<出でよ 人形遣い>序章
by Fukusuke 2&(NO)
警視庁発令、[広域手配指定 No.A−20457]
この広域手配犯についての情報は極めて少ない。犯人の氏名、国籍、年齢、性別等その一切が不明。にもかかわらず 警察庁と協議の上、警視庁が「指定ナンバー」を与えたのは、その犯行手口が極めて酷似し、その狡猾・残忍さにおいても他に比類がない事から同一犯人の犯行と推測しての事に過ぎなかった。
だが近年、この[A−20457]号犯の手口及び 被害対象に極めて酷似しつつも同一犯とは考えられない・・・・同時刻にまったく別な地域での被害多発に及んでいた。一例をあげるなら、2001年2月2日、広域被害報告記録によると「事件A」は<JPN:日本国・愛知県>で発生。同日付、「事件B」は<US:米国・オクラホマ郊外>にて発生。
警察庁の直接指導により、この容疑者を[No.A−69021]に緊急認定
した。
この犯罪者については、西暦が新しくなってすでに500日以上が経過するに及んでも、世界各国の警察当局は 今だその足跡証拠の片鱗すら掴む事が出来ずにいた。過去の10数年で 警察当局が、彼ら怪盗に対し認定したのは他に2つ、ひとつは広域手配指定[A−20457]が「怪人福助二世」、最近になって発覚した [A−69021]に「怪盗 人形使い」のニックネームを使用しているのを不承不承だが認めざるをえなかった事だろう。
当然ながら、このふたつの情報はそれだけで全世界の警察組織を震撼させた。なぜなら あの「怪盗福助」だけでも手におえないというのに、その福助と 同等かあるいは、それ以上の実力を秘めたパートナー?ライバル?が出現したなどというのは前代未聞の事であり、その結果どんな事態が巻き起こるか・・・・それを想像した時、、、警察組織にとっては まさに その事が大問題であった。
<怪盗 人形使い>
<<・・・この8日、太平洋上に発生した台風はなおも勢力を増し、今夜半には西伊豆に上陸の模様です・・・・勢力、※※※ヘクトパスカル、、毎時32kmで・・・・>>
天気予報に頼るまでもなく、夜半からの風雨は いよいよ強さを増していった。
ガタガタガタガタ、、ビユウゥゥゥゥゥ ヒュウゥゥゥゥ、、
ヒィウウウゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウゥゥゥゥゥ
シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ
もはや それは雨などと言うべき可愛いものではなく、車のワイパーなどあってもなくても関係のない状態であり、まだ21時を少し回ったばかりだと言うのに、都心の繁華街にはこんな暴風雨の中で呑気に酒を飲むような酔客の姿など見られなかった。
ジャブアッシァン、
ジャブジャバジャブジャバババ
「おっとぉ、、これが世界に誇るTOKYOメトロポリタンだっていうんだから、オソマツよね・・・・もっとも そのお陰で こっちは仕事がやりやすくなったんだけどね。クククク」
「ふむっ、、、うぐうっ、、」
・・・番線ホームに外回りの列車が・・・・台風の影響で運転調整を・・・次の停
車駅は御徒町・・・・】
ファアアアァァァアンンンン、、
ガゴオォォォンゴウウウウゥゥウンンンンン、、、キュンキュンキュン
クゥオウゥゥウウンンン
そのつぶやきと、くぐもった声は、折りから潜り抜けたガード上から聞こえる列車の騒音とホームからのアナウンスにかき消されていた。
「あら?麻酔がきれたのね、そこから見えるかしら、お嬢さま?こんな嵐の中を不平や不満を堪えてながら、ああして通勤する「働きアリ」がいるからこそ、あんた達家族は何不自由のない裕福な暮らしが出来ていたって事なのよ。どう?良いお勉強になるでしょう。」
「む!むっふう、ふごう!」
こんな悪天候の中を疾走する その車の後部シートには、その眼に 怒りかあるいは、なにか恐怖に脅えたような輝きを含んだ視線で運転しながら そう話かける女性を睨み付ける拘束された!?女性の姿があった。
「あらぁ何を そんなに心配しているの?そんなに脅えなくたってアッという間に あんたはもうすぐ目立ちたがりのお嬢さま にピッタリの別な世界に行く事が出来るのよ。あたし、これでもフェミニストなんですからね。楽しみにしていらっしゃい。。ふふふふ」
