPCのArcView3で使っています。

RLISのデータはメトロが著作権を持ち、RLIS Lite CDおよびPro Extensionの2枚のCD-ROMとして一般に販売されています。価格はそれぞれ$895.00および$595.00(非営利団体、自治体や公共機関、教育機関向けの割引あり)で、フォーマットはMapInfo MIF fileまたはArcView shape fileです。ネットワーク・ライセンスの提供や、特定地域のみのデータなど、その他のサービスも行っています。

RLIS LiteのユーザーはArcViewの操作を理解していることが前提になっています。また、CD-ROMのユーザー・インターフェースは、カスタマイズされていませんが、メトロで独自にカスタマイズしたMetro Area Geographic Information Consortium(MAGIC)も無料で入手できます。

RLIS Liteのレイヤーの精度は2段階になります。高精度のものは、1"=100'から1"=400'のスケールで集められたデータに基づく誤差±10フィート以下の課税区画レイヤー群で、道路、ゾーニング、公園などが含まれます。低精度のものは、 USGS quad(1"=2000'のスケール)で集められたデータに基づく誤差±40フィート以下の環境レイヤー群で、等高線や土質データなどが含まれます。

RLISは「プランニング・レベル」のデータベースであって、GISレベルで行う殆どの検討には問題がありませんが、CADとは性質が異なります。また、RLISデータには精度が複数あることも常に念頭に置く必要があります。特に、低精度のレイヤーを高精度のレイヤーに重ねて解析を行う場合には注意が必要です。例えば、土質データを課税区画線とを比較した場合、ある課税区画内に特定の土壌が存在するか否かは正確に判断することができません。また、RLISは日々更新および改良されていますので、データ作成日時にも注意を払う必要があります。

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