44.アプローチ 最上階5階の窓から遠くの夜景を眺めていた。 ドアのノック音がして重役室に入ってきたのは、事務理事の風間である。 「まだお帰りにならないんですか」 「家で待つ人間がいるわけではないから、同じぼおっとするなら ここの方がいいと思ってね」 風間は、宗一郎に近しい呉服問屋の三男だった。 学院に勤めて今年で16年になる五十代初頭の男である。 宗一郎から公私ともに信頼を寄せられ、常に行動を共にしていた。 「どなたか結婚相手にと思われるような方は?」 「んん・・」 聡美の顔が浮かんだ。  「ずっと思いつづけた女がいるけれど、相手の気持ちがこちらに  向かないと。 こればかりはなんとも」 寂しげに微笑んだ。 彼女は今でもパパンドレウを愛しているのだろうか。 去年の8月にビイは、崖から彼を突き落としたと言っていた。 遠く離れた異国の地で他人の手を介して行われた殺人。  自分が彼を殺した実感がない。本当は現地で生きているのかもしれないし、  聡美には彼からの便りが届いているのかもしれない。    ある朝、学院に通学途中の聡美の後ろ姿を見かけた。 その右肩から赤ん坊が顔を覗かせている。 茶色の巻き毛、大きな 丸い目、太い鼻筋・・明らかに混血児の顔だった。 和彦は、道路を手前で渡り先に横断歩道にたどり着いて待っていたが、 彼女は、会釈をしただけで、何も言わずに前を素通りしていった。 土曜日の朝、今度はまた花屋の前に立ち、彼女の様子をうかがう。 聡美は和彦の存在にきづいていたが、表情一つ変えずにひたすら 仕事をしている。 和彦も声をかけないまま帰った。 そんな風に一定の距離を置いて互いの視界に映ることが習慣になり つつあった。  5月2日。  連休前の金曜の晩、和彦が稽古を済ませて道場から出てくると、 門のところに聡美が立っていた。 彼女がちかづいてきて、 「やっぱりここだったんですね」という。 和彦が胸をわくわくさせていると、 「貴方を以前見かけたのは、ここだったんですね。・・確かに貴方の名前、  彼からよく聞いてたわ。ペンションのご主人からも、結婚式に魚住先生は  見えないんですかって訊かれて。 貴方だったなんて・・。どうして今ま  でお会いすることがなかったのか・・・。ねえ、何でもいいから、教えても  らえませんか」  聡美の目が必死に訴えた。 二人は、喫茶店に入った。 目的はどうあれ、聡美のほうから訪ねてくれた事が嬉しかった。 「去年の8月以来、ストラティスから連絡が無いの。    彼の弟が去年の秋にきて、家族にも消息が掴めないって。   その彼からも何の音沙汰もなくなって。 ・・たしか貴方からはお仕事  も紹介していただいたんですよね。なにか言ってませんでしたか」 和彦は返答に困った。  目の前の聡美の潤んだ目がいとおしかった。 「彼は・・その」 彼女の納得するような言葉を探そうとしていた。 「危ない橋を渡っていたようです。 他言しないように  言われていたんですが・・・こういう事態ですから、どんな手がかりに  なるか分からないし」  和彦は、腕を組んで左手の親指で下唇に触れながら何か思い出す風を 装った。 「危ない橋・・って?」 聡美が眉間に皺を寄せ首を傾げる。 「ビデオ・・。 そうビデオ。 カップルのラブシーンを  隠し撮りなんかして・・それを密かにあるルートを使って売って  いたんですよ。 なぜそんなにお金が必要だったか」 「まあ・・」 聡美は目を伏せた。 「あの人、そこまでして」 「・・・・」 「そんなにまでして早く私と結婚したかったのね。お金を作るために、  今もどこかで危ない仕事をしているんだわ、きっと」 「え?」 和彦は、ストーリーの選択を誤ったかな・・と思った。 「どうもありがとう。 