<出でよ 人形遣い>7(地獄のニンフ:笑うマネキン人形)
by 福助二世




正直なところ、牧瀬少年は疲れきっていた。それは この特訓にではなく、彼/彼女
哀しいまでに純真、愛おしさすら感じる一途。そんな少年の無垢の心は、これまで
生きてきた現実世界に横たわる、「悪しき常識」と言う名の大蛇の牙によって、ズタズタに切り裂かれていたのかも知れない・・・

「苦しまない死」と「長寿」。そのどちらかを選べと言われたら、躊躇わずに前者を選ぶ、やがて年老いて「悪しき常識」の重圧に萎むかも知れぬ、心の老いの醜さを衆人にさらけ出して生きるよりも「無垢の美しい心と共に死のう」・・・そんな少年なりの目標と覚悟を持ってここまで生きてきたのだ。

・・・「思い残す事は無い」と言えば、それは嘘になる。だが子供の頃からの願望と野望を叶える術を見つける事が出来なかった今、牧瀬少年は、いよいよその時期が来たように感じていた。

ちょうど そんな時だった。 怪人福助の流れをくみ 帝都を震撼させていた福助軍団
と牧瀬少年が出会ったのは。しかもその福助二世は、牧瀬少年が一旦は諦めて、手放しかけた幼い頃からの「願望」と「野望」を実現できると言う【妖魔の奸計】を手土産に現れたのだ。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
我は待つ、共に歩んでくれる事を。
我に唯一盗めぬ もの、それはMの笑顔なり。
顔は盗めても、Mのその心、今だ 我が手に触れず。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

牧瀬少年がルージュによって、偶然見つけたメッセージ。
それは牧瀬少年の勘違いなのか?
それとも?

だが まごう事無き現実として
牧瀬少年が確実に手に入れた物があった。
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宛:由希

柏木奈々緒が新たに開発した人工被膜の情報を奪取せよ。
ある事件が元になり、傷心の上、自暴自棄となり不良化した
女子生徒に変装し、まずリックに接近せよ。

なお、柏木奈々緒は かなり手強いので返り討ちに会い
どのような辱めを受ける事になっても当方は 関知しない。

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その真偽を問おうとするなら、いいや、もし願うならその命を奪い去る事すら今の牧瀬少年にはたやすい事なのだ。なぜなら当の二世は今、疲労困憊を詰め込んだ その肉体と生命、、つまりは生殺与奪の全権を牧瀬少年の心の中に住む、由希に委ねきっていた。

相棒の二代目が、二世のその姿を目撃したら何と言うだろう、少年の膝をマクラに文字どおり爆睡の渦中にある二世からは、何の殺気も警戒心も発っしておらず、その寝息を聞かなければ、死んでいるのではないかとさえ見えたのだから。


牧瀬少年は、従姉妹の由希の心になって、そんな二世の寝姿を支えながら、誰にも聞こえないように、本当に小声で二世にささやいていた。


{いくぢなし・・・・でも、、、どうか、どうかご無理をなさいませぬよう、、、由希の為にも、、お願いいたします。}

その虫の音にさえ掻き消されるような 自身のささやきは 牧瀬少年の中の由希を
少しだけ大胆にした。

{それに・・・女性の「夜更かし」は、お肌に悪いのでございますよ。ふふっ}


VEeeeeee、、、VEeeeeee、、、VEeeeeeee、、、

警戒解除、、、警戒解除、、、警戒解除
現在、、本館地下駐車場に向うパトカーは二代目の作戦車、、警戒中のスタッフは
そのままの位置で二代目の支援警護にあたれ、、、


2人の束の間の逢瀬は、不粋な警戒報によって、瞬間に泡沫して消え去った。恐らくはその施設が完成して機能し始めた当時からのスタッフでさえ、初の体験だったその最上級警備ランクにシフトされた警備体制に面食らったのは、仮眠から目覚めたスタッフだけではなかった。

事もあろうに、まっさきにそのエジキとなったのは、やりたい放題の二世の後始末をしてへとへとになって戻ってきた「二代目」だった。前照灯のランプを煌煌と輝かせた県警のパトカーの先導でトレーラーがゲート前に停車した。警備スタッフはそれが二代目と手下達による変装だと解ってはいても、すでに警備システムはトップレベルに変更されているのだ。警備部の勝手な判断で通過させる訳にはいかない。


『 ご苦労様です。こちらの保養所にお越しですか?警察手帳を拝見します。』

「あぁ?おいおい、何の冗談だい。俺だぞ。俺!」

『当方の職員でしたらIDカードを確認します。規則ですので、ご協力下さい。』
(すみません、、二世からの通達で、、、)

「ふうぅ、解った解った、、厳しくて当たり前なんだからな、、ほれ。」
(何があったんだい?突然こんな)

