<出でよ 人形遣い>8(伝説との攻防戦:U編ハローウィンの花火)
by 福助二世



Veeeeeeeee,,,Veeeeeeeee,,,Veeeeeeee
e,,,Veeeeeeee


旧アジトからの突然の撤収を余儀なくされた、若き怪人集団は、沸き上がる緊張を隠さなかった。
引っ越したばかりの、新アジトに突如、鳴り響いた警戒報は、あの怪盗の怒りの現われなのか、その内容は かなり露骨に、彼らを挑発するような内容だった。

Veeeeeeeee,,,Veeeeeeeee,,,Veeeeeeee
e,,,Veeeeeeee

Hei Boys! Trick or Treart? WaHaHaHaHaHaH
aHa,, Trick or Treart?

般若ぁ、波羅ぁ密ぃ多ぁ心、色即是空、空即是色、、、、ギャーテーギャーテーハーラギャーテハラソーギャーテーボージソワカァ、わはははははは、、やはりハローウィンに「般若心経」は似合わんな、

こっちは諸君らの命日まで取っておく事にするか、

それでは改めて、、 Trick or Treart? Mr Fukusuke2th?

わははははははははははは

「くっそー!おいぼれ爺がヤリタイ放題やりやがって!牧瀬チーフ!、、おーい由
希っ!どこだ−?」
 
由希の耳に聞こえてくる、その二世の叫び声に だが由希は答える事が出来ない!

「むむんっっっ、うぐんんんんっっっっ!!」
 
「そっちの倉庫かあー」
 
「むむんんんんんっっうううー!!」
 
近づいてくる二世の声に 由希は縛られた女體を必死にもがかせた。スカートがめくれあがり、その下が、何もかもあらわになるのも気にせず、ドアの方へにじりよる由希の服装がさらに乱れる。すでにはじけ飛んだスカートのサイドファスナーの為に、スカートは彼女の足元からするりと抜け落ちていた。乱れまくったブラウスとパンティストッキングだけの下半身。そんなあらわな姿になっている自分の姿を見られる恥ずかしさなど考えもせず、なおも由希は呻いた。

「むむんんんううーうーうーうっっっ」

今、拘束されている由希の すぐそばに置かれた得体の知れない金属製の箱の中
からは、何かの為に時を刻む時計の音が漏れつづけている。・・・時限爆弾?
時限爆弾だとしたら、いつ爆発するのか?恐怖する由希にはそれを二世に知らせる術がない・・・

ガシャ、バダン!

「よし、生きてたな、お由希、」

「むむんんっっっ・・・むむんううううっっっ!!・・・・」

間に合った!、、、救出に来た二世の姿を見た由希は、その厳しい猿轡に抗って危機を伝えようと必死で叫んだ。その異常な事態に彼女の頭はパニックを起こしていたのかも知れない。とにかく必死になって叫び声を上げたのだが、それは口に詰め込まれた猿轡の布によって吸い込まれむなしい呻き声になって弱々しく外に漏れるだけでしかない。

チッチッチッチッ、、チチチチチチチチチチチチチチ

時を刻む音が単調な短信音から、急に焦ったかのように速度をあげた。

「ふあうっ、、はぁはぁはぁ、、に、、二世っ!そ、、その箱!」

ヂギッ!
バシュン!ズゴオオオオオオンンンン、、、、、、、、
ドゴオオォォォォオオォォンンンンン
ズバビュッシュン、ズガガガガアァァァァァンン

新アジトに響き渡る耳をつんざき、鼓膜をズタズタに引き裂くような爆発音と轟音
、、、、轟音、、、、轟音、、、、

やっとの事で拘束から逃れた警備スタッフ達は ようやく警備室から通路に飛び出し
たところで、その轟音を聞いて立ちすくんでいた。その光景を想像したスタッフ達はそこから先に足を進ませる事が出来ない・・・・

「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁあ、、だれかあぁぁぁぁぁぁ」

{落ち着け!落ち着くんだ、、、}

「スプリンクラー始動開始、防火ダクトフルシステム」

{火災発生にそなえろ。館内の状況を把握するんだっ!}


=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*

同じ頃、蜂の巣を突っついただけでは飽き足らず、さらに爆竹でも叩き込んだような有り様の新アジトの惨状を、遠く離れた車中のラジオで聞いている者がいた。それは

「ふふふふふ、、この俺のハロウィンのプレゼントに、餓鬼どもめ。大慌てしてるようだな、、ご自慢のセキュリティとやらも こんな有り様じゃ無理もないか、、さぁてせっかくの美女2人、気分転換にデートでも楽しむとするか。なぁ?オテンバなお嬢さん、ふっふっふっふっふふふふふ。」