「おふっううううう!!ふふふうん!!」
後部席のシートに横たわって必死にもがく女性は、呻く以外 何の抵抗も出来ない。だってその女性の両手は後ろ手にして全身と合せてガッリ縛られているんだから手首から先、ほんのわずかに残された指先の自由は、その女性にガッシリと嵌められた猿轡のストラップを緩める事なんか出来っこないんだから。
「ちょっと、ちょっと お嬢さま、なにオイタしているのよ!」
赤信号で車を停めたドライバーの女性は、運転席から手を伸ばして、猿轡の結び目に振れようとしている女性の指先を握り締めて、力いっぱい逆にそらせてやると、その女性はロープの結び目を音を立てて きしませながらながら、猿轡の奥で悲鳴をあげた。
だが拘束された女性がいくら文句を言おうとしたって、その口には唇をピッタリと覆う肌色のゴムラバーの猿轡が嵌められている為、女性の整った唇の輪郭をゴムの表面に浮き彫りにさせながらも、その裏側に突き出た大きな突起物が完全に口孔を占領してるんだから喋る事なんかできっこない。
「うふほ!ふううんんん・・」
「そうやって暴れる事ぐらい こっちはお見通しさ。そいつを予測したからこそ手首と足首を一まとめにした獣縛りのホッグタイにしてあるんだよ。良い子だから、大人しくするのよ!」
「ふう、うむうううんんん、、ふうん、、んんんんんん、うん、」
「いくら突っ張ったところで そんな恰好で 縛られてたんじゃ仕方ないわよ。それにそんなにもがいたら せっかくの高級ドレスがシワクチャになっちゃうわ。まぁそんな心配ももうすぐ する必要はなくなるんだけどね。そう、なんの心配もいらないのよ。」
ジャブアッシァン、
ジャブジャバジャブジャバババ
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ある回想、それは復讐の日
わたしには子供の頃から特殊な感性と能力があった。それは最初、女性への好奇
心からスタートした変装行為と、その為の肉体的特徴、さらに科学技術を理解するこの知識を得た事だ。
わたしがその特異な性癖と能力に気づいたのは、確かまだ 小学校の高学年の頃だっ
たと思う。当時 女子大生だった姉の事件をキッカケにして、わたしは変身、特に「女装」する事への興味と必要性を深く自覚していた。
その頃 姉には年上の恋人がいたが、それがろくでもない男だった。ロクデナシに
引っかかった姉もバカなんだが、そいつに弄り回されたあげく姉はノイローゼにな
り、結局は病院行きになってしまった。その後の姉の経過については触れたくないので割愛する。
わたしは 当時まだ小学生ながらも、その男に復讐を誓った。そして中学一年になっ
た春、その復讐計画は意外なほど早く実現できる事になった。父親に似て大柄な体格の姉と、母親に似て小柄な体格のわたしの身長・体格・体重がオーバーラップした時、わたしは「ある探偵小説」で読んだ方法を参考にして準備を始めた。
不思議なもので、常日頃 目の当たりにしていた筈なのに、いざとなると女性の下着
や衣類などを身に着けようとすると戸惑うものだと 当時は思った。
「ガードル」って下着は、パンティとパンティストッキングの上に穿くのか、それともパンティとパンティストッキングの中間に穿くのか、ボディスーツとの順番は?ブラジャーには数列のホックがあるが、どこに留めるのが一番自然なのか?パッテイング入りのスリップを着る時、ブラジャーはしなくていいのか?・・・・
「下着」だけでも ざっとこれだけあると言うのに、これ以上に面倒くさいのが「化
粧」って奴だ。だが俺には、復讐と言うバネに加えて天性の素質もあったのだろう、
その障害は、カムフラージュの為に演劇部に入って 産休で休職中の顧問の代わりに
臨時に派遣された女の先生のアドバイスで、必死に練習したお陰で、わたしは夏休みの終わりには「化粧」など苦もなくマスターしていた。
さてと、、、もうバレてしまったと思うけれど、わたしは、本物の女性ではありません。あえて分類するならTV(Transvestite)、俗世間でゆう「女を装う者」
・・・でも恥ずかしいとは思いません。
では聞くが、お前は男性が好きなのか?、、、
そんなありふれた質問へのわたしの答えは、NO!