彼を待つ励みになるわ」  聡美に納得する答えを提供した事は確かだが・・。 レモンティーのストローを持つ彼女の白い指先。 唇・・。 「聡美さん、那須高原のペンションに行ってみませんか?」 「え? 」 「あそこのペンションのオーナーが彼をギリシャから連れてきたんですよね。  彼の向こうでの生活、なにかご存知かもしれないじゃないですか。」 聡美が思いつかなかった彼の発想になにか希望が湧く。 「感じの良いペンションですよね、レストランの天井が高くて、天窓から朝日が  入って、朝食のときは目がさめるほど明るくて。 美味しいギリシャ料理を  出してくれるし。 聡美さんや実美ちゃんにも気晴らしになるんじゃないかなあ。  よかったら一緒に行きませんか?」 「え? ええ」  聡美は、始めは微笑んでいたが、彼の誘いに表情をこわばらせた 「行きましょう、明日から」 「明日・・?」  「そう、じゃ高円寺の駅前に朝9時、いいですね? さてと、そうと  決まれば・・」  和彦は、勘定書を手に立ち上がった。  「あの、急じゃないですか・・」 聡美は、広げた両手を左右に振った。 「駅に9時に待ってます」 和彦は、そう言って店を出てしまった。 翌朝9時少し前に高円寺の駅に着くと聡美が立っていた。 彼女は、赤ん坊を連れていた。 トレーナーとパンツ姿で、大きな 荷物を肩から提げている。 「おはようございます」 そう言って助手席に座った。                ☆ 和彦は去年の夏に那須へ出かけたが、めずらしくテントの中で2泊した。 トゥリアンダへは、パパンドレウの強制送還のことがあり、立ち寄りづら かったのだ。 ペンションに泊まるのは、約4年ぶりのことだった。 「先生、お久しぶりです。 確かお連れの方の分と部屋はふたつでしたよね?」 主人は、聡美に目をやった。 「美しい方ですね。 あれ、もうお子さんが・・?」 「いえ、違うんです、実は・・」 和彦がそう言いかけたとき、食堂のほうで奥さんの呼ぶ声がした。 「あ、あとでお話をうかがいます、どうぞごゆっくり」  和彦と聡美は、鍵を受け取り2階へ上がった。 和彦はブナ林を見下ろす突き当たりの部屋、聡美はその手前の部屋に 入った。 少しして聡美の部屋をノックすると、ちょうど美実を寝かしつ けたところだった。 「下の食堂にケーキを食べに行かない?」 「ええ」 オーナーが水を持ってやってくる。 「先ほどは、すみませんでした。 先生、こちらは?」 何から説明すれば良いだろう・・和彦が戸惑っていると、 「私、ストラティス・パパンドレウの妻、聡美です、覚えてらっしゃいますか」 聡美が頭を下げた。 オーナーが改めて 「・・そうですよね、入ってらしたとき似てる人だと思ったんです」 とおぼろげな記憶に確信を深めたように言う。 「え? じゃ、さっきのお子さんは・・」 「ええ、彼の子供なんです」 オーナーは、首を傾げて、和彦と聡美を交互にみつめた。 「彼、去年、ギリシャへ強制送還されてしまって」 驚くオーナー。 「そうだったんですか。 ・・・それで。・・その後は?」 「ええ、それが全く連絡がつかない状態で。 彼を知る人をこうして  訪ね歩いてるわけなんです」 和彦が言った。 「お母さん、お母さん」 オーナーはそう言いながら厨房へ入っていく。 暫くすると奥さんが出てきた。  「あらぁ、聡美さん、ご主人から最近連絡がないから心配してたんですよぉ・・・。  聡美さんにも連絡がないなんてねえ・・。赤ちゃん、いるから心配ねー」 同情の視線を彼女に送った。 その後、奥さんは、聡美をキッチンへ案内し、ギリシャ料理の話に花を咲かせた。  オーナーは、ギリシャで滞在した時のアルバムを数冊持ってきて彼女に見せた。  その一冊にストラティスの写っている写真が何枚かある。 その中の一枚に聡美の目が釘付けになった。