聴き起こし原稿 『宿屋仇』
先ず最初に
私は特に落語が好きというワケではなく、落語家『桂 枝雀』が好きなのである。
昔から脈々と受け継がれて来た話芸というものには
ともすれば『古臭さ』ばかりが目立ってしまい、何時しか心から笑う事が出来なくなるものだ。
それは世間の時流を鑑みない演者の所為でもあり、たった百年程の昔話にも
興味を持てなくなってしまった受け手の所為でもあるだろう。
最近、と言ってももう20年程経っているが、こうした落語を取り巻く状況を
変えようと始まったムーブメントが『創作落語』だ。
題材に現代の物を起用し、展開も下げ(オチ)も現代人に通用するように創作した落語である。
しかし
新しいマテリアルを古いフォーマットに乗せただけでは何も変わらない。
「全ての話芸は、演者の『感性や資質』によって左右されるモノだ」
と気付いた『新しい落語』の先駆者、それが桂 枝雀なのである。
今回掲載する一席は、落語的にも文章的にも読み辛いものになっている。
しかし、『聴いたままの文章を起こす』事が、彼のみでなく
全ての噺家への敬意であると私は思っている。
これを読んだだけで彼の真髄を垣間見ることなど到底無理なのだが、
読んで単純に『枝雀好きの自己満足』と捉えて貰えれば、それはそれで良いと思う。
なお、聴き取り不可能な言葉や調べられなかった単語は
語呂の良さそうなニュアンスの言葉として代替している事をおことわりしておく。
最後に、聴き取りにくい単語についてを無断ながらに参照させていただいた
ネット落語掲載サイトのお歴々の方々には、お詫びと共に感謝をいたします。
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