藤崎版封神演義
普賢の犠牲
「元始天尊様」
その声に元始天尊が振り返ると、
ひざまずく道士が二人。
「おぽ、普賢に太公望ではないか。
どうしたのだ改まって」
「はっ、朝餉でございます」
太公望が朝御飯の乗ったお膳を差し出す。
「おお、どういう風の吹き回しか知らんが、
殊勝な事じゃ。では早速戴く事にしよう」
一口、二口…
元始の箸が進む度に、
太公望と普賢の顔に笑みが広がる。
「ん?どうしたのじゃ楽しそうな顔…
を…して…」
急に元始の意識が遠のく。
視点が暗転して…
グー
床に倒れ伏して寝てしまった。
「成功じゃー!!」
両腕を上げて飛び跳ねて成功を喜ぶ太公望。
普賢は、全然変らないいつもの微笑みで手だけ上げて「わーい」とやっている。
太公望に合わせている積もりかもしれないが、凄まじくズレている。
「さぁ、行くぞ普賢」
「うん、望ちゃん」
一足先に黄巾力士に乗り込んだ太公望が、
普賢に手を貸す。
ヒュー…
飛んでいく黄巾力士。
グー…
眠っている元始。
☆ ★ ☆
さらさらと音を立てて、
青い水が流れる。
釣りをしながら考え事をしている太公望。
普賢は穏やかな笑みを浮かべながらそんな太公望を見つめている。
(望ちゃんは…タマにとっても鋭い目を見せる…)
普賢は思いをはせた。
☆ ★ ☆
妲己一味の悪事はよほど凄まじいらしく、
人界から遠く離れた崑崙山脈まで伝わってくることがある。
崑崙の仙道達は、しかし、ほとんどが無関心だ。
その中で太公望が見せる反応はひときわ目をひく物であった。
ただし、いつも太公望を見ている物でなければ気付かないほどの小さな…
そして詳しい話を聞きたがるのだ。
そんなことが有った後はいつも激烈に修行に挑むか、
何かをぼーっと考えている。
実際彼はその才能を凄まじい勢いで伸ばしている。
仙人になるのも遠くはないと噂されているほどだ。
だが普段の太公望は苛烈ではない。
もっとこう…空に浮かぶ雲のようなとらえどころのない、
ほんわかした性格をしている。
そして…それこそが彼なのだろう。
冗談なのか本気なのか分からない態度、
いつも前向きで希望を捨てることの無い性格。
太公望は激情を体内に押し殺している。
子供のころに植え付けられた無力感…絶望…そしてやりどころの無い痛み、怒り。
それは太公望の心の雲海に沈められた蛟竜だ。
いつか…きっとそれに押されて戦いに身を投じる気がする。
その竜が暴れ出す時…
その時に助けてあげたい。
☆ ★ ☆
「その時は僕もキミの横にいるよ。
それぐらいの力はあるから」
太公望は普賢の方を振り向くと、
押し黙る。
そのまま、また釣り糸に視線を戻してしまった。
にわかに雲が日光を遮って、
辺りが薄暗くなる。
太陽の温もりが掻き消え、
軽く吹き付ける風さえ肌寒くなった。
普賢は背中から太公望に抱き着いた。
「ん?…」
太公望が振り向く。
「寒いね…」
「ああ…もう秋だからのう…」
☆ ★ ☆
(もっと馬鹿だったら良かったのにな…
そうしたら望ちゃんが何を考えているか…
わかんないまま過ごせたのに)
でも今はこうなっている。
そんな事はわかっていた。
太公望の心の深奥の深い…深い闇。
辛い体験。
それに魅入られた自分は…
…なんとかしたくて…
☆ ★ ☆
「望ちゃん…」
「ん?」
太公望が振り向いた。
普賢は太公望の背中に抱き着いたまま、
その唇に唇を合わせる。
ビクッ…太公望の体が震える。
しかしそれはすぐに収まり、
太公望はそのまま普賢を優しく受け止めた。
☆ ★ ☆
岩の上に身体を横たえる普賢。
太公望はその上に覆い被さって、
普賢の露出した鎖骨を撫でた。
太公望の繊細な指が絹のような肌の上を滑る。
ピクッ…
少しだけ普賢の体が反応した。
太公望はゆっくりと手を下へ動かしていく。
控えめな膨らみの上から、
太公望は指でその部分に触れた。
揉むようにして感触を楽しむ。
「望ちゃん…」
普賢が手を太公望の背中に伸ばし、
抱き着く。
そしてまたキスをした。
☆ ★ ☆
普賢の服を脱がせると、
太公望は足の間に手をやる。
しっとりとささやかな濡れ方をしているその部分を、
ゆっくりと刺激する太公望。
指でふくらんだ部分を撫で、
亀裂に近づけてはずらす。
しばらくそれを続けると、
普賢の目がとろんとしてきた。
それを確認した太公望は指を普賢の秘所に差し入れる。
愛液を指につけながら、奥まで指を沈めた。
「…あぁっ…」
思わず声を漏らしてしまい、
赤面する普賢。
「感じたか…?」
太公望の問いに、
普賢は顔をかすかに動かして肯いた。
もう十二分に濡れている。
太公望は普賢のその部分に自分の物をゆっくりと沈めた。
☆ ★ ☆
「はぁっ…はぁっ…」
「あっ…ああっ…」
二人の声がこだまする。
普賢は目を閉じて太公望の侵入を受け止めている。
太公望も普賢の体内の感触に顔を紅潮させ、
息を荒くさせている。
太公望がそれまで控えめだった動きを早めて、
更に快感を求める。
その動きはそのまま普賢にも悦びを与えた。
「…っ…ああっ…んっ…」
ちゅく…ちゅくと太公望が普賢に出入りする音がする。
そしてそのリズムが一層早まった時、
太公望は普賢の体内で弾けた。
☆ ★ ☆
「あ…太陽だ…」
二人が事の余韻に浸っている時、
太陽が雲間からまた顔を覗かせた。
暖かい光が二人を包む。
しかしその太陽も帰り支度をしているようで、
真っ赤になっていた。
「戻らないとね…」
「うむ…」
☆ ★ ☆
普賢はいつも自分を犠牲にする…
その内…とり返しのつかないことになる…絶対に…
だからこやつは死んではならん…
死ぬべきではないのだ
あとがき
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Page written by Eque Somatoya
Novels written by Souma Toriya