夏休み中に 臨時の顧問のアドバイスと徹底的な「女装」の特訓をうけて、いよいよ準備は整った。わたしは姉をオモチャにして捨てたクズの(姉の行っていた大学の2学年先輩・・・3浪しているので年齢は5歳上)行動もすっかり調べた上で 計画をスタートさせた。
ターゲットNO,01・・・カナスギシンジ
ターゲットは 金持ちの親からの仕送りで、かなり裕福な生活をしていた。わたしは ある場所から、奴の部屋に電話した。女性の声を出す訓練はもう幾度となく練習していたしいろいろな方法で試して、その頃には自由に自分の声を変える事が可能になっていたんだ。
トォルルルルルルル、、、トォルルルルルルル、、、トォルルルルルル
「ふわあぁい?ひっく、、カナスギ、、っすけど・・・飲み過ぎた・・」
「(居やがった、、、ふふふそんなに酔っ払ってマヌケ声で いられるのも後少し
なんだぜ。)あ、もしもーし、あ・た・し!、、何よ!飲んでたの?ずっと電話、
待ってたのに、ひどいんだぁ」
「え?、、、ダ、、ダレだっけ・・・」
「何よ、それって、失礼しちゃうわねぇ?アタシよ、美咲よ みさき!」
「おあ?ミ、みさき?、、おお!何よ お前 交通事故にあったんだって?
もう病院から帰ってきてたのかよ!」
「とっくよ〜。だから こうして電話してるんじゃないの。んもぅ、おとといの夕方
から留守番電話にメッセージしておいたのよ。それも何回もよ。今マンションにいるんだけど、来ない?姉キは 仕事で出張中だから、アタシ寂しい1人暮らなんだけどなぁ・・・・・え?来てくれるの!じゃ待ってるからね。。じゃ」
カチャ
「プッ、バカみたい。あいつったらコロっと騙されて すっ飛んでくるってさ、、
さぁそれじゃあんたは用なしだね、だって 「みさき 」 は2人も必要ないもんね。ふん、男好きのみさき ちゃん、、あんたも好き者なんだね。勝負パンツ丸見えにしちゃってさ、良い恰好だよ。」
電話を済ませた私は リビングの床に転がる「みさき」に、そう声をかけながら脇腹
を蹴り上げた。
「ぐふっ、うふぼふうう、、、、むうんんうん・・」
ギギシュッ、ビヴンン
いつもならすでにナンパに出かけてでもいるんだろう みさきって女は せっかく外出の用意をすませてたけど、わたしのお陰で堅い床の上で、拘束された身体をもがかせながら猿轡の奥から苦しそうに呻き声をあげてる。
そう、今わたしは カナスギシンジのカールフレンド、岩間美咲のマンションにいる
んだ。わたしがもっと年上だったら この女も警戒しただろうけど、わたしは最初、いかにも中学生って態度で 管理人の息子のフリをして、この女の部屋をたずねた。
そして部屋に入ると、油断しきっている岩問美咲に飛び掛かって、何か叫ぼうとする彼女の口にボロ布を詰め込みながら、学生服に隠していたオモチャの手錠を彼女の手に後ろ手に嵌めてしまったんだ。
「今夜は1晩中そうやって もがいてたら良いよ。ただし場所はふかふかのベッドじゃなくって、電気温水器の脇でだけどね。たまには良いでしょ。あいつの相手はワタシがしてあげるから安心してらっしゃい。なんにも心配しなくたって良いのよ。、、そう、、、なんにも、、、ね」
わたしはその女、みさきが身に着けているのと同じようなブラジャーとパンティを整理ダンスから探した。パンティストッキングやキャミソールは適当なもので我慢しよう。
本当は脱がせたものをそのまま着用するのが一番らしいんだけど、今更 手錠を外し
たりしたら暴れられるにきまっているから仕方ないし、こんな若さだけが取り得で なんの努力もしないで「オンナ」を垂れ流しにしている奴の身に着けた下着なんか着たくもないのも わたしの本心。
すっかり準備は整ったと思ったら急に緊張で脚がガクガクと震え出したけど、もう今更リセットなんか出来ない。第一、これは復讐なんだ。僕、、いいえ わたしは姉さんの復讐の為にこんな事をしているんだって事を思い出して自分に喝を入れた。
わたしは なぎさの部屋で着ていた物を全部脱ぐと、三面鏡の前の椅子に座った。
鏡の中には不思議な生き物が自分の胸を隠すように両手で抱きしめて、わたしを見ていた。上半身、性格には首から上は、ボク、、いいえ、ごめんなさい、、男子中学生の・・わたし・・・
でもその首から下は、腕の間から零れるような、豊満なバスト、、モデル程ではないけれどオトコを知り始めたばかりの年頃の女性特有のくびれたウエスト、、、そして、ビキニカットに手入れされたデルタヘアーをかき分けて顔を見せている恥唇、、、、
味気ない男子中学生の制服の下に隠されていたのは、顔さえ見なければ、男を扇情してしまうだろう女體・・・・のラテックスボディスーツを着たわたし・・・・