赤いシャツ姿で腰の周りに黒いエプロン を巻きつけ背筋を伸ばして立っている彼がとても凛々しかった。 「これ一枚、いただいていいですか?」  「ええ、もちろんです」  オーナーは、彼の写真を全部剥がして聡美に差し出した。                 「うーん、彼はね、僕が修行してたアテネのレストランでウェイターをやってた  んだよね。 向こうの人は、日本人と中国人をごっちゃにするでしょう、皆に  キネザ(中国人)って呼ばれて、僕も毎回、イメ ヤポネスカ(日本人)って説明  してたんだよね・・。ストラティスは、ほら、合気道やってたでしょ、だから、日本  って聞いただけで、目をきらきらさせてね。僕が日本に帰るときに一緒に行くって  言われたとき、本当についてくるとは思わなかったなあ」 アテネでの生活を交え、ストラティスとの出会いにまつわるエピソードを暫く語って くれた。 「去年から連絡がなくて、心配でアパートのほうに電話したんだよぉ、でも使われ  なくなったときから、おかしいなって家内とも言ってたんだよねぇ」 と主人も首をかしげてしまった。                 ☆ 「そう、それでね。 僕がそこに座っていると、彼がやってきて  突然にカップを伏せたんです」 「あー、カップの占いでしょ? 彼、誰にでもやるのよ。  でも当たったことがないの・・。 ね、そうでしょう?」 夕食時にそんな話をしていた。 確かあの時、パパンドレウは、和彦が もうすぐ素敵な女性に出会うと言っていた。 その直後聡美に出会ったの は、パパンドレウのほうだった。 「それじゃいつまでも君の食事が進まないね。どれ、僕が」 和彦は、聡美の膝に座っている美実に手をさしのべた。 「え? 本当に?」 和彦は、美実を受け取って腰を下ろした。 赤ん坊を抱くのは初めてだった。うまくこつが掴めなかったが、とにかく 聡美にゆっくり食事させてやろうと思ったのだ。 意外にずっしり重かった。 聡美は、身軽になり、両手を使って食事を続けた。  「んん・・おいしい。 たまには、こんなのもいいかな」 嬉しそうに笑った。 和彦の膝に座っている美実もつられて笑った。  「ねえ、聡美さん、もし・・もしもストラティスがこのまま戻って  こなかったら・・」 「・・え?」 聡美の表情が急に曇った。 和彦は、それを即感じとった。相手の反応に敏感なのは、おしつけがましい 母や育った家庭環境のせいかもしれない。 「もし、彼が帰ってこなかったら、何ですか?」 聡美のほうから訊き返した。 「・・うん。 こんな事、今貴女に言うのは酷だと思うけれども、  もし彼が貴女の元に帰るつもりが無いのなら、僕が・・・ね」 「・・・・」 「僕が聡美さんと美実ちゃんを、代わりに幸せにできないかな、と  ふとそんな風に思ったんだけど」 聡美は、伏し目がちにステーキを切っていたが、 「貴方のような立場の方ならもっとお似合いの女性がみつかると  思います。 ましてや血の繋がらない子供をひきとるなんてこと  言わないでください」 と言って目を上げた。 「いや、僕のほうこそ・・聡美さんのような女性に来てもらえたら、  毎日が・・夢のようだろうなあなんて・・。 美実ちゃんのことだって  必ず・・大事に・・」 最後のほうは、自問しながらだったので、力がこもらなかった。  「それ、私へのプロポーズなんでしょうか?」 「・・・・」 「ありがたいけれども、彼がいなくなってまだ10ヶ月足らずでしょう。  今もし彼からギリシャにきてほしいって言われたら、私は  この子を連れてすぐにでも飛んでいきたいんです。・・だから」 「・・そうでしょうね。 それはもっともだ・・」 和彦が視線を感じて下を見ると、美実が彼を見上げて微笑んでいた。 