キキモカきりんはテキーラがのめない
Dマライアの声が響いた夜
2004年2月20日、マライアがKLにやってくる。
たった1時間半のコンサートを見るのに、家を出てから帰るまで、6時間半もかかると初めから
分かっていた。おまけに、妊娠中のわたしは悪阻の真っ最中で、体が耐えられるか分からなかった。
それでも、行かないわけにはいかなかった。
実をいうと、最近のわたしは彼女の「大ファン」とは言えないと思う。以前ほど、彼女の歌も聴かない。
一番の理由は、最近の彼女の音楽が(わたしの嫌いな)R&Bやヒップホップに傾いてきたことで、
あまり楽しめなくなってしまったのだ(きっと初期から彼女を聴いているファンは、同意してくれると
思う)。
でも、わたしはなんと言っても彼女の声が好きだ。彼女の声を聴いているとすごく気持ちがいい。
彼女は、声を自由自在に操れる。
それから、彼女はとてもとても美しいと思う。顔の造作も美しいけれど、体の細胞ひとつひとつが、
最大限の水分を含んでいるようなみずみずしさが、そう思わせるのだろう。それに、たたずまいが
すごく綺麗。もう立っているだけで、輝くようである。
そして、彼女は強い人だと思う。ちょっと前はいろんなことがあったみたいだけど、例えば
「Can't Take That Away」の歌詞とかを読めば、人が何と言おうと、自分を信じていることが分かる。
今はつらくても、周りに惑わされないで自分の信じていることをコツコツと続ければ、やがて必ず
雨が止んで虹が出る、と信じている。そう信じているからこそ、あんなに綺麗なのだ。
久しぶりに彼女の曲を聴いてみた。昔、つらい時に、彼女の歌を聴いて元気づけられたことを思い出した。
今はもうあまり連絡をとらないけれど、昔ずっと一緒にいて味方になってくれた友達みたい。そう思った。
その勇気と強さが、自分を元気づけてくれた、そういう友達がマレーシアに来てくれたら、放っておける?
いや、飛んで会いに行くよね。
わたしは悪阻があったって行こう、と決めた。
コンサート当日。
なかなか開演せず、ずっと硬い椅子に座っていたわたしは、だんだん具合が悪くなってきた。寝ていても
具合が悪いのだ。体力の限界だ、と思ったとき、1時間半遅れてマライアは現れた。
スタジアムのトラックを、BMWのコンバーティブルに乗って、パレードのように進んでいく。わたしは
ステージから遠いスタンド席だったので、彼女を近くで見られるとは思っていなかったが、自分の
10メートル先にマライアがいる!手を振っている!思わず大興奮。
綺麗だった。女神のようだった。
彼女がステージに上がって「Heartbreaker」を歌いだしても、興奮のため手が震え、涙目になっていた
わたしは、オペラグラスを持つ手が震え、よく見えなかった。(妊娠中だったので、感情の起伏が
激しかった、ということもあるけれど。)その時には、具合が悪かったことなんて、すっかり忘れていた。
昔のヒット曲を中心にコンサートは90分ほど続いた。彼女は有名人だから、いろんな人がいろんなことを
言うし、このコンサートについても良かっただの良くなかっただの、いろんな意見が書かれたりする。
でも、わたしは、マライアはとてもいい表情で歌っていたと思う。
最後は「Hero」だった。
――希望が全くなくなってしまったと思ったときは
自分の心の中をしっかり見つめて、強くなって
そうしたら、最後には真実が見えるはず
ヒーローは自分の中にいるのだと
マライアの歌声がキラキラした金の粉になって、自分に降りそそいでくるような気がした。本当に
そんな感じがしたのだ。かつてわたしに勇気を与えてくれた歌。ひとつひとつの言葉が、また新たな
意味を持ってわたしにしみこんでいった。
Apr 14, 2004
※別のアプローチからこの日のことを書いた日記→2004年2月20日の日記「マライア様!」
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