『申し訳ありませんが、このIDは期限が切れております。【絶否扱い】ではないと思いますが、念の為、リアルチェックに ご協力いただけますか?』

「そんなものにも期限があったな、すっかり忘れていたよ、、、良いとも。」

頭を掻きながら「パトカー仕様」に偽装した作戦車から降りた二代目は、婦人警官のコスチュームのままで、警備詰め所の横にあるキャッシュディスペンサーによく似たBOXに入っていった。

『それでは、指紋・掌紋の照合をいたします。手指の「指掌紋コーティングを洗浄します。』


『声紋の照合をいたします。「ボイスチェンジ機能」を休止して、肉声でマイクに何か話かけてください。』

正面ゲートの警備詰め所は、ちょっとした出入国管理事務所のような有り様となっ
た。だが警備スタッフの直接検査とは別に、無言でその一部始終を監視しているカメラの向こうでも、その慌ただしさは何の変わりなかった。


<≪<入場者の「頭部輪郭骨格」及び「鼻梁・外耳殻」チェック完了!・・・二代目と認める・・・>≫>

<≪<レーダーアイ、入場者の網膜照合を実行中!・・・確認完了・・・二代目と合致・・・>≫>

<※<ゲートのパトカーに危険物・爆発物なし。【県警仕様の作戦車】と確認・二代目の作戦中と認める・・・>※>

<※<パトカーに続くトランスポーターは現地調達による作戦支援車両と確認、荷台には大破した二世の私用車両と実験器材のみ・・・チェック完了!・・・二代目の作戦中と認める・・・>※>


その警備システムと連動した 車両監視カメラは、人間のみではなく、外見からは解
らない乗って来た車両の隅々まで、瞬時に調査していた。今やユニフォームの下に火器を携帯した警備スタッフ達は、ボディチェックを受ける客に不審な点が発見された場合、現場の判断で不審者の逃亡や反撃を阻止する権利を託されていたのだ。

二代目は出かける時とは打って変わった厳重な身分照会にうんざりしながらも、理由が理由だけに怒る訳にもいかず、悪い事に「IDパス」の有効期限が失効していた為に、結局 普段なら5分もかからない地下駐車場にたどり着くまでに50分以上もかかっていた。

だが、二代目はそんな緊張感に包まれた施設の雰囲気を、けして嫌いではなかった。それは彼もまた、極めて勝れた能力を有する 「人材集団」の長であり、今現在も、その立場にふさわしい活躍をしているものだけが持つ心理なのかも知れない。


「なぁ二世、さすがに「LTDシステム」に自動追尾されるってのは良い気分じゃない
なぁ、可哀相に現場の片づけをしてきた連中は、まだ第二ゲートで足止めを食らってるぜ。」


「ん?ああ、、だが こんな緊張感もタマには刺激になって良いんじゃないか、サラ
リーマン気分の新兵さん達には良い薬だよ。それより二代目、、例の、、、」

「安心しろ、あれは昨日の夜中、二世がこのアジトに帰り着く少し前に搬入してあ
る。少しハイスピードだったかも知れんが彼女もかなり頑張っているからご褒美だ
な。」

「ご褒美か・・・・(そうだったら良いんだがな・・・・)いっその事、今回は俺が・・・」

{そんなの嫌です。わたしにやらせて下さい。わたしなら この通り元気いっぱいで
す!}


ちょっと長めのえんじ色のスカート。バックラインには大きめのスリットが入り、声の少女、が組んでいたその脚を解いて二世に抗議した瞬間、そこからはガーターベルトの先端とストッキングに包まれたセクシーな脚線が顔をのぞかせた。

「ん?なんだ、もう起きたのか、、俺達は第三当直にシフトしてあるんだから、まだ仮眠していて良かったんだぞ。」

{わたしなら この通り元気いっぱいです!}

「ふーん、なら別にかまわんが、、、」

{え、、二世、、なにか?}

「女性の寝不足だか「夜更かし」は、お肌に悪いんじゃないのかい。ふふふふふ」

{!、え!、、、に、、二世?、、あ、あの時の、、起きてたんですか?!、知りませんっ、}

やれやれ二世も人が悪い。、顔を真っ赤にして しどろもどろになって、戸口の方に
逃げ去ろうとする由希の脚は、シームの入ったストッキングが彩りを加え、それを見る者を、その美しい脚線の虜にするだろう美しいラインで カモシカの様にくびれ、踏み出す一歩が作り出すアキレス腱のうねりも、とても美しかった。

<<<ピキュ、チチチ、、掌紋ヲ確認シマス、、、、チチチチチ、、、牧瀬由希ト確認シマシタ>>>


照れ隠しに部屋から飛び出そうとした由希の、2人の福助見習いに背を向けて、のんびりしたシステムドアの手順に地団太を踏む仕種は、鋭利な刃物を連想させる高く鋭いヒールの先端と足首との美のコントラストが綾なす成度の高い彫刻のような その気品をカツコツと独特の靴音とミックスさせて室内に発散させていた。

<<<・・・ろっく解除シマス、、、>>>
チュキユュュ、、パシュ、ロロロロロロロロ

由希はそんな均整の取れた脚の脹ら脛に可愛い筋肉の張りを作りながら、ハイヒール独特の足音と妖しいオーラを振りまきながら 顔を真っ赤にしてその部屋から逃出していた。事情を知らない二代目は その美しい姿に引き込まれながら、ただポカンとして眺めている。

緊張の中の束の間の弛緩、それは彼らにとってなによりの癒しであり、成功を約束する余裕のひとときでもあったのだ。

それから数時間後、場所はさっきとは別な・しかし なんだ?この部屋の有り様は?