【男子校の演劇部なんだから、女役をやらされるのも覚悟してないとね、衣装を着てしまったら解らないんて゜しょうけど、女性の気持ちも理解しておかないと、出来損ないのチンドン屋になっちゃうでしょ。これを貸してあげますから、時間がある時に1人で着てみなさい。】
これだった。すべて白状してしまうと、これはすべて演劇部の臨時顧問の先生が手伝ってくれて実現した事・・・・・
いよいよメイクを始める。わたしは臨時顧問の先生からもらった、競泳用のスイミングキャップに似た、半透明の薄いラテックス・ラバーのヘアキャップを頭に被ってから、そのキャップに隠れた額と顔全体に、パテ状のファンデーションも兼用のフェイスコートを塗った。
【良いかしら?よく覚えるのよ。このフェイスコートはね、アメリカなんかじゃプロの俳優さん達が、舞台で使っている舞台化粧の基本パーツなの。これは体温で5分ぐらいで乾燥するから、半分ぐらい乾いたらその上からコーティングラバーを貼っていきなさい。のんびりしている暇はありませんよ。】
わたしは臨時顧問の先生からアドバイスされた説明と、特別に分けてくれた人工皮膚みたいな肌色のピラピラな薄い被膜を半乾きのフェイスコートの上に張りつけていった。
たよりないゴムみたいなヌメヌメ感のある、引っ張ったら千切れてしまいそうな その被膜は、わたしの顔に張りつくと、勝手に収縮を始め、わたしの顔の筋肉はわたしの意志とは無関係に、その一本一本までがコーティングラバーに支配されて動いている。わたしは自分の顔の肉付きが変化してゆくのを皮膚から感じていた。
【完全定着の直前に少し発熱するけれど、すぐにおさまるから、それまでは慌てたりしても顔の表情は絶対に変えては駄目よ。】
一瞬、熱いシャワーを浴びたように わたしの顔と頭がカッとなって、徐々に納まっていった・・・・定着って言うのが済んだんです。
鏡の中のわたしは尼さんみたいな坊主頭、鼻の筋がすっ伸びて顔の筋肉も頬がふっくらとなっていた。わたしは みさきの三面鏡の中から 化粧品を選ぶと「みさきメイク」を始めました。
ファンデーション、、アイシャドー、、眉、、つけまつげ、、、アイライナー、、頬紅、仕上げにルージュを引き、セミロングのかつらをつけると わたしの顔は「みさき」に占領されていた。
わたしが微笑むと 鏡の中の「みさき」が媚びたような笑顔で微笑む。自然に頬に出来るエクボは、この顔がマスクだとは絶対にわからないだろう。わたしは少し自信を持った。
「おまちどうさま〜ほうら、アタシ みさき でーす、くふふふふ。どうそっくりでしょう?」
わたしがそうおどけて言うと、本物の山みさきは猿轡と前髪の間から目をみはった。
「はぶ?・・・・ふぅふおうぅ!!!」
その瞬間 わたしの体に電流のような衝撃が走った。手足を縛られた女が、わたしを見て驚愕と恐怖にふるえている・・・・それを見た瞬間、、、わたしの中の何かのスイッチが入った。
「ね、そっくりでしょ?これなら あなたになりすまして、カレシと過ごしてもバレないわよね。さてと、これから オネエサマのお洋服をお借りします・・・あ、今はわたしの服なのよね。着させてもらうわよ。」
信じられないんだろう、それとも恐いのかしら?涙をたたえた瞳でわたしを見つめる みさきを尻目にして、わたしはパンティを穿いて、ブラジャーをつける。手を背中に回してブラジャーのホックを止めるのも何不自由なく出来るのも、特訓の成果・・・ブラジャーの上から胸に手をあてて感触を確かめると わたしは女體を意識していた。
整理ダンスから選んだスリップを頭から被るようにして着ると、スリップのツルツルした感触が わたしの鼻先をくすぐった。
「ね、なにか変な着方だったら教えてね、だって恥をかくのは ミサキなんだもんね。ほら、このスリップなんか ぴったりよ。」
わたしは続けて みさきに見せ付けるようにして、新品のパンティストッキングを袋から出すと、一度穿きやすく丸めてから爪先を入れてくるくるとたくし上げてみせた。パンティストッキングのかかとをビッタリとフィットさせてから、伝染しないように、そっと丁寧に穿上げてやる。
次にクローゼットから適当に選んだ 真っ赤なニットワンピースを着て。背中のジッパーを上げた。
【覚えておくのよ!女性のウエストってね、男の人のウエストよりも、平均して5センチは高いの。これは女装する時には重要なポイントなのよ。握りこぶし、一つ分上だと考えれば良いわ。】