これはどうした事だ?福助軍団の新アジトの混乱する様子を、カーラジオから聞いているのは、たった今、大音響とともに消息を絶った筈の由希ではないか。

「うむんっ・・・・・ううんんっ・・・・」

突然、後部座席から押し殺したような苦しげな女の呻き声が聞こえてきた。その声に運転席の由希はニヤっと微笑みながら振り返った。だが、、後部座席には大き目の旅行カバンがデンと置かれているばかりで、人の姿などどこにも見えない・・・その声は間違いなく 後ろの座席の当りから聞こえてきたんだが・・・・さて?

「特別席でのゴキゲンはいかがかね、お嬢さん・ふふふ・・」

そう男性の声で問い掛ける由希が見ている後部座席に、やはり人影はなく、大きめの旅行カバンが転がっているだけだ。まさに転がっている・・・運転席の由希が手を伸ばして、その旅行カバンのサイドファスナーを半分ほど開くと、その中には信じられないモノ、、、物?者?が入れられていた・・・・
 
ランジェリーを身に着ただけの歳頃の女性・・・だがその魅力的な女體には幾重にも縄が巻きつけられ、旅行カバンの中から見える彼女の腕は背中で一つに縛り上げられていた。

頬すりしたくなるような、なめらかそうな感触の黒いパンティストッキングタイツを穿いたカモシカの様な脚も、そんな両腕と同様の有り様で深く折りたためられた足首と膝を一つに縛られ、背中で縛られた両手の指先で自分のカカトが掴める程、引き絞られて手首と足首を縄で繋がれている。

口の中になにか詰め込まれている、きびしい猿轡のために顔は はっきりとは分から
ないが、そのすっきりとした鼻筋には特徴がある。不明瞭な呻き声を立てるのがやっとの猿轡のために彼女は猿轡のわずかなすき間から苦しげな吐息が漏らすしかなかった。

「あっあぁぁ、、こほん、、貴女から借りたこのお洋服から 少し前まで着ていたアナタの甘い体臭が沸き上がって、とても良い気分よ。うふふふふふ、、仲良くしましょうね。」

「むむんんっっうぐんんんっっ!!!」

イグニッションキーを回し、空咳をしてそう言った由希の声は、さっきまでの男性の声からいつもの牧瀬由希の声に戻っていた。おそらくそれに対する抗議の叫びだろう。旅行カバンに押し込まれている女性が猿轡の奥から呻き声を上げた。
 
「おやおや何をそんなに はしゃいでいるの?由希さん!さてと、こうして、本物が手に入ったんだから、こんな暑苦しい物は取ってしまうとするか。」

由希?、、、今、、この運転席の由希そっくりの女性は たしかにそう言った!そして自分の頭に手をやって自分の髪の毛を鷲掴みにしかかった その時だった。

フウウウウゥゥゥゥウゥゥゥゥ、、、ウウウウウウゥゥゥゥゥゥ、、、

【前を走る乗用車の運転手さん!左に寄って止まりなさい!!!前を走る乗用車の運転手さん!左に寄って止まりなさい!!!】

いつのまにか 聞こえていたサイレンの音が、すぐ後ろに聞こえて、そのサイレンに
混じって下品にがなり立てるスピーカーの声に、バックミラーに眼をやった由希の顔をしたドライバーは、そこに赤ランプだけが目立つ貧相なミニパトを発見すると、軽く舌打ちしてミニパトの指示にしたがった。


【あの横断歩道に歩行者がいましたでしょう。歩行者横断妨害なんですよねぇ、、
免許証を、それから車検証も拝見出来ますか!】

パトカーから降りてテキパキとした口調で由希にそう指示する二十台後半のベテラン婦警に由希はバックとダッシュボードから、それぞれ免許証と車検証を出すと、その婦警に差し出した。