そこは片方だけを見れば研究室のようでもあり、もう片側を見るなら、、そう、、これは、まるで蝋人形か何かの展示場のような・・・とにかくそんな部屋で、二世は二代目の収集してきたデーターを元にして、準備にかかっていた。今、二世は、牧瀬少年を別人の女性に変える為のもものであり、その女性は、牧瀬少年が通う学校に関係ある人物のものだった。


<<<ピキュ、チチチ、、掌紋ヲ確認シマス、、、、チチチチチ、、、牧瀬由希:本人ト確認シマシタ>>>


アラームボイスが仮眠から覚めた由希の到着を告げた。緊急警備システムが作動している現在、どの部署のどの出入り口も、このIDチェックを受けなくては出る事も入る事も出来ない、、。

<<<ろっく解除シマス、、、>>>
チュキユュュ、、パシュ、ロロロロロロロロ


「おはようございます。お待たせしましたか?」

「やれやれ、姫君のお目覚めかね。それじゃ始めるかな。なにしろ

≪女性の寝不足だか夜更かしは、お肌に悪い≫そうだからね。

二代目、それじゃ頼む。なにしろこれは俺達の存在を左右するBigプロジェクトなんだからね。それじゃスーツの再定着から始めるからな、先に定着液のシャワーを浴びてくれ。」


はて、、二世は こんな人間だったのか?由希は 裏表のない、だがそうそう誰にでも言える事でもない、ただ心中を素直につぶやいただけなのに、それを今だに揶揄して喜んでいる、、、、よほど疲れているのか、二世は どこか別人のような印象を見せた。

・・・当の由希は、すでに達観してしまったのか、二世のそんな嫌味に何の反応もせず、ただ軽く呻づくと、その部屋の隅に設置してあるシャワールームに
入っていった。

全裸になってシャワーユニットの中に立つ、牧瀬少年の体躯からは 男性を感じさせるものはなにもなく、そこには、少女 「由希」以外の誰もいなかった。


二世
「それじゃスタートする。初期洗浄は5分、定着液のシャワーは7分ずつ3回
、、」


二代目
「おいおい二世、先日打ち合わせたばかりじゃないか。しっかりしてくれよな。」

さらに二代目
「ああ、牧瀬くん、、今回は頭毛部の再定着も行うので、定着液シャワー10分を3回にする。、、その後 安定に3分、ああ、牧瀬くん、その間の呼吸は酸素ダクトからすれば良いが出来るだけ軽くだぞ。深呼吸は今のうちにしておいてくれ。じゃ始める、機密ドア閉鎖、スタート!」


ツゥイッウュッウッウウウウウウウウウウウウ

美しいプロポーションをモールドされた女體には一糸も纏わぬ由希の姿が、巨大な透明アクリルの水槽のような容器の中で、軽い振動音とともに次第に霞み始めた。洗浄シャワーの微粒水が噴射され始めたのだ。

まるで蒸されているようにしか見えないだろう、そのシャワーは、だがそれを肌に受け止める本人にとっては、かなりの高圧で全身を針のように叩き付けていたのである。

二代目
「洗浄終了、圧気乾燥の後、定着液シャワー噴射、シャワーグラスを付けなさい。」

洗浄後、3回に分けて行われた定着シャワーの噴霧、その度に由希の全身は分厚い
白、、乳白色、、、淡いピンクの霧に包まれていく、、、やがて40分程の時間を経て、シャワーユニットから出て来た由希は、それまでとは どこか違う雰囲気を全身にたたえて、柔らかい女性の体臭すら立ち昇っているようでさえあった。


パンティとパンティストッキングに包まれた彼女の下半身は裸体よりも妖しくて美しい・・・細い腰の上にパンティストッキングのゴムの部分が走り、コケテッシュなパンティに包まれた格好の良い白桃を連想させる尻が奇麗な曲線を描いている。そこから続く長く格好の良い脚にはシャラシャラと輝きの流れを絶やさないパンティストッキングをまとった脚・・・二世は一瞬、我を忘れたかのように由希の脚を暫く眺めた。

二世
「こりゃすごいぞ!最高にセクシーだ。」

その言葉を、もしも由希が聞いていたら不思議な気がしたかもしれない。たった一人の人間との出会いが元になって、1人の少年の全人格が剥奪され、その人生か左右されていく。こんなにも簡単に女性の女體を手に入れる事ができるなんて。それに、まるで初めて自分の裸体を見るような二世のハシャギっぷりったら、、、彼女は心の中で薄い笑みを浮かべているかもしれない。