わたしは教わった通りに、今までの自分のウエストよりも握りこぶし一つ上に、エナメルブラックのベルトでウエストマークを作ってみた。本当だ!自分じゃ何か落ち着かないけれど鏡の中の「みさき」にはどこも変なところはない。これで 「みさき」の完成だ。
「むふうぅぅ!!・・う゛う゛う゛っぐぶっ!!」
本物の みさきが猿轡の奥で呻いた。
オトコがそそりたつ ふくよかな胸や、ツンと上がったヒップ、スカートのラインを押し上げる脚線とふとももの線やパンティストッキングに包まれてキラキラ輝く格好のよいふくらはぎ・・・真っ赤なミニのワンピースをその魅力的な女體にぴったりと着た ナンパ支度を済ませた「みさき」がそこにいる。ついさっきまで味気ない学生服を着ていたわたしの姿はどこかに消えてしまっていた。
「ふむぐっ・・・・う・・うううううううっっっ!!」
「みさきさんってSMがよく似合うのね、とってもステキよ。だけど今夜は そのままでおとなしくしててよね、今はわたしが 「みさき」なんだもん。ほら、声だって変わってるでしょ。」
みさきは縛られたまま、くぐもった悲鳴を上げながら 床の上で 必死にもがいている。わたしはそんな女の姿を見てなぜか、どきどきしながら満足していた。
わたしは、なおも もがいて抵抗する本物のみさき を温水器や配管が納まっている点検スペースに放り込んでから30分もしないうちに、1人目のターゲット・・・「カナスギシンジ」がやって来た。いよいよだ、、、わたしはボイストレーニングで鍛えた声帯にフィニッシュコーアで潤いを与えてから、マンションのドアを開けた。
「いらっしゃ〜い!んもぅ、ずっと待ってたんだからぁ、あ!何よお酒臭いなぁ」
カナスギ
「おう、そんなに酒臭いか?、ああ、そうだ、みさき、 酒たくさん買ってきたからよ。そうそう 材料 持って来たからさ、又、久しぶりに あのツマミ、、喰いたいな。 あれが あったらこれぐらいの酒みんな飲んじまうぜ。」
「あ、、、そうね、、、ええ、、飲みましょう。。。アタシも あの オツマミ自信作だもん。」
(やっぱいなぁ、、あのツマミって・・・いったいなんなんだろう?)
カナスギ
「そうこなくっちゃな、おっしゃそれじゃ乾杯だ、乾杯!」
(それは こっちのセリフよ・・・そうこなくっちゃ・・・)
わたしは1人ではしゃいでいるターゲットに背中を向けキッチンからグラスを
取りながら そうつぶやいた。
「みさき の退院に乾杯っ!」
「嬉し〜かんぱ〜い、、いっぱい飲んでね〜!!!」
いよいよ復讐計画はスタートした。わたしは このターゲットについて調べられる事は調べつくし、そして自分で出来る限りの事はした・・・でも、、、だけど、、、その決意と目標を達成する為には、、、わたしには足りない物がありすぎた・・・・・そしてそれに気がつくのも・・・・・
「なんだなんだ、、みさき、、お前、入院したら酒弱くなったんじゃないのかよ?なんか別人みたいじゃん。」
「嘘っ?そ、、、そんなコト、、ひっく、、、ふうっぷ、、ないわ、、」
(酒が強い、、、それはデーターだけでは理解できたけど、こういう事なのか、、、わたしは慣れないお酒をこんなに短時間に飲んだコトなんかありませんでした、、、)
「病み上がりだもんな。おっしゃ、そんじゃ酔い覚ましに、一汗かくか!あのツマミ作ろうせ゛。道具はオレ用意してきたからよ。お前、そのまんまにしてろよ。」
「あ、、そ、、そう?それじゃ任せちゃお、、ひっく、、楽しみ、、、アタシ、、」
「楽しみか!そりゃそうだろ、お前、ヒィヒィ言って喜んでたもんな、、、へっへへへへそれ、手を後ろにしてみ。いつもみたいにさ。」
幼さの油断だろうか、その時、わたしの神経は元の中学生の男の子の心に一瞬だけど戻ってしまっていた。わたしが自我と目的を取り乱した時、わたしの眼に飛び込んだのは ウエストマークの黒のエナメルベルトが取れて床に転がり、まくれあがったスカートの下にパンティストッキングのウエストのゴム部分まで剥き出しになった自分の下半身でした。でもわたしは自分でそれを直すことは不可能・・・・。
こんな奴の目の前でパンティとパンティストッキングを穿いた下半身をさらけだしてしまっているなんて、、、まくれたスカートをもとにもどしたい。いくらそう思っても何時の間にか背中の上でガッシリと固定して縛られた両手首と、両脇に胸の上下の縄と一緒に縛り付けられた両腕では、わたしはほんのわずかに指先を動かすのがやっとてなんです。
「くう!?はうむむうぅぅ!!」「んんっっっっ!ふふむっ!!」
さっきから聞こえていたくぐもった声がわたしの口から漏れる呻き声だなんて最初は信じられませんでした。
「ふうんんっっっっ!ふふむっ!!」
猿轡って、、、こんなに厳しいものなの?