「ふぐっうっううううっっっ!!」

【え?何か言いましたか?】

その婦警の言葉に、由希は背後の旅行カバンから漏れる呻き声を誤魔化す為にカー
ラジオのスイッチを入れながら なんとかその場を切り抜けた。

「むぐっっ・・・・うむんっっ・・・ふぐんっっっ・・・・」
 
その婦人警官が、人別(にんべつ)と車両照会にパトカーに戻った隙に、由希は
女性の口と鼻に、ガーゼのような物を押し当てた。

「うむむんんんんっっっううーうーううううぅぅぅぅ・・・」

後手に縛られた身体を、その旅行カバンの中で もがかせている女性・・・これが本物の由希なのか?・・・が、狭い旅行カバンの中でランジェリー姿で 荒縄できつく縛られ猿轡をされて もがき呻く様はかなりセクシーだったが、そんな事は運転席の由希にはどうでもよかった。しばらく そうして旅行カバンの中で、 もがいていた女性はすぐにぐったりとした・・・失神してしまったらしい。

ミニパトはバッテリーのパワーを大量に消耗する車載無線機は設備されていない。
携帯無線機ですべての照会をすませて、青キップを手にして戻って来た婦人警官に笑顔で対応して返してしまった由希・・・もはや旅行カバンの中の彼女が助かる可能性は絶望的だった。


「ははん、反則金、、○○日までに郵便局に振り込んでくれってさ。アンタの免許証で処理させてもらったから、振り込みよろしくね。さぁ邪魔が入ったけど、こんな物 もう剥がしてしまうか。」

ブボバッ、、バリリリュッ

由希は、そうそうにつぶやくと、カールのかかった髪の毛を くわっと鷲掴みに
して引き剥がした。可憐を満面にたたえている由希の顔、、、、、顔だった物がムンクの描くところの「叫び」と言う絵画のように変化して、しばらくむずがってから、剥がれていく。

その顔は、それが精密であるために、かえって不気味な陳腐さを見る者に与えるだろう。まるで売れ残りの西洋ナシが、鼻濁音とともに 不様にひしゃげていき、一瞬泣きべそをかいたかと思ったら額の所から徐々に剥離し、張りそこなった壁紙のような気泡を作りながら、スッポリと抜けた。

剥がれたフェイスマスクの下から、ついに露骨な軽蔑を含んだ笑顔を浮かべる別人の顔が・・・・?!、、だが我々にはもう、遠ざかる自動車に乗る、その人物の後ろ姿しか確認する事も・・・そして大きな旅行カバンに詰め込まれた女性の助けを求める声を聞くことも出来ない・・・・・。

去って行ったものは仕方がない。こちらは舞台と時間を、あの事件の直後。
惨劇の傷痕も生々しい戦場のような有り様の「新アジト」に巻き戻したいと思う。


ー・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・
>>>>>> Veeeeeeeee,,,Veeeeeeeee,,,Veeeeee
Hei Boys! Trick or Treart? >>>>>>>>>>>

「こちら資料保管庫、2名を保護!、、、全員無事!」

>>>>>>>>>>Hei Boys! Trick or Treart? WaHaHaHaHaHaH>>>>>>>

「研修室では、3名保護!、全員無事、、」


>>>>>>>>>般若ぁ、波羅ぁ密ぃ多ぁ心、色即是空、空即是色、、、、>>>>>>>

「地下駐車場4名中、3名無事、、1名失神中ですが命に別状なし」

>>>>>>>>>>ギャーテーギャーテーハーラギャーテハラソーギャーテーボージソワ
カァ、>>>>>>>>>>

「、、、、電気室、動力、予備電源ともに以上なし。」


>>>>>>わはははははは、、やはりハローウィンに「般若心経」は似合わんな>>>>>>>

「コンピュータールームに侵入異常あり!・・・コンピュータールームに侵入異常あり!」

>>>>>>こっちは諸君らの命日まで取っておく事にするか、>>>>>
それでは改めて、Trick or Treart? Mr Fukusuke2th?
わははははははははははは>>>>>>>>>>>>>


新アジト、、、飛び交う怒号と、録音テープの声らしいノイズまじりの垂れ流しの緊急報をBGMにして、なおも騒然としているそんな新アジトに私達は戻ってきた。奥まった一角にあるモニタールームから二世と由希さんらしい2人の話し声が聞こえてくる・・・あの爆発の中で彼らは生きていたのか?!

