前頁 006 - 広がるパームオイル農園 にも
書かせていただいたように、
今や、私たちの生活に欠かす事が出来ないアブラヤシから採れる植物油のパームオイル。
数ある植物油の中でも、生産量も年間およそ1億数千万トンとトップのパームオイル。
それらの9割にも上るパームオイルが、マレーシアとインドネシアで生産されているわけですが、
インドネシア、マレーシア共にパームオイル農園の拡大による深刻な森林減少が見られています。
今、私が暮らしているサバ州でも、
州面積(北海道と同じくらいです。)の約18%がパームオイル農園となりました。
25年前と比べると、20倍も拡大した事になります。
皆さんも、「ボルネオ島」「カリマンタン島」と聞くと、
ジャングルに覆われた島を思い浮かべるかと思いますが・・・、
既にその殆どが失われてしまっているのが現状です。
下記は1950年代〜現代のボルネオ島の森林減少を現したものです。
上記の地図では、2005年以降に緑が残されているのは、標高の高い山岳地帯のみで、
いわゆるボルネオ島の熱帯雨林の森(低地熱帯林)が広がっている地域は、既に
ほとんど森が残されていません。
サバ州においては、1970年代の森林残存率は86%でしたが、2005年の時点で60%まで減少し、
現在は50%を下回っていると見られています。
(ただし原生林は70〜80年代の大規模な
森林伐採により5〜6%しか残されていません。)
ボルネオ島の広大な熱帯雨林の森は、恐竜が生きていた白亜時代に誕生したと言われています。
それから1億数千年もの長い長い年月の間、多種多様な生き物達を育んできました。
哺乳類達も、鳥たちも、昆虫達も、爬虫類&両生類たちも、植物たちも、菌類も、複雑に共生しあいながら、
独自に進化し続けてきた森です。
そして、以前のボルネオの熱帯雨林の森は、毎日数億人分もの酸素を供給していたそうです。
また1haにつき、およそ400トンもの炭素を固定しています。その森が、違法伐採(木材のための)や、
パームオイル・プランテーション転換のために、どんどん失われ続けているのです。
特にインドネシアでの農地転換のための泥炭地での森林伐採や火入れが、それまで泥炭地に固定されていた
大量の二酸化炭素を放出に繋がり、現在インドネシアは世界台三位のCO2排出国となってしまったほど。
インドネシアの泥炭地の総面積は約2千250万haなのだそうですが、この泥炭地から排出される
二酸化炭素は、年間20億トンにものぼるそうです。
それに毎年シンガポールやマレーシアで起こっている深刻なヘイズ(煙害)問題も、原因はインドネシアでの
火災によるもので、火災は焼き畑もありますが、パームオイル農園転換のための火入れが原因とも
言われてます。何より、東南アジアでの大規模な熱帯雨林の森の消失は、世界規模での気候変動にも
大きな影響を及ぼすと言われています。
これだけの深刻な問題を抱えながらも、どんどん森を破壊して生産されるパームオイル。
日本ではまだまだパームオイルを使った製品が「環境にやさしい」というような表現で宣伝されているとの事。
おかしくないですか???
温暖化対策、CO2削減、エコ。
そう言うのなら、先ずは1番大切な森を保全しなければならないのではないでしょうか。
1番重要な役割を果たしている森を破壊して作られているパームオイルを「環境にやさしい」という風に
宣伝するのは、疑問です。また、私たち消費者もその製品の原料がどんなもので、どのように作られているのか、今後は
きちんと知った上で購入する必要性がこれからの時代求められているのだと思います。
(偽装問題や農薬問題など安心出来ない時代になりましたし…)
世界中で需要が高まり続けているパームオイル。
その上、代替燃料としてバイオディーゼル原料としても注目を浴び、
さらなる生産量の引き上げが予測されています。
世界で3番目に大きな面積を持つボルネオ島。
そのボルネオ島の森が、あと10年余りでその殆どが消失しようとしています。
遠く離れた土地ですが、ボルネオ島の森林減少に、昔から深く深く関わりのある私たち日本人。
ボルネオの森と私たちの日々の消費生活は密接につながっています。
一度、私たち自身の生活を見直してみませんか?
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