A産院選び

妊娠が判明したわたしは、早速インターネットで妊娠情報を調べ始めた。
すると、予定日を正確に出すため、なるべく早く病院に行ったほうがいい、と書いてあった。 これは、胎芽や胎児の初期の頃は、みんな大きさが同じなので、妊娠してから何日目、という 特定が正確にできる(それによって予定日も正確に計算できる)からである。もっと成長すると、 胎児によって大きさに差がでてくるらしい。

わたしは、「早くっ、早く病院行ったほうがいいんだって。」と意気込み、どこの病院に行こうか 悩み始めた。今まで、妊娠本のようなものは、まだ関係ないと思っていたので読んだことはない。 ただ、さくらももこさんの「そういうふうにできている(新潮文庫)」という妊娠・出産体験を綴った エッセイ集は、 純粋に面白そうだから読んだことがあった。おぼろげな記憶をたどると、そういえば彼女も産院選びに ついてはかなり紆余曲折があったようなことが書いてあったなあ、と思い出した。産院や医師によって、 かなり対応が違うようだ。それなら、やっぱりいいという評判の病院がいい。8年住んでいるうちに、 マレーシアが「外国」であるという感覚ではなくなってきたが、それでも外国であることは事実で、 日本人のわたしには想像もできないことが当然のように行われていたりして、「そんなこと聞いてないよーっ」 などと叫ぶ事態には直面したくない。日本で産もうが、マレーシアで産もうが、とにかく「信頼できる お医者さんのもとで安心して生みたい」という気持ちは万人に共通するものである。

幸い、30も過ぎていれば、周りの友達の中には、出産を済ませている人が何人かいる。わたしは 自分の友達、ダンナはダンナの友達に連絡を取り、それぞれ独自に調査を開始した。
すると、わたしは、「パンタイのC先生がいいらしい」 という情報をつかんだ。ただ、実際彼に かかった人に聞いたわけではなく、また聞きだったので、確かな情報は得られなかった。ここまでか・・・ と思ったとき、ちょうどわたしの妊娠が判明する1〜2ヶ月前に赤ちゃんが生まれたノルウェイ人の 友人夫婦が、C先生にかかっていた、と教えてくれた。そして、旦那さんは、彼のことを 「Highly recomended(チョ〜おすすめ♥)」だという力強い言葉を くれたのだ。
この言葉は、わたしの中に、キラーンと一筋の光を投げかけた。ノルウェイっていったら、 「ゆりかごから墓場まで」の スウェーデンの隣国だし、施設とかいろいろすごく整ってそうだよなあ・・・。その人たちがいいと言う だから、すごくいいんだろう!と、隣国といえども、全く関係ないスウェーデンから始まって、 徹頭徹尾わたしの勝手な推論から導き出された論理で、 「パンタイのC先生はすごくいいいいよ〜♥」ということが頭に 刻み込まれ、もうそれ以外は考えられなくなった。それに、場所からいっても、一番近いのはパンタイ 病院かな、と初めから思っていたし、ちょうどよかった。
まあ、後で冷静になって考えてみると、別にノルウェイ人だろうが、日本人だろうが、マレーシア人だろう が、「Highly recomended」ほどの評価をするなら、それは「信頼できる先生のもとで、安心して産めた。 いいお産だった。」 ということであり、わたしと夫が聞いた中で、そこまで強く薦められたのは、C先生だけであったので、 彼を選んで正解だったのだろう。できれば女医さんがいいな、とは思っていたが、評判のいい 女医さんの情報を得ることができず、やはり結局は性別なんかよりも、医師の人柄そのものが大事だろう、 と思い、C先生に予約をとった。

C先生にかかると決めた時点では知らなかったことだが、後で知りよかったな、と思ったことが いくつもあった。まず、わたしが自分のお産・育児に望む「自然分娩・フリースタイル出産・ 母乳育児」ということが、C先生の基本方針であることだ(でももちろんそれ以外の希望を出せば、 そうしてくれるらしいが)。方針が同じであるということは大事なことである。
あと、ものすごく口数の多いお医者さんではないけれど、質問すれば丁寧に答えてくれる。それに、 自分の利益や病院の都合よりも、患者さんの立場に立って考えてくれることが 一番うれしかった。7ヶ月目にバース・プランについて話し合った時、「会陰切開はしないほうがいい」 と言われたのだが、そのことについて話し合ううちに、本当に患者のためを思って言ってくれているのだ、 ということが分かり、わたしの彼への信頼は絶対的なものとなった。
それから、これも後で知ったのだが、パンタイ病院は、ユニセフにより「Baby Friendly Hospital (赤ちゃんに やさしい病院)」と認定されている。こういう病院は、かなり自分の希望をとりいれたお産を させてもらえたり、母乳指導に力を入れている、ということもよかった。

さて、意気込んで行った初診の日。
C先生は、思った通り、信頼できる感じのお医者さんだな、と思った。わたしはマレーシア人の 英語が苦手で(特にインド人の話す英語。すんごく流暢にペラペラしゃべるのに、一言も理解できなかった りする)、もし先生の英語が分かりにくかったらどうしよう、と密かに危惧していたのだが、明瞭で 分かりやすくしゃべってくれる人で、これなら別に夫に頼らなくても、自分でちゃんと会話ができる、 と安心した。

尿検査ですでに陽性が出ていたので、問診の後、スキャン(超音波検査)をすることになった。妊娠初期は、 お腹に器具をあてて検査するのではなく、棒のようなもの(経膣プローブとかいうらしい)を膣挿入する。 わたしはそんなものを突っ込まれるということをはっきりとは 知らなかったが、よしもとばななさんの「よしもとばななドットコム見参!(新潮文庫)」のシリーズに、 「見るとショックを受ける旦那様もいるんですが、お宅は大丈夫ですか」と聞かれたことが書いてあった のを思い出し、ははあ、これのことかあ、と思った。ちなみに彼女は、「これがショックなら、どうやって 子供を作ったのだ!」と書いていたが、わたしは、「それを見ることがショックなんじゃなくて、 他の男に突っ込まれることがショックなんじゃ・・・」と思った。後で夫に聞いたところ、やはり 事前に知らなかったせいもあって、「ショックだった」と言った。「次もやるなら、俺がやる!」とも (笑)。(もちろん言っただけで、次の時も彼はおとなしくしていたけれど。)
それで結局、「早く病院行こう」と焦ったかいもなく、まだ小さくて予定日は分からないと言われた (その次の検診で分かったのだが、逆算すると、初診は6週目に受けていたことになる)。

とまあ、とりあえずお産までお世話になる先生が決まって一安心。この時は分からなかったが、 時々おちゃめな面も見せる先生であった。

Oct 15, 2004

(後日附記:後に聞いたところによると、パンタイのC先生の方針は、「妊婦さんが望むお産を させてあげること」だそうです。)


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