今、わたしが嵌められている猿轡から比べたらさっき、本物の みさきに わたしが嵌めた猿轡なんかママゴトみたいなもの・・・こんな嵌められている自体が拷問みたいな猿轡、、、破裂しそうなくらいに詰め物をされたわたしの口の上に、念入りに噛まされた、瘤を結んだ布・・・・
でもそれで終わっていたらまだマシ、、、それだけじゃ飽き足らないのか、まだその上に わたしの唇と鼻を覆う念入りな「被せ」の猿轡の為に喋るどころか普通の呼吸だって苦しくて、それに飲めないお酒に悪酔いして 吐きそうな気分。地獄は それだけじゃない。わたしの首と 身体のどこかを一まとめに縛られているらしく、わたしが苦しくてちょっとでも、もがくとストレートにわたしの首を縄が締め付けるんです。
「良い声で鳴くよなぁ、、へへへ、どうだい?久しぶり、、いや初めて縛られる感想は? みさき、、、に変装した 牧瀬くん?」
「!!・・・・!?」
「どう?いくら復讐に燃えて女の人に変装するのがうまくなっても、肝心のプランが行き当たりばったりじゃ、そんな酷い目にあうって事、解ったかな?」
「はっ?!はっは、、あふっ?!」
「まだ解らないなんて、少し牧瀬くんをかいかぶりすぎたかなぁ、、素質は充分なのに、、、それじゃ大サービスよ。けほん、」【あっあっふううっと、、これならどうかしら?、、初めての縄の味はいかが、秋の文化祭が楽しみよね、女装の男子中学生緊縛の図なんて題名で・・・ねぇ牧瀬くん、そのフェイスマスク、上手に仕上げたわね。先生、とっても嬉しいわ。】
ピリッミニュウゥゥゥ、ペリペリペリリ、パポップ
ヌプォォオオオォォニュミュゥゥゥ
「ほおあふっんっ!?」
「ふー、爽快だわ。ダブルマスクって蒸し暑いのよ。ふふふふ、やっと解ってくれたのね。思った通り、あなたって頭がいいわ。でも、ホッグタイがそんなにそんなに よく似合うとは「先生」思わなかったんだけど、、あはははは」
「むむうううんんっっっ・・・・」
そんなの、、、まさか、、わたしの目の前にいたのは間違いなく ターゲットの・カナスギシンジそのもの、、、の筈、、、でした。。。
なのに、、、軽い咳払いの後、憎むべきその男の口から流れ出た言葉は、夏休みを
返上してまで わたしに付きっ切りでアドバイスしてくれた、あの臨時顧問の、、オンナの先生の声に変わって、、、、
それだけじゃありません、、、次の瞬間、その顔を鷲頭掴みにして引っ張りはがした その下には 「あの先生の顔」がいたんです。ただ、その眼には、こうして女性/女装者を縛り上げ、拷問の様な猿轡を噛ませて苛む事に快楽を覚える。そんな性癖をあからさまにしているように輝いて見えたのは わたしの錯覚?
先生・・・あなたはいったい、だれなんですか?