二代目
「ああ、由希さん。ブラジャーを着けたらそこの椅子に横になってくれ。」

なめらかで柔らかい線をもつ女の体型に変わっている牧瀬少年は、こちらに背中を向けてブラジャーのホックを留める所を見せ付けると、ゆっくりと振り返っって、にこっと笑った。そこにはもう10代のシャープな男の子の肢体も姿も、微塵もなくなっている・・・・


由希は気だるさを隠そうともせずに用意された椅子に腰掛けた。それは自分以外の人間に長期間の特殊メイクを施すに際して使用する、どう説明すればよかろうか・・・ちょうど床屋と歯医者の椅子のような肘掛けとヘッドレス付きの可倒式の物、、とでも言うべきか・・・ただ違うのは、その椅子が設置されている場所が、怪人のアジトにある事だろうか?

マッドサイエンストの実験室と女体ばかり陳列された蝋人形の館、、そんな異質の両極を混在する部屋の、ちょうど、ど真ん中にその椅子は置かれていた。

歯の治療でも受けるような姿勢で由希が、その椅子に横たわると、二世達はさっそく準備にかかった。牧瀬少年の顔が、分割写真でも見ているように、リアルスキンで別人の女性の顔に変わっていく。その女性の顔は、由希が牧瀬少年として通う学校の「校医」、「岸田まなみ」のものだった。

椅子の置かれた位置の関係で、由希の視界には青白く微笑む「蝋人形」を従えた二世と二代目の姿しか見えない。だが、そんな闇を背景にした世界に住む資格が自分自身にもあり、そして すでに慣れている事に由希はまだ 気が付いていなかったのだが、彼ら、2人の二世にしてみたらどこまでも真剣に食い付いてくる由希の一生懸命は微笑ましくさえ映り、その顔を満足そうに眺めていた。

「さてと、、そろそろ仕上げにかかろうか。」
 
二代目はそう言うと どこかのスイッチを入れたらしく軽いモーター音が室内に響
き、由希の身体はさらに後に倒れた。
 
「由希、今日は少し手間を掛けるからな。そのままじゃフェイスパテで服が汚れるから、こいつをかけておくぞ。ほら、口も開けるんだ。」
 
二世は言うよりも早く 由希の顔に、顔頭部手術に使用する透明なビニール性のお面
のような物を被せた。

椅子に横たわった由希は、なんの疑いもなく口を開けてそのお面を受けとめた。
 と、次の瞬間、その口の中にも、何か柔らかい物が乱暴に突っ込まれ

「ふぁぐっ!」


カシャ、ガキュ、、カシャカシャ、ガキュガキュ
キキン、カシャ、ガキュン、、、、、テキュウゥゥン


それは乱暴に押し込まれた。
ただ反射的に、、、そう、、それは抵抗ではなかったが、、乱暴に突っ込まれた柔らかい何かを振り払おうとした由希の手首に冷たい金属の感触が伝わり、そのまま彼女の手首にギッチリと食い込んでいた。足首にも同じように堅く冷たい金属の感触が走った時には由希の四肢すべてに、椅子から飛び出した鉄の爪のような枷が嵌められていのだ。


二世
「何もそんなに慌てる事はなかろう。その椅子の性能は研修で、とっくに体験済み
だったよな、、、と、言う事は、、大人しくした方が痛い思いをしないと言う事ぐらい解ってるな。」

由希
「こ、、これは、な、なんの訓練、なんですか?、、、」

二代目
「こりゃ失礼、いかに手足を拘束しても、そんなに声が出てしまっては何もならないね。ま少しだけ猿轡は我慢してもらわんとな。その口孔内パッドは喋るには差し支えないと思うんだが・・・」

二世
「なあ、由希?まだ喋れるうちに、ひとつ質問するが「聖母マリア」っておばちゃんは処女だったと思うかね?」

由希
「え?「聖母マリア」?、、、私の答えはNO、、いいえ、それ以前に、この世に、神など存在しないと私は思っていますけど。」

二世
「ははははは、、、それでこそ我々の仲間だ。人間は精子と卵子の結合と細胞分裂、器官形成って言う、生物学的な遺伝子の接触以外で生まれる事は100%ありえない。ましてや「神」「仏」などと言う まやかしなど、語るも惜しい・・・・」

二代目
「たしかにな、処女光臨など後世の人間がつけた商業用のPRプロットでしかないんだしな。こうして変身するようになって感じたことがあるんだがね。それは俺達は死ぬまで「1人の人間」としてだけ存在するのは不可である事さ、そんな人生、考えただけでゾッとするよ。なぁ」

二世
「ああ、ただ単純に産れた時からの「人貌」だけを後生大事に守るだけだなんて・・・そんなのは色々な解ったような言葉で「思想した」と見せかけてるか、宗教かなんかを悟りきったフリをしているだけに過ぎない、、、俺達は、そんな陳腐を正当化する事の限界を認めたくない臆病者とオサラバしただけの事さ。」