そのモニタールームには壁一面に設置されたモニターディスプレイの前のコントロールユニットに横座りしている二世と、肘掛け椅子に深く腰掛けて、寒いのだろうか?その肩口から全身を すっぽりと覆うようにして 毛布をかけている牧瀬由希の姿があった。彼らは生きていたのか!

二世
「しかし流石なもんだ、、、かつて、日本を震撼させたってのは、まんざら嘘じゃなかったな。、、、あの伝説が今蘇りつつある、、それも俺達をキッカケにしてって事か・・・。」(※1始まり)

由希
「それはそうですけど、データーによると【 怪人20面相 】って、かなりの高齢じゃないんですか。」

二世
「あれ?そうか。由希はまだ知らないのか。それじゃ、少し話しておいた
ほうがいいかな。」

由希
「はい、お願いします。あたしほとんど知りませんから。」

二世
「この「怪人20面相」っていうオヤジは、稀代の大怪盗でね。どんなに警備を厳重にしたって、狙った美術品なんかをアッサリ盗み出してしまうんで有名だったんだよ。おまけに正体不明、神出鬼没・・・警察の必死の捜査にも関わらず彼は最後まで捕まることはなかったんだ。」

由希
「で結局、その怪盗はどうなったんですか?」

二世
「ある時期から『明智小五郎』って名乗る探偵さんが現れてからは、いつもあと一
歩ってトコロで変装やシカケを見破られて苦渋を味わされてきたのさ。あれから数十年・・・噂によれば、彼は当時ですでに30歳を超えていたって話だしな、この間までは、現役うんぬん以前に生きてるのかどうかもわからなかったんだ。」(※1終り)

由希
「それがクローン技術の応用で、現代に復活・・・・ですか?」

二世
「ああ、あんまりにも夢みたいなんで俺も最初は信じられなかったんだが、、ここまで好き勝手されたら信じるしかないな・・・・あはははははははは、いやいや参った参った。わははははははははは」

由希
「突然笑い出したりして 二世?アタマ大丈夫ですか?まさか あの音波爆弾の影響で、、頭まで、、、とか?」

突然 高笑いを始めた二世に由希は、唖然として思わずそう口にした。だが由希の
心配をよそに二世は冷静だった。


二世
「そうじゃないさ、あんな爆発音だけの音波爆弾なんかじゃなんともないよ。そう
じゃない、俺はね、嬉しいんだよ。このやり方、このセンス、これこそ まさに本物
の怪人の手口であり、つまり俺達を一人前と認めての挑戦状って事だろう。」

由希
「なるほど、、それでそんなに はしゃいでるんだ。あと、一つ疑問があるんですけ
ど、、さっきから・・・・(じぃ〜)」

二世
「お?なんだい疑問って、、、どきっ!」

由希
「ふーん、そうやって呆けるんだ、、じゃ何ですか?その「どきっ!」って?
、、、疑問って言うのは、この(※1始まり〜終り)の中の私達のセリフなんですけど、、、このフィクション読んでくれてる人達、今頃デジャヴじゃないか?って悩んでると思うんですよ・・・二世、、、何か心当たりありません?(じぃ〜)」

二世
「え、、な、、そ、、それはだな、俺達の様な怪盗なら当然だろうが、、。」

由希
「はぁ?」

二世
「解らない奴だな、俺達はこの世に存在する素晴らしい物はすべて自分の物にしたいんだ。その法則にしたがえば「素晴らしい語彙」とか「秀作小説のセリフ」を借用するのは当然の事だろう。後は「京さん」にバレるか、バレないかの問題じゃないか。」

由希
「・・・そーやって開き直るかしら、、、要は京さんの【仮面狂死曲】にアップされてる最新作を見れば良いんですよね・・・・
http://www.oocities.org/disguise2001/
にサーフィンして・・・・ね。あっちの方が面白いわよ、きっと。」

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

音波爆弾・・・なるほど。あの金属製の箱はそんなカラクリだったのか!たしかに
敵の命を落とさずに音の衝撃波で敵の鼓膜を破り、精神的に戦意喪失させる手榴弾はあるが、あの箱はそれを応用した物だったとは・・・しかし・・・

しかし・・・変わった・・・あの(の)と知り合ってから、間違いなく作者の性格が変わった・・・良いのか?ここから どうやって緊張感を取りもどすつもりなんだ?