「ふふん、とっても素敵よ、それじゃ君に ご褒美をあげるわ。しっかりよく聞くのよ。君の復讐は、先生がやっておいたわ。よいしょっと、さぁこれが証拠。見えるかな?」
バサッパサパサッ
「ふうむんっ」
わたしはこんな哀れな姿に緊縛され猿轡を嵌められたままの顔を持ち上げて、
声と音の方向を見た。
カナスギシンジ
禁治産者 指定に関する書類
○○○裁判所
「ふぃふおんふぁ?」
「キンジサンシャ・・・・牧瀬くん、その意味が解るかな?」
わたしはその質問に、縛られた縄で首がしまるのもかまわず頭を左右に振った。
「そうだろうね、君はまだ中学生だもんな。これはね、カナスギシンジにとったら死刑宣告みたいなもんなんだ。」
・・・禁治産者・・・
それは代々の家系を持ち、その家系を受け継ぐ者、(ひらたく言うと跡継ぎ)として権利を剥奪する為の法律であり、この指定を受けた親族はそれが例え長男であろうと、いかなる財産の相続も受ける事が出来なくなる、このカナスギシンジのような大富豪の跡継ぎにとっては「死刑宣告」にも等しい処置なのである。
「先生はね、君の話を聞かせてもらって面白い事になったと思ったの。何を隠そう、私達は前々から こいつのオヤジ「金杉丈太郎」の莫大な財産とその会社の持つ国際特許に眼をつけていたんだから。」
「・・・・・」
「私達は私達で、「金杉コンツェルン」を乗っ取るシカケは作っていたのよ。でも君の噂を聞いていて、予定を少し変える事にしたの。」
「・・・ほぉふろ、、ふふぁふぁ?」
「そう。私がなんで わざわざ君の通う中学の臨時教員におさまったかと言うね、私が経営しているリサーチ会社に、中学生の君がなぜ 高い調査料金を支払ってまで、あんなカスの節操なしの事を調べているのか、それが知りたかったからなの・・・・・・
もしかしたら、中学生に変装したライバルが「金杉コンツェルン」を狙ってるんじゃないかと、そう考えてね。」
「・・ん?ふふん!ふんふん ちがふふうううっ!」
「いいんだよ。それが先生の考え過ぎだってのは牧瀬くん、君と話していてすぐに解ったもの。君は真剣にお姉さんの敵討ちをしたかつたのね。でも、君と話した事で、先生はもっとシンプルな方法で「金杉コンツェルン」から 自分が欲しい物を頂戴するアイデアを見つける事が出来たの。つまりそれが、さっきまでの恰好とその書類って訳。」
「・・・・・?」
「解らないかもね、、先生は この馬鹿に変装して「金杉コンツェルン」の跡継ぎの立場を徹底的に利用してやったのよ。簡単だったわ。いくら大金持だろうと、しょせんはこんな馬鹿息子を出来合いする馬鹿親父、【これからは心を入れ替えて頑張るから】と嘘涙を流してやったら、私がニセモノとも知らずに、ほいほい信じてくれて、一気に専務の肩書きが来たのよ。信じられる?こんな節操なしの最低オトコがよ?」
「ううん!うううううんうんうんうん!!」
「あははははははは、そんなに怒ったって仕方ないわ。それが世の中ってものなんだからね。でもね、イヤ!だから こそ君の復讐も出来たんだよ。私はは自分の立場を徹底的に利用して、金杉コンツェルンが持つ財産や不動産、そして国際特許まで、ブラックマーケットをリンクして、すべて私の経営する子会社に売却してやったの。そのプロセスで 駄目押しに、運転資金の名目でメインの銀行から借金できる限りしてやったのよ。多分、これは致命傷でしょうね。」
「・・・・・・・;;;;;」
「その眼はどうやら少しは解ってきたようね。そうよ、今の「カナスギシンジ」は実家はおろか このマンションまで すべて借金の担保、、、財産なんかとっくに人手に渡り、あるのは「跡継ぎの馬鹿息子」が親に内緒で作った莫大な借金だけ。もっとも本物の馬鹿息子は、そんな事も知らずに外国のカジノで遊びほうけているだろうけど。パスポート期限の今月末に帰国したら さぞ驚く事でしょうね。あはははははははははははははは」
「・・・・ふっうっうううう、;うっく;;;;;;;;」
「?どうしたの?泣いたりして、、自分の手で復讐したかったの?、、違うみたいね、、、さてと、このマンションも売っ払っちゃったし、こんなトコロに用もないし、おーい!相棒っ!二代目さんっ!そんなもの自分で解けるんだろう?帰るとしようよ。」
二代目
「たはははは、二世ったら、そんな言い方したら、教え子が可哀相だよ。ねぇ?牧瀬くん、せっかく一生懸命こんなに頑張ったんじゃないの。偉かったよ。、、、で?二世?どうすんの?」
二世
「え、、?どうすんの?って、、、何が?」
二代目
「またまた、おトボケでらっしゃる。そんなら言うけどね、良い?これまで「福助組」って言うのは、人助けなんてした事はないの!そりゃ「してはいけない」なんてルールはどこにもないけれど、そんなの福助組には似合わないんだ!・・・そう言っていたのは、ねぇ、、、ちょっと?何 知らん顔してるのかな、、二世!あんたなんだけどねぇ・・・」
?????なんですって?、、、この人達、、本物だとばかり思っていた「みさき」が「二代目」・・・そしてカナスギシンジから親身になってくれた先生に変身した人が・・・「二世」・・・・「ふくすけ」・・・・????