由希
「じゃあ、、?1人の人間としてだけ生きる事が出来ない私達は人間じゃないんですか?、、、ねぇ、二世?、」

二世
「残念だけど、、、、、俺達には解らないな、、、、だが、、僕に解る事は一つだけある、、、」

そう云いながら 由希の耳元で小さく呟いた、

二世
「俺達は、、同じ世界に生きる「いきもの」だって事さ。」

二代目
「ああ俺も二世と同じ事を感じた、、、だから二代目を受けたんだ。」

二世
「さてと、、最終試験に入るぜ。もう試験終了まで喋ってもらう必要はない。」

由希
「え!?試験って?ぶふっむむふんんうううう!?」
 
由希の叫びは途中から口に布を押し込まれた布とその上から嵌められた猿轡の為に、妖獣の呻き声に変わっていた。
 
「むむっ!ふむむっ!むむううっ!」

彼女は凄い力でユニット椅子の上でもがいたが、それは逆に両手足の拘束による反動で自分の女體をその椅子に押し付けるだけだった。椅子に寝転んだ姿勢のままで両脚をばたつかせる彼女は意識していない分、かえってセクシーな姿に写っている。

「むむっ!ふむむっ!むむううっ!」

「ははははっ、この猿轡の威力は流石だね。何を言っているのか全然わからんな。わははははは」

「うっ!!!ふぁぐ?ふぉっ!???ふふっ゛」

まったく体の自由がきかない由希は嵌められた猿轡の奥から必死に懇願したつもりだったが、それが明らかな肉声にならない事は彼女自身、充分に解っている筈だった。


「むむっ!ふむむっ!むむううっ!」


「ふふっ、確かに何を言ってんのか、さっぱりわからないよ。でも良い声じゃない
か」

手足に食い込む金属の枷の痛みに不覚にも涙を流して必死に体をもがかせた由希だったが二世はそんな彼女をしり目に着ている服を脱ぎだした。トランクス一枚になる。勃起している、二世は明らかに性的に興奮している。

その視界を真っ黒な布によって目隠しをされてしまう直前、、、それが牧瀬少年が唯一知る事が出来た二世の本能の証だった。

「それにしても二代目、、せっかくの最終試験もこんな場所じゃ興ざめだな。」

「たしかにな、、そうだ二世、、警備スタッフの中には、どうも彼女に惚れている奴もいるみたいだぞ。」

「ふーん、外出は規制してないんだし、街に出たらどうにでも処理出来そうなもんだがな。それじゃ ひとつサービスしてやるとするか。面倒だが俺達も変身してな・・・」

「ははははは、、又なんか悪戯を考えたみたいだな、、良い暇つぶしだ。俺はどうしたら良いのかな?」

2人の福助は冷たく笑いながら何かの準備を始めた。どのくらい時間が経っているのか、すでに由希にはどうでもよくなっている。目隠しが作り出した暗闇の中で、椅子の拘束から、両腕と胸を拘束するその呼吸を苦しくさせる程の厳しい縛りに変わっていくのも、すべて自分の女體で感じるしかなかった。身悶えして かすかに足を動かすと、まだ解放されていない金属の足枷が由希の足首に噛み付いた。

だが、そんな拘束以上に由希の呼吸を苦しくさせるのが新しい猿轡だった。

最初の猿轡が解かれるとすぐに、深呼吸する間もなく由希の口には極めの細かい布が口いっぱいに詰めこまれ、その上から大きなテープで塞がれた、それだけではなく唯一、呼吸できる鼻腔には・・・・

「由希?、、いくら自分専用の部屋だからって穿き替えたパンティとかパンティス
トッキングはキチンとしておかないとな。お前の口の中に詰めたのは昨日まで穿いていた自分のパンティストッキングだからな。お前は喜んでしまうんだろうが、本当はオシオキなんだぞ!パンティは、、ここに、、だ!」


唯一呼吸できる鼻腔には・・・・その上から由希自身の使用済みのパンティーを押し付けてしまった。二世は ご丁寧にも、布の厚い股布のシミの部分をわざわざ裏返して鼻腔に押し付け、その部分をしっかりと覆う様に手拭で蔽う猿轡をしっかりと嵌めてしまう。

一見しただけでは、鼻と口を手拭が覆っている テレビや映画などでも良く観るあり
きたりの猿轡だが、その実体はすでに由希は呼吸をするのも やっとの状態なのだ。

すでに足枷も解除され、後ろ手に厳しく拘束された縄尻は、新たに由希の首に嵌められた首輪に一度連結されてから、さらに首輪から伸びてユニット椅子の肘掛けに結ばれている。たったそれだけの事で、すでに由希は 低いうめき声と呼吸に入り交じらせるのが精一杯の状態で どうする事もできず、目隠しの暗闇の中に監禁されていた。


やっと彼女に変化が訪れたのは、それからどのくらいの時間が過ぎた頃だったのか、あるいは、ほとんど経っていなかったのかも知れない、、、その眼隠しが外された瞬間、由希は、まぶしい光に目を細めながら自分を見つめる、刺すような冷たい視線を受け止めていた。

