C旦那さんにできること
わたしは妊娠前に、さくらももこ著「そういうふうにできている」を読んでいたので、妊娠すると
ホルモンによって、つわり(これは別の説もあるらしいが)や感情の変化、体調の変化などが
起こることを知っていた。そこには、ホルモンのせいではどうしようもないので、ひたすらホルモンの
成すがままにさせておくしかない、ということも書かれていた。
いろいろなことがおもしろおかしく書かれているので、「へええー大変だなあ」
と思いつつ、笑って読んでいた。
そういう予備知識があったので、自分にそういうことが起こっても、割と冷静でいられた。
つわりはとにかく長かったので、後半は落ち込みがちだったが、それ以外は冷静に受け止めるだけでなく、
ちゃんと他の妊婦たちと同じような変化が自分にも訪れたことで、「あ、ホルモンだよ」と思って
楽しんでさえいた。
悲しいニュースを聞いて涙がとめどなく流れる。悲しいと思う反面、あははー、ホントだよ、ホルモンが
いたずらしてるよ、とも思っていたのだ。思うに、何も知らなかったら、いきなり襲ってきた変化に
戸惑い、不安になっていたかもしれない。予備知識があるだけで、人間は随分冷静になれるものだ。
*
ところで、わたしと夫はあまりケンカをしない。昔、共働きで、お互いに忙しくて余裕がなかった時はたまに
していたが、わたしが専業主婦になってからは、ほとんどしなくなった。頭に来たとしても、
ドカー―ンと爆発することなど全くない。妊娠してからも頭に来ることが
あまりなかったので、のんびりと安気に暮らしていた。
ところが、妊娠してからのある日、わたしが犬に対してカッカと怒った時、夫はわたしのことを
「最近怒りっぽい」と言った。別に責める
わけでもなく、笑いながらポロッと洩らしたのだが、
わたしはムッとして、「別に怒りっぽくなんてないっ」と言った。
そう、確かに怒りっぽくなっていたのだ。
夫はよく、仕事の後に打ち合わせをしてきたりするのだが、軽く飲みながら、ということが多いらしい。
時間にすると7時とか8時とかなので、世間的には一応食事の時間である。だから、打ち合わせの相手が
夕飯を食べたがることもよくあるという。しかし、夫はうちで食べるのが好きなので、水やお茶を
飲むだけとか、たまには軽くつまむものやスープを注文するだけにしている(こういう場合でも、家に帰って
から夕飯を食べる)。
その日、2ヶ月目のわたしはつわりの真っ最中で、非常に気分が悪かった。しかし、家で食べるのを楽しみに
帰ってくる(つわり中だから大したものを出せないのだが、家で食べること自体が楽しいらしい)
夫のために、夕飯の支度をした。確か、味噌汁と簡単なおかずを作って、後は冷凍食品か残り物とか
、そんなメニューだったと思う。全然大したものではない。見て食欲をそそるようなものでなかった
ことは認めよう。しかし、つわり中のわたしにとって、
その作業は決して楽なものではなかったのである。
更に、つわり中というのは、お腹がすくと気持ち悪くなる。わたしは、お腹がすいた時に少しつまんだり
はしたが、夫の帰りを待って食べるのが習慣だし、一緒に食べたいので、ひたすら待っていた。
すると、9時過ぎに心なしか赤い顔の夫が帰ってきた。打ち合わせで、ちょっと飲んできたようだ。
「今日は、ちょっとスープだけ頼んだんだけど、他の人が注文したものを食べきれないっていうから、
くれたんだー。だからあんまりお腹すいてないんだけど、今日の夕飯なにー?」
そう言ってわたしが用意したものをのぞきこんだ夫は、
「やっぱり、お腹すいてないし、いいや。」
と言った。
その瞬間、わたしの頭はドカー―ンと爆発した。
「なんでわたしがつらいの我慢して用意したのに、いらないのよっ。大体、食べないなら電話してくれれば
いいじゃない。気持ち悪いの我慢して待ってたのにっ。」
というような意味のことをめちゃくちゃに怒った口調でまくしたてた。悲しかった。泣きたかった。
わたしがつらい思いをしていることを知っているのに、なぜこの人はこんなにひどい仕打ちをするのか。
普段のわたしはこんなことぐらいでは絶対に怒らない。つきあいで断りきれなくて食べることも
あるだろうし、たった10秒の電話がかけられない時もある。食べるつもりで帰ってきたのに、時間が
経ったら食欲がなくなる時もある。それくらいの理解はあるつもりだ。実際、つわりがすっかりなくなった
5ヶ月目に、帰ってくるなり「ごめん。ちょっと飲んだり食べたりしてきて、あんまりお腹すいてない
んだけど・・・。」と
おそるおそる言った夫に、「あっそうなんだ、じゃあ食べられるだけ食べて。」と至極冷静に返事をした。
その時は、別に腹も立たなかった。
そんなわたしがものすごくものすごく怒ったので、びっくりしたのか、夫は、
「ごめんごめん。味噌汁もらうよ・・・。」
と言った。
*
ある男性が、「男っていうのは、女性がつわりでつらそうにしてても何にもしてやれなくて・・・」と
言ったことがあるが、決してそんなことはないと思う。旦那さんができることはたくさんある。
普段奥さんが
やっている仕事を手伝ってあげたり、重いものを持ってあげたりするは当然として、ぜひ、
「つわり中の女性はいつも正しい」ということを念頭に置いてもらいたい。とにかく理不尽なことを
言っても、妊婦は正しい。間違ってても正しいのである。
つわりというのは、傍目で見ている以上につらい。体もつらいし、体調が特に悪くなくても、精神的に
きつい人もいる。そうすると、普段通りの生活ができなくなるので、そのことでまた落ち込んだりする。
一人の人間を体の中でつくるというのは、かなりの重労働なのだ。
だから、ちょっと怒りっぽくなっていたり、意地悪になっている奥さんのこともそのまま受け止めてあげて、
いつも通りの家事が出来なくても、「いいんだよ、今の君は、お腹の中の赤ちゃんを無事育てるために、
つらかったらゆっくり休むことが仕事だよ。」と言ってあげる。それだけで、妊婦の気持ちはものすごく
楽になるのである。
わたしのダンナはこういうことを言ってくれたし、よく手伝ったり、ねぎらいの声をかけてくれたりしたので、
わたしは比較的穏やかな気持ちで過ごすことができた。だから、爆発したのは、この1回だけである。
この時、つわりが最高潮だったので、やはり精神的に落ち込んだり、イライラしがちだったのだろう。
最近の男性は、こういう優しい人が多いと思うけれど、やっぱり「妊婦だからって甘えるな」という意味の
ことを言う人もいるんだろうか。そういうダンナさんだったら、わたしなんかキックした上で、
「あんたが蒔いた種だろーが」
って言っちゃうけどね。
Oct 15, 2004
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