Fマイナートラブルズ

5ヶ月に入る頃にやっとつわりは終わったが、その後もずっと胸焼けが続いていた。 おいしいものを食べれば味覚的には おいしいと思うのだが、体の底からおいしーーーー!と思う感覚がまったくない。少しでも食べ過ぎると、 胃が痛くなったり、気持ち悪くなったりする。一般的に5〜7ヶ月は「安定期」と呼ばれ、 体調が絶好調になるはずではなかったか。しかし、わたしは、安定期でも、 体調は絶好調というわけにはいかなかった。

妊娠経過は極めて順調だった。足がむくむ、肌が荒れる、などの外から見て分かるトラブルも なかったし、妊婦のほとんどがなるという便秘にもならなかった。人から見れば、まずまず健康な 妊婦、といったところだったろう。

しかし、7ヶ月の終わりごろから、足の痙攣、手の痺れ、頻尿、くしゃみをした時の失禁などの マイナートラブルが出てきた。しかし、妊婦なら多かれ少なかれこういうトラブルがあるもの。 幸い、これらのトラブルは、一日中続くというわけではないのだから、その時に対処すればそれで済む。 それに、産んでしまえば普通なくなってしまう。足の痙攣については、足首を回す運動などを したり、静脈がはっきり見える時は、足がむくむ前兆だと思って足を高くしたりするなど、予防は したが、後はしょうがないことだと思い、たいして気にしなかった。

しかし、ひとつだけ、かなり気になる症状があった。耳が変なのである。ものすごく説明しにくい 症状なのだが、頑張って説明すると、「時々、鼓膜が開いたような感じになる。息をするたびに、耳の中を 風がふくような音が聞こえる。しゃべると、自分の声が耳の中で響いてものすごくしゃべりにくい。」 というようなところだろうか。実は、この症状は妊娠前にも、ごくたまにあった。でも放っておけば しばらくして治るし、一年に数回しか起こらないので、たいして気にしていなかった。
それが、6ヶ月頃からかなり頻繁に起こるようになり、7ヶ月には毎日必ずなる、というところまでいって いた。
しばらく横になれば治るし、実害はないものの、これが起きるとかなり憂鬱になった。そのために 人と会うのも億劫になった。
そして、もうひとつ心配だったのは、これは出産後も治らないのではないか、ということだった。
妊娠中に出てくる症状には、「妊娠をきっかけに発症するもの」と「妊娠をきっかけに悪化するもの」 がある。前者は産んでしまえば症状はきれいさっぱり消えるが、後者は悪化したまま残るのであろう、 と思った。実際、初期に経験した右尻の激痛のことを考えてみると、あれはもともとあった歪みが 妊娠を機に悪化したわけで、産んだからといって治るものだとは思えなかった。
とすると、この耳の不快な症状も、前からごくたまにあったことを考えると、妊娠をきっかけに 悪化した、と言えるものだろう。もし本当に鼓膜に穴があいてたらどうしよう。このまま放っておいて もっと悪くなったらどうしよう。そう考えると、ますますくら〜〜い気持ちになっていった。

わたしが医者に診てもらうのをためらっていたのは、もともと医者に行くのは勇気が要ること、 日本語でもうまく説明できないような症状を英語で説明しなければいけないので面倒なこと、 変な医者にあたったらいやだな〜と思ったこと、が主な 理由であった。
しかし、どんどん悪くなっていったので、C先生やSさんのことを考えると、 今のわたしは医者運がいいはずだ!と言い聞かせ、 8ヶ月目のある日、予約をとった。医者に診てもらおうと決心してから約2週間後のことであった。 いつも診てもらっているクリニックのお医者さんのお兄さんが耳鼻科医だという情報を つかんでいたので、その人に診てもらうことにした。

そして、ついにその日。
わたしの勘は当たり、じっくりと話を聞いてくれて、丁寧に説明してくれるいいお医者さんであった。 わたしが妊娠していると告げると、合点がいった、というようにうなずいた。それから、 耳の中をみたり、鼻から管を入れて耳の中をみた後に、説明してくれた。
それによると、鼓膜よりも奥の部分は、口を大きく開けたりあくびをしたりするたびに開くのだが、 すぐに縮むのだそうだ。しかし、わたしの場合、もともとそこが開きやすいという傾向があったうえに、 妊娠中に分泌されるホルモンによって、体のいろいろな部分の結合が緩んだり開きやすくなっているため、 そういう症状が出るのだ、ということだった。一番心配なのは腫瘍ができていることだが、 耳の中も鼓膜もきれいで何も出来ていなかったので心配することはないし、出産後にはこの不快な症状も なくなるだろう、と言われた。もし、 万が一出産後に続いたとしても、薬でそこを引き締めることができる、でも今は不快なのは分かるが 胎児への影響が心配なので薬での治療は避けたほうがいい、ということだった。

わたしは一気に気が楽になった。不快な症状がなくなりはしなかったが、心配し続ける必要がなくなり、 精神的に楽になった。
だから、もし何か心配事があったらすぐに医者に診てもらうことをおすすめする。一人で悶々と悩むより、 すぐに治療はできなくても、自分の中で何が起こっているのか分かった方が絶対に精神衛生上いい。

ということで、それ以後もこの症状は続いたが、それほど悩んだりイライラすることはなくなった。 それに、いい方向に考えれば、体がちゃんとお産に向けて準備をすすめているというふうにとる こともできる。
そして、この症状は なぜか、9ヶ月から臨月に入る頃には、完全にはなくならなかったが、かなり良くなった。

*


しかし、医者の説明を聞いて、なるほど、だからか、と納得したことが二つあった。
まず、その頃からものすごーーくよだれが垂れてしょうがない、ということがあった。 それまでだって、もちろんちょっと居眠りをしてよだれが垂れるということはあったが、 妊娠後期になってからは、体を横たえている時(横たえているだけで眠ってはいない)、しっかり口は 閉じている(少なくともわたしはそのつもりである)のに、どうしてもよだれが垂れてしまうのである。 まあ例によって、妊娠中はホルモンのせいでいろいろなことが起こるからと思って、大して気にしていなかった が、お医者さんの説明を聞き、
「口元が緩んでるのね。」
と思った。
それから、わたしは普段一人で家にいて外出する予定がなくても一応化粧をするのだが、妊娠してからは しなくなってしまった。そのことに関しても、
「ははあ、気も緩んでるのね。」
と思ったのだ。

Oct 15, 2004

「マレーシアで妊娠・出産」トップに戻る
NEXT