思わず抱きすくめてしまった。ミルクの臭いがした。  聡美は複雑な気持ちだった。子供には父親が必要だと思った。  でもやはり血の繋がった父親であることが一番望ましい。 美実に必要なのは、ストラティスだった。 その夜、いちど部屋に戻ってから、1階に下りていく聡美。オーナーか奥さん でもあたりにいればもう少し話でも・・と思ったのだ。レストランは明かりが 消えていて誰もいなかったが、キッチンでまだ後片付けをしている夫婦の声が 聞こえてくる。 「えー?ストラティスさんの元奥さん?」 「・・離婚してるとは言ってたけどなぁ」 「でも、まだ籍が抜けてないのぉ?」 「それはさ、お国事情で、いろいろあるんだろう。でも、どこの国でも“焼け  ぼっ杭に火がついて”っていうのもありえる話だしなあ・・」 「・・・聡美さんと実美ちゃんがいるのに・・・ですかぁ?」 その会話は聡美の耳に届いた。何の根拠も無い話ではあるが、今の彼女にはずっし りと重かった。しばらく暗いレストランでうつむいていた立っていた。ふと顔を上 げるとすぐ横に和彦が立っている。暗がりの中キッチンからもれてくる明かりが 聡美の不安げな表情を映し出す。 和彦は、力の入った聡美の肩を振りほどくよう にそっと胸に抱き寄せた。                  ☆ 翌朝、聡美が朝食を食べながら、 「今日、どうしても寄りたい場所があるんだけど、いいかしら?」 と言う。聡美の心の赴く場所・・。オーケーすると彼女は目をキラキラさせて喜んだ。 実美は、奥さんが作ってくれた離乳食メニューを美味しそうにほお張っている。 彼女も満足げに微笑んでいる。明るい朝の陽だまりの中での朝食、和彦も幸福な気分に になった。 9時ごろ、出発する。途中、美しい白樺林をみつけ車を停めて散歩する。 彼女はときどき立ち止まり、小枝を拾いだした。下ばかり見て歩いて、ほんの 数分の間に何本も片手に集めるので、和彦も笑いながら、 「ねえ、それ、どうするの?」と訊いてしまった。 「あ、これ?」 彼女の胸に抱かれた実美が、気になって一本抜き取る。それを 口に運ぼうとするので聡美に取り上げられてしまう。 「こうしてね・・・」ちょうどよい枝を2本直角に合わせて枯れたツルを結わきつける しぐさをする。「これで写真たてをつくったり・・ね?」 「ふーん」 感心そうにながめる和彦。そういえば、彼らのアパートの玄関先にも そんな飾りがあったような気がする。  その後、聡美に案内されて車で向かったのは、ハーブガーデンだった。 降りるなり彼女は足早に入り口に向かって歩いていってしまう。和彦の存在が 目に映らない状況に入っているようだ。なんだか彼女のプライベートな世界に 誘われていくようで和彦も心がはずんだ。 聡美は、ハーブの苗を目をさらのようにしてみつめていた。とりわけラベンダーになる と、3つも4つも一度に手にとって、株のつき具合を吟味するのだが、そんな真剣な 彼女の横顔を劇場の特等席でも陣取るかのように和彦もみつめた。 たまにこちらをむいてにっこり微笑まれると、嬉しくてたまらない。 「ぜんぶ買ってあげるよ」和彦がそういうと、 聡美が目を大きく見開いて、「ぜ」と「ん」と「ぶ」の口真似をして確認してくるので、 和彦もゲラゲラ笑いながら大きくうなずいた。 ハーブガーデンを出る頃には昼を過ぎていて、和彦は、エッセンスや苗や鉢類の入った 大きな袋を両手に下げていた。世の男性たちが妻の買い物に付き合わされてぼおっと立 っているシーンを見かけたことがある。なんて間が抜けてるんだろうかと横目で見てい たものだったが、それも悪くないかもしれない。 山道をさらに走って、通り沿いのログキャビン風のレストランでパスタを食べた。  「わあ、すごいなあ」 美実は、口の回りをミートソースだらけにしてご満悦だ。 