読者のそんな心配を よそに、誰かがやってきたようだ。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
カツン、コツン、カツン、コツン、カツッコツッカツッコツッ

コンコン


二世@?
「お!そんな事より戻って来たみたいだな。」

<?>
「ああ重たかったぁ、、ふうぅぅ2人とも御苦労様。どうやら無事だったようだね、2人とも。
それじゃっいいかね、MCを解くからね。、、、ハロウィンバンザイっ1,2,3っと!」

パシンパシン、バシン、、

二世→?
「はうあうぅぅぅぅぅ・・・けほんっこほ、、はぁい二世、おかえりなさぁい。お待ちしてましてよ。」

<?>→?!
「おや?、俺に化けていた由希の方は覚醒したって言うのに、二代目の奴、由希に変装したままで寝ちゃったよ、、あぁああ、、あんなにヨダレなんか垂らしてもう、、、。で?由希、どうだった?MC(マインドコントロール)の初体験のご感想は?」


突然入って来て変な事を始めたのは、少し理解に苦しむ取り合わせをした人物だった。
なぜなら その人物は、全身を厳しく拘束され、口には猿轡を嵌められた女性を肩に担いだ、制服姿の婦人警察官だったのだから・・・たが、そのくったくのない笑顔が室内をパッと明るくした。そして そこに輝く瞳はアジトのこんな惨状を見ても何の変化もない・・・いったい こいつはだれなんだ?

元二世→由希!
「はい二世。とっても良い勉強になりました。私の事、手下なんて思わないで、せいぜいモルモットにしてやってください。でも急がないと・・・。」


何だぁ?二世?、、だって二世は今、その部屋で由希と話していたじゃないか、いや落ち着いてよくよく観察してみれば、なぜ二世は今まで由希と話していたときの声ではなく、女性の、、牧瀬由希の声になっているのか?、、、簡単に想像出来るのは、今までの二世は、由希が変装したニセモノの二世だと言う事なのだが・・・いったいどうしてそんな ややっこしい事をしなくちゃならなかったんだ?

婦人警官に変装した二世は、由希に手伝ってもらいながら、床の上で大きな口を開けた大きな旅行カバンの中に、まるで物でもしまうようにして、その拘束されて身動き一つしない”女性”を詰め込みながら”由希”の質問に答えた。

二世
「うん、それじゃそろそろ仕込んじゃっおうか、、、ふぅ、、ヤッパリ女装させて
は、あっても中身が中味だから見掛けよりは重いわね。、、、」

由希
「ふうぅ〜本当ですねぇ、でもこっちはともかく、そこでMCされたままの二代目はどうします?個体差があるらしくって まだ覚醒してないんですけど。」

二代目、、どこに?・・・・・・ややこしい事になって来た・・・そのモニタールームにいるのは3人、、だが婦人警官姿の二世、二世に変装した牧瀬由希、、残っているのは、肘掛け椅子に深く腰掛けて、寒いのだろうか その肩口から全身をすっぽりと覆うように毛布をかけている牧瀬由希しかいないのだ・・・では、その由希は二代目の変装だというのか・・・又もや・・・なぜ?

二世
「う〜ん、二代目をMCから解凍してやるには、ちょっと時間がないから、しばらくそのままでいてもらいましょ。そのロープだけ切ってあげといてよ。逃出すのに精一杯で縛ったままなんだろ。」

二世は【由希に変装した二代目】の全身を包んでいた毛布を、取り払うとその言葉の通り、首から下をギッシリと縛り上げられた魅力的な女體が現れた。

由希
「はい、、20面相独特の縛り方らしくって、ここまで解くだけで精一杯だったんです。でもこうして2人が入れ替わっていなかったら、ワタシなんか今頃どうなっていた事か・・・」

二世
「たしかに二代目がMC、、マインドコントロールの話を持ち出した時にはどうしたのかと思ったけど、今思うと、こうしてなかったら奴に 何をされていたか解らなかっただろうな。恐らく初期洗脳でもされて、俺達の秘密は全部、聞き出されていただろう。さあてと、、、、例のお客様は、まだシステムルームにいるのかね?」

由希
「ええ、20面相の姿と居場所は、隠しカメラでチェックしてますけど、まだ何か探し物をしてるみたいです
わ。まぁ、今更 盗まれて困る物なんて何もおいてませんけど、私の姿に変装したままで、、って言うのが
薄気味悪いですわ。」