冷たい氷色の瞳は、その心の冷酷を物語っているのだろうか、その視線の持ち主の顔は、、、、顔は、、、なんと牧瀬由希 本人ではないか!?、、それが二代目の変装か、それとも二世の?、、どちらにせよ、本物の筈の由希はその視線に耐え切れずに視線をそらしてしまった。


「なにを考えていたの?そんな恰好で?・・・恥ずかしいの?」

「む、ふむん!くふふふううん、、ふっふん!」

「解った解った、、、でも、いくら室内とは言っても、裸足じゃしょうがないわ
ね、、、、」


由希の顔で、由希の声で、そう独り言のように言いながら下着姿の由希の足に異様にヒールの高いブーツを由希の脚に履かせるのは、もう1人の牧瀬由希・・・ブーツの足首のストラップに、まるでアクセサリーの様についている小さな錠に鍵をかけてしまった。


「これで今履いているブーツは勝手には脱げないわよ。本当のプラットホーム・ハイヒールブーツだったら自分で立つ事も歩く事も出来なくなるんだけどね、ふふふ、ふ。さてと・・・これで散歩もOKね、さぁてと、、あ!オナペットの散歩には首輪と手綱が必要だったわよね。ちょっと、そのままにしているのよ。行くわよ、「岸田まなみ」さん!」

そう、、すでに牧瀬由希の顔は、その顔は、由希が牧瀬少年として通う学校の「校
医」、「岸田まなみ」の顔になっているのだ。ニセモノ牧瀬は「岸田まなみ」に強制変装させられた股間にしゃがみ込むと、とんでもない事を始めていた。・・・・だが今の由希にはそれを拒む事は出来ない、、、否、、、、たとえその場だけ、それを拒絶する事は出来たとしても、それが最後なのだ・・・・・もう、、後はなくなる・・・・


「岸田まなみ」の顔にされて、プラットホーム・ハイヒールと呼ばれるらしいそのロングブーツを履いて立ちつくすだけの由希は堅く眼を閉じて、それを受けとめるしか術はない。

皮肉にも自ら堅く眼を閉じることで、作り出した暗闇の中で、由希は自分の下半身を這い回る指の感触をさらに増幅させてしまっていた。

穿いたばかりのパンティとパンティストッキングが膝の途中まで引き降ろされ、スキンドールの下半身にリアルに刻印された女性自身が露わになる・・・見られているであろう、その秘丘の若草をかき分けてむき出しにされるクレバス・・・そこに這い回る 暖かい指の感触がクレバスの奥に差し込こまれ、何かをつまみ出した?

それは牧瀬と言う少年としての証であり、由希には不要の「性」のパスポート
・・・

「恥ずかしいって言ってる奴が、これはなんなの?こっちに良く、こっちに出してみなさい!」

あまりの恥ずかしさに、思わず腰を退いてしまった由希の下半身は、その少年の先端に食い付くような痛みと違和感にしゃがみ込みそうになった。由希は そのあまりの痛さに、猿轡の下から叫んだが、それは微かな呻き声にしかならず、ニセモノ由希は冷たい瞳で笑うだけだった。

「くっ!ふうぅ、、ぅ、、、」

「いやだぁ、なによ、そんな鼻声で甘えたりして、、そんなに嬉しいの?」

元に戻されたパンティに さっそく恥ずかしい染みが浮ぶ、女體をくねらせて耐えて
いるのは苦痛だけではなかった。猿轡から漏れる呻き声とそんな媚態を見て喜ぶニセモノの由希。

「仮にもここは神聖な職場なんですからね、そんな声出すんじゃないのよ。ふふふ
ふ」

うつむく由希僕の髪を掴み、顔を上げさせながら耳元でそう ささやくニセモノ
牧瀬。

「ほら、顔を上げなさい、そしたらさっさと立って!」

「・・・むんっ・・・うむんっっ・・・」

「はい、できあがり、どう アタシが考えた お散歩用の首輪?滑稽でしょ、あははははは」

その軽蔑した笑い声に眼を開けるまでもなく、由希は自分がどうされているかを充分に身体で理解していた。、、、、自分の恥ずかしい部分の先端にグルグルと巻きつけて縛られた細い紐の感触にどうしていいのかわからないでいる、、、、、そんな由希をさらに羞恥の沼に叩き落とすのに、軽蔑のこもった笑い声は充分過ぎた。

ニセモノ牧瀬はなんと言う事か!由希が自分の肉体で最も自覚したくない部分、、男性器の先端を細い紐で巻いて縛ると、余ったその縄尻を手綱のようにして手にしているのだ。

何処までが試験で、どこまでが趣味なのか、冷たい瞳からは読み取る事が出来ない。でも自分が自分らしく生き残る為に、この試練には絶対に服従するしかない、、そう、、それはたとえ、たどり着く先が・・・望んだ欲望が 死と隣り合わせた世界だとしても、、、由希は、すべての常識を押し流そうとするかのように羞恥の涙を流しつづけた。


「さぁてと、それじゃいよいよ お散歩に出かけましょうか。はい、道に迷わないよ
うにちゃんと手綱で引っ張ってあげますからね。「岸田まなみ」さん、行・く・わ・よ・・・・」

そう言われた由希は、岸田まなみの顔にされて、わずかな下着にブーツ、上半身緊縛と猿轡姿のまま廊下へと連れ出されていた。否応無しにニセモノ牧瀬の淫猥な手綱に曳かれて妖魔の世界へ向って一歩一歩進む事は、由希のなかでとっくに捨てた筈の道徳、羞恥心や常識と言う思考の全てが壊れていった瞬間ではなかったのだろうか。


カツ、コツ、カツ、コツ
カツン、、コツン、カツン、、コツン


カッカッカッカッカッ
警備A『 誰か!?』
警備B『そこで止まれっ!!』

「ご苦労様、どうかしましたか?警備システムの変更だけにしては、2人一組でのパトロールだなんて、やけにピリピリしているみたいですけど?」

警備A『あ、これはマキセチーフ、実は、昨晩、、』
警備B『この施設に侵入者がありまして・・・失礼ですがIDチェックにご協力下さい!』

「まぁ大変!よろしいですよ。どうぞ IDを 確認して下さいな。それからこっちは私が収集してきた献体です。献体コードのIDは、この書類を。、、でも、呆れちゃうでしょ。こんな可愛い顔をしていながら嫌らしいでしょう、玩具の両頭ゴムペニスの片方を自分のヴァギナに突っ込んで、もう片方をこんな事をされているのを他人に見せなくては何も反応しない、、淫乱になってしまっているの、、信じられないわよね。」

警備A
『は、はあぁ、そんな変態が現実におるんですなぁ。ですが、そのペニスが本物で
ないだけましじゃありませんか。』

「ぷっ、くっふふふふふふ、、それもそうよね。ぷっふふふ、このペニスが本物だとしたらアタシなんか恥ずかしくってその場で自殺してしまうわね、、ふふふふふ」

警備B『申し訳ありません、IDリアルチェック確認いたしました!』

「ご苦労様。ところで、いったい どこの誰なんです?こんな所に侵入してくる物好き者って言うのは?」

警備A
『それが、、、我々もまさかとは思うんです、、生きているとしたら、、、』

VEeeeeee、、、VEeeeeee、、、VEeeeeeee、、、

A号警戒発令、、、A号警戒発令、、、A号警戒発令
侵入者の痕跡を発見、、侵入者の痕跡を発見、、本館地下駐車場、換気ダクト
に侵入者の物と見られる衣類の一部を発見した。作戦車及び、、警戒中のスタッフ
は、これまでの ID確認を「深層度チェック」に変更せよ・・・・くりかえす
、、、


警備B
『げっ!、、まさか本当に、、、怪人20、、面、』


警備A
『こら落ち着け!たびたび申し訳ありません、お聞きの通りですので「深層度チェック」を受けていただきます。』

警備B
『指紋・掌紋の照合確認。』
『声紋の照合を終了。』
『頭部輪郭骨格」及び「鼻梁・外耳殻」チェック完了!』
『網膜照合を実行中!・・・確認完了・・・すべて二世と合致、、』

VEeeeeee、、、VEeeeeee、、、VEeeeeeee、、、

A号警戒発令、、、A号警戒発令、、、A号警戒発令
すでに侵入者は館内に潜伏していると思われる。不審者はすでに・・・


「あらっ!大変だわ。こら!いつまで休んでるの、早くこっちに来なさい!」


淫猥な手綱を引っ張られて下着の上から高手小手に縛られ、厳重な猿轡を嵌められている由希は、淫猥な手綱を引っ張られて、鼻の上までかけられた猿轡の奥で苦しそうにもがきながらニセモノの由希についていくしかない。羞恥極まる IDチェックに動揺する心は、まだ現実が認識できないでいる。だがそんな彼女にはお構いなしにニセモノの由希は、淫猥の手綱を曳いてどこかの部屋に入っていった。

強制的な爪先立ちでの小走りに、ブラジャーに包まれた由希の胸が苦しそうに上下するが、そこにかかる胸縄は少しも乱れる事なくみっしりと食い込んで由希の白い肌に縄痣を刻んでいる。


それは自覚なき被虐性が 醸し出す独特のオーラなのでもあろか、その自ら発するオーラーに彼女自身もすでにトリコになっていたのかも知れない、、そして そのオーラに誘われて 由希を手中にしようと奸計を張り巡らせる奴が出てくる可能性はゼロではない。

いや、混迷を極める人間界では、自分の性欲を処理する為だけに無垢な彼女を陵辱せんとする獣が多く存在するに違いないのだ。そしてそいつらは、ゴキブリと同じ、、いや蛆虫などよりも、もっと始末が悪い、、、いくら殺しても、殺しても 次々と湧出てくる、、、、


二世はその視線の彼方にまだ見た事もない 仮想の蛆虫を想像してか半ば放心状態の由希の肩をしっかりと抱き寄せていた。恐らく肉体と精神はかなりの衝撃と荷重苦を受けているのではないか、由希は子供のような無邪気な瞳の中で、ある種狂人的な恍惚感を醸し出しているようにさえ見えた。だが・・・・

だが・・・由希は我々が思う程、幼くはなかった・・・それは露出を強制された彼女の分身の変化からも推し量る事が出来た、、、

人は時に大きな勘違いをする事がある。それは他人の表面上の行動を自分の思うままにした事で、その人間の内面までも服従させ得たと誤解するという事だ。たしかに人間の思惑などは金銭欲やら肉欲のレベル次第でどうにでもなる。だが本能とか第六感などは、そうはいかない。

どうも いつもの二世とは違う!
なにがどうと具体的に 比較する事は出来ないのだが・・・

それが言葉で 言い表す事の出来ない物(推測:予感)だけに、由希がまだ部分的に「牧瀬少年」である証は急速に萎んでしまったのではないのだろうか。現に萎縮して留まる所を失った細紐は、すでに小さなトグロを巻いて床に転がっている。

謎の侵入者、、、しかもその侵入先は大胆にも、この”福助のアジト”なのだ・・・ニ・セ・モ・ノ・・・・?!誰が・・・普通なら考える以前に、こんな所に忍び込もうなどとは誰も思わないだろうし、建物に近づくだけで捕らえられるに決まっている・・・でも?もしも、その侵入者が、あの、、かつて帝都を震撼させた 変装上手の怪盗だったとしたなら、すべての疑問は一気に解決してしまうのだ。

そして今、氷のような輝きを瞳にたたえて、由希を抱きしめている女装者は、、本当に二世なのであろうか、、、だが由希にその手中から逃れる術はない。


「さあ、、疲れただろう。こっちに来て横になりなさい。おや?何があったんだね。せっかく私が嵌めてやったペニクリの首輪が取れてしまっているじゃないか?」

「ふうううぅんんん、ふっくうぅぅううん」

バレた?!、、由希は自分の心境の変化を悟られない為にか、甘えるような鼻声で二世の胸に飛び込んで行った。

「おやおや、どうした事だね、私達の間柄でそんなに感情を剥き出しにしては、大物にはなれやしないぞ、、、ふふふふふ、、だが、たまには陳腐で貧素な幸福感に満足する下等生物になるのも一興、、、、ふふふふふ、、」


二世の胸に飛び込んだ由希はそのまま、二世と共にベッドに倒れ込んでいた、その姿勢では絶対に二世には解る筈もないが、由希はその美しい眉間に深い縦皺を何本も刻みこんでいた。そんな由希の表情に気がつかない二世は、沸き上がる情念をむき出しにした下半身の淫慾と肉欲を由希にぶつけようとしていた・・・・


厳しい猿轡による呼吸困難は、その猿轡の詰め物のパンティストッキングが口中の水分を吸収するにつれて激しくなって次第に由希の意識をおぼろなものにしていった。そんな意識の中で、二世の腕枕でベッドに横たわり呻いても、二世はその拘束も猿轡も解こうとはしてくれなかった。

いよいよ限界になったのか、それとも戒めから逃れる為の芝居か、いかに由希が苦しそうに呼吸しても、腕が痺れた事を猿轡の下から訴えて身悶えしても、二世は解こうとはしないのだ。

「この子は1人で、、、案外 はしたない娘なのねぇ、、、そんな飢えたような眼で見つめられたら 私も興奮してしまうじゃない。さっきの眼隠ししてあげるから、もう少し我慢なさい。」


冷たい輝きで由希を見下ろしながら眼隠し用の黒い布を両手に持つ二世・・・・

その視界を真っ黒な布によって目隠しをされてしまう直前、、、それが牧瀬少年が見る事が出来た最後の光景だった。

「私はね、美しい女に変身した少年を縛るのが大好きなのだよ。そら、こんなふうにしてね、女に変装した少年を縛って嬲るのが一番興奮するんだ。ふふふふふ」


聞き慣れた筈の男の声が由希の耳元にささやくと、すぐに両股の間に絞り上げるような縄の感触が食い込み、続いて足首とひざにも縄がかかった。ぐいぐいと縄を引っ張る感触が広がるにつれて次第に自由を失う両足に、由希は観念して為されるがままになるしかなかった。

由希の両脚は左右それぞれを、ふくらはぎと太股の内側がピッタリと圧着するように、くの字に曲げて縛られ、縛った縄の上に さらに十字交差させて絞り縄がかけられるに及んでその拘束力は一段と強くなっていた。

だがそれは、むやみやたらに由希の四肢をぐるぐるに縛り付けていた訳ではなかった。彼女の両足は折りたたんだパンタグラフのような、つぶれた菱形に縛り上げられて、それは拘束と同時に、彼女の下半身をすべて剥き出しにして、パンティとパンティストッキング以外に何からも守る物のない無防備な状態を強制していた。

「・・・むむんんんっっっ!!!」


逢瀬への期