口元から大きな塊がおちそうになる前に、思わずおしぼりでふき取る聡美。 いたずらな笑みを浮かべながら、今度はソースのついた指先を和彦に差し出す実美。 「はい、はい」 指のソースをふき取る和彦、自然にそんなことをしている自分に 彼も驚いた。  食事の後、和彦がレジで店員を待っていると、聡美は、販売コーナーでジャムや手作り クッキーを見ている。  「それも貸して」 和彦は、聡美の両手にあふれる商品を受け取って店員に渡す。 「ありがとう」 聡美の喜ぶ顔が見られるなら店ごと買っても惜しくはなかった。  それから牧場へ足を延ばし、しぼり立てのミルクで作ったソフトクリームを食べて、 チーズも試食した。 和彦は、美実を抱いてポニーに乗った。手綱を持つ手が様になっている。 大きな腕に抱きとめられた実美の姿をうっとり見つめる聡美。 柵の外で目の前を通る二人に手を振った。 それからモルモットに触れたりウサギを抱いたりしているうちに、日は傾いていった。 夕日をみつめながら、和彦が、 「子供の頃、一度だけ母と夕日を見たことがあるなあ」と言う。 その視線はどこか遠くに向けられていて、少年のように瞳が澄んでいた。 彼は、足元の草を一本引き抜いた。 「いじめっ子に蹴飛ばされて土手で泣いているとめずらしくお袋が迎えに  きて、“揚げ物屋さんでコロッケでも買って帰りましょう”って手を差し  出すんだ。母と並んで見た夕日、忘れられないなあ」 彼は草をちぎって投げた。 “一度だけ母に手を引かれ・・”  彼の淋しい幼少期を垣間見るようで聡美の胸が痛くなった。                ☆ その晩、夕食を済ませ2階へ上がると、和彦がドアの前で 「聡美さん、楽しい旅をどうもありがとう」と言う。 「私のほうこそ羽伸ばしさせてもらいました」 「疲れたでしょう。ゆっくり休んだほうがいいよ。 美実ちゃんも・・」 そう言って、手を振りながら美実に微笑みかけた。 聡美は、自分の部屋に帰り、食堂で調合してもらったミルクを美実に 飲ませていた。 疲れたのか美実はすぐに寝てしまった。 その後、シャワーを浴び、備え付けのドライヤーで髪を乾かしながら、 2日間の出来事を振り返っていた。 ・・和彦が気になる。 ストラティスを想う気持ちは変わらない。安否も常に気になっている。  早く美実と3人で暮らせる日をと強く願っていた。  なのにどうして今和彦の存在が気になるのだろうか。 実美のためにも母親としてもっと理性を持たなくては・・・。 けれども・・・今。 聡美は、和彦の部屋のドアをノックした。 「聡美さん」 「あの」 聡美は咳払いした。 「すこしお邪魔していい?」 彼の部屋に入る聡美。 組んだ両手を広げ、胸の辺りに押し当てる。 伏目がちに何度もまばたきして、首をかしげては言葉を探る。 「・・わたし」 「・・どうかしたの?」 やがて聡美が和彦に視点を合わせる。 和彦は、その目の中に柔らかいものを感じて思わず歩み寄った。 聡美の襟元に香るラベンダー。 和彦は、陶酔した。 「私は、ストラティスを待っているの。でも、今、貴方が気になるのは  どうしてかしら・・たぶん一時的なも・・」 和彦は聡美の唇をふさいだ。 お互いに求め合うように抱き合いキスをした。 長い年月の間に和彦の脳裏に焼きついた映像が順を追って駆けめぐる。  和彦は、全ての思いをこめて、聡美を愛撫した。 二人はゆっくりと時間をかけて愛し合った。 夢でも幻でもない、本当に求めていた相手を抱きしめている。 聡美の体が小刻みに震え体が波を打つのを見届けてから、 和彦は、高まる思いの全てを吐き出すように、果てていった。    (つづく)



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