二世
「何の事か良く解らないね。二代目の言う事は、、、俺は手間暇かけずに目的を達成出来たら、それで良いのさ。愛とか思いやりなんて所詮は人間が勝手に考えた妄想に過ぎないんだよ。、、、、く、、くだらないね。」
二代目
へへへへへ、そうかい、そうかい、、(なら、この牧瀬くんが 我々のリサーチ会社に支払った代金がどうして、彼の口座に全額、返金されてるのかな。これ 彼のお姉さんの生命保険のお金だからなんだろ。)
二世
「・・・・二代目、ここの後片付けは頼むよ。俺は この生徒と話したいんでね、」
さあ?牧瀬くん、どうする?もし君が 私達と、、いや私と この世界を共にしたいのなら、このまま君を連れて行く。もし、君が二度とこんな事はイヤだと思うなら、この注射で君の記憶を部分的に消去させてもらって家に帰してあげよう。決めるのは
君自身だ。
二代目
「なあ二世?いいのか?!そんなに無理して肩肱つっぱらかして。え?、、、、
あっとぅううう、、、」
ガチャン、、バリン、、
二世
「わっ二代目、!なんてコト、、、、」
二代目
「おっととと、これは悪い事をしちまったね、せっかく二世が用意した注射器とアンプル、全部テーブルから落として割れちまった、、こりゃ、とりあえず隠れ家につれていくしかないなぁ。」
二世
「そ、、そんな訳に行くか、こいつは、、、」
二代目
「あぁあ、おい、外はひどい雨だよ。天気予報じゃ台風が南から来るって言っていたけど。俺は駐車場から車を回してくるからさ、その お弟子さんは二世、頼んだよ。」
カツコツカツコツ
ジャブアッシァン、
ジャブジャバジャブジャバババ
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*
ギギギギギイィィィィ ガゴヴヴヴヴヴヴ
ギャリギャリギャリギャリギャリイィィィィィィンンン
左右何メートルぐらいあるのか、重々しい観音開きの鉄柵のような門戸が開き、一台の外国製ワゴンがその中に吸込まれて行った。
{これはお嬢様、こんな天気でお出かけされるのでしたら運転手がおりましたで
しょうに何かございましたら、私ども 責任が・・・・}
その門の脇、まるでどこかの高速道路の料金所のような建物から、ドシャブリの雨に傘を叩かれながら、燕尾服の男が運転席に駆け寄ってそう言った。
「大丈夫よ、アタシだって子供じゃありませんって、、、それより 着替えたら又、出かけますからね。スチュアートは休んでちょうだい。門は車内リモコンでどうにでもなるわ。」
ブロロロウウゥゥゥゥ
「ふふふふふあぁっははははははあぁぁぁ、聞いた?仕事熱心なのか愚直なのか わかんない おじいちゃんだね。昼過ぎに お嬢様が出かける時には、ちゃんと運転手がいたじゃない、このアタシって言う、、、ねぇ?あの おじぃちゃん、この車の中のぞきこんだらビックリしただろうねぇ。ふふふっあっはははははは」
「ふうむんっ・・・・・くううっ」
快活そうなそんな問いかけに返ってきたのは、後部座席からの苦しげな女の呻き声
・・・・しかも、その声は座席からではなく、その下から聞こえてきた。
その女性の全身には幾重にも縄が巻きつき、彼女の腕も脚も同様に縄で足首と膝を一つに縛られていた。濡れたようなルージュを引いた唇には奥歯の所まで猿轡を嵌められ、さらに目隠しをされているので顔は はっきりとは分からない。だが、そのすっきりとした鼻筋には 今、車を運転している女性と双子にも思える特徴があった。
お屋敷という称号にふさわしい西洋館のビルドインガレージに車を滑り込ませた女性は、すぐには車を降りずに、どこかに電話している。
<もしもし、こちら「人形使い」、せんせい、、あ、すみません つい。これから
屋敷に入ります・・・>
≪出でよ 人形遣い≫
序章<完>
【続く】
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