二世
「まあな、、でもあんな有名人物が変装してくれてるんだし、まぁ美人の宿命だと思って我慢してあげてよ。で?奴の手下は逮捕してあるんだよな。で?爆発音で、俺達が気絶したフリをしている間に、由希はちゃんと20面相の手下に誘拐してもらえたんだな?」

由希
「はい、お蔭様で、その旅行カバンに詰め込まれてちゃんと。ふふふふ。でも実際に詰め込まれたのはわたしじゃなくって、わたしに変装して身代わりになってくれた二代目さんでしたけど・・・」

二世
「何を物足りないような顔してんだい。それじゃ俺、そろそろ先に行くから。、、、、はああぁぁぁ、、しかし重たい旅行カバンだなぁ、、じゃあ そっちも予定通り よろしくね。」


由希
「解りました。」

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
それから数分後、婦人警官姿の二世は、新しいアジトの屋内駐車場で由希の
作戦車の後部席に あの大型の旅行カバンを突っ込み終わった所だった。

二世
「やれやれ、この由希の作戦車も、この一度使うだけでオシャカかい。こんな事なら前のアジトから持って来ておくんだったかな。」

ブロロロロロロウゥゥゥゥ、、チカッチカッ

由希
「お待たせしました二世。出動準備完了しました。」

2点滅のパッシングで静かに走り寄ってきたミニパトの運転席から、二世に声をかけた婦人警官の声は 由希そのものだった。2人が合流したその時、又もや警戒報が
新アジトに鳴り響いた。

>>>>>> Veeeeeeeee,,,Veeeeeeeee,,,Veeeeee
資料保管庫に侵入異常を確認!!!資料保管庫に侵入異常を確認!!!
警備センターは侵入者を逮捕せよ。。警備センターは、、、>>>>>>>>>>>

>>>>>> Veeeeeeeee,,,Veeeeeeeee,,,Veeeeee
モニタールームにおいて侵入者を逮捕!!!、、、、モニタールームにおいて侵入者を逮捕!!!>>>>>>>>>>>

二世
「そらパーティの始まりだぜ!20面相はもうすぐ ここに逃げてくる。、せっかくのハロウィンパーティだ。うんと派手に行くぞ。由希?気分はどうだ、緊張してるのか?」

由希
「そりゃ緊張してますよ、、、まさか、、、私が」

二世
「どうせいずれは、あのオッサンと出っくわすんなら早い方が良いさ。さぁ、もう時間がない。先回りして罠を仕掛けるんだ!」

ドジョン、ガズガガガッン

由希
「きゃっ!」

そう言って由希をはげます 二世もまた、内心では緊張していたのだろう、いつもなら考えられない、歩道の段差を乗り越えての出動にミニパトは凄まじい衝撃におそわれた。そのあまりのショックに由希は思わず運転している二世の腕にしがみついていた。

**********************************************************
ハローウィンのネズミ捕り

アジトを出た二世と由希は、20面相が奪った由希の作戦車発信電波から、その逃走経路を分析して先回りすると、ミニパトを路肩に隠れるように停車させた。そのミニパトは誰が見ても、ネズミ捕りの為に待機しているようにしか見えない。
 
由希
「彼の行動パターンだと、もう少しでここを通過する筈なんですけどねえ・・・まさか」
 
そうつぶやいた由希の目の前の交差点を、一台の見慣れた車が走り抜けた。
二世は由希に軽くウインクを送って軽く微笑んだ。

二世
「なあ、由希・・・ツキは俺達に回ってるんだと思うだろ。」

由希
「ほんと、ついてますね」

パトランプを明滅させながら、ミニパトは本線へと躍り出た。車線上をショートカットされた輸送トラックがハンドルを切りそこねて横転しそうになった程、対向車線の逆走など、なんとも思ってない二世の運転は無謀そのものだった

二世
「よーし、このリズムだ。由希! Trick or Treart? 」
 
由希
「はいっTrick or Treart? 」

その二世の声を合図にパトカーの拡声器が 咆哮した。

由希
【前を走る乗用車の運転手さん!左に寄って止まりなさい!!!前を走る乗用車の運転手さん!左に寄って止まりなさい!!!】

二世
「よーしよし、良い子だ。大人しくそうすればいいんだよ。さぁ由希、いっちょ遊んであげてこい。」

ごくりっ、、、緊張に青ざめる由希の表情はフェイスマスクの上からでは解りようがない。だがここで尻込みするつもりなど由希にはなかった。

ツカ、ツカツカツ・・・

由希
【あの横断歩道に歩行者がいましたでしょう。歩行者横断妨害なんですよねぇ、、
免許証を、それから車検証も拝見出来ますか!】

パトカーから降りてテキパキとした口調で運転席の由希にそう指示する婦人警官が実は、スポーツバッグの中に閉じ込めて誘拐しようとしている「牧瀬由希」本人だとは夢にも思わない「伝説の怪盗」は素直に、その婦警の指示に従っている。

誰に送信している訳でもない通信機とのニセの会話でさんざん「伝説の怪人」をからかってから解放してやった二世と由希は脱兎の如くに、それこそ猛スピードで
走り去る、その車を見送りながら

二世
「ああぁぁ 面白かったねぇ、、さてと、私達も急がなくちゃね。二代目が首を長く
して待ってるだろうし。せっかくアンドロイトまで提供してくれたんだしな。」

由希
「はい、総仕上げまでに時間もありませんし、やっぱり感動のラストシーンは3人で観たいですからね。ふふふふふ」
 
二人はミニパトのサイレンのスイッチを入れると、思いきり深くアクセルを踏んだ。ミニパトの後輪がゴムの焦げる匂いと煙を立ててスピンし、ミニパトは猛ダッシュで新アジトへ戻っていった。

**********************************************************
2人が戻ったアジトでは、二代目が用意しておいたらしい、ハローウィンの定番、
顔のカタチにくり貫いたカボチャを室内に飾って、モニターの前に陣取っていた。

二代目
「さてとみんな?飲み物も行き渡ったかな・・・それじゃ、そろそろいこうか?」

由希
「はい、ジャストタイミングだと思います。それじゃいきます!Trick or Treart? 」

二代目・二世・由希
「 Trick or Treart?ノイズ送信スタートっ!

ピッン、、

<んっ…んあぁ…はぁんん…いくっ…あ、はあぁぁぁーっ!!。>

獣の絶叫に似た淫靡な叫び声が、新アジトに響いた。だがこれと同じ叫びを
何の前触れも予告もなく、聞かされた人物が1人だけいた。

<はぁん…いゃん……もっと…もっと…お願い…ああんっ…
ああっ、いいっ…20面相さん…いき…いきそう…いやぁぁぁぁぁぁ!!!>

【な、なんだ、、その声は,、猿轡が外れたのか、、いや違う!そうじゃない!】

旅行カバンの中から漏れ始めた淫靡を誘う声は、二代目の力作アンドロイドの内蔵マイクから聞こえてくるものだったが、 20面相 は興奮などではなく緊張し戦慄した。

<はあぁっ…はあぁっ…はあぁっ…20面相……はあぁん!!いいっ!>

<うふっ……んっ。…いく…いきそうなの…Hei Boys! Trick or Treart?般若ぁ、波羅ぁ密ぃ多ぁ心、色即是空、空即是色、、

【こ、、これは、、たしか、いや間違いない、、この読経の声は、、、】

、、般若ぁ、波羅ぁ密ぃ多ぁ心、色即是空、空即是色、、、、>>>>>>ギャーテー
ギャーテーハーラギャーテハラソーギャーテーボージソワカァ、はあぁぁぁん!
!、、、、
Hei! Trick or Treart?7,,6,,5,,4,,,Trick
or Treart?,,>

【な・・なんだと!おい。そのカウントダウンは、、ま、、まさか!】

ボガッドゴオウゥゥゥウウンンン
ズドゴゴコウゥゥゥゥウウウンンンンン

夕暮れの丘を一直線に抜けるフリーウエイに轟き渡った時ならぬ爆発音は、そこから数キロを離れたアジトの反響モニターにも伝わって来た。

アンドロイドに仕掛けられた時限爆弾から、かの伝説の怪人20面相は はたして
逃げ延びる事は出来たのであろうか・・・

ひとつ闇を抜けたら 又もや闇、、、
彼らは今、新しい戦いの始まりを歴史に刻み始めたのか。

<伝説との攻防戦:U編ハローウィンの花火>
<完>

【前へ】  【続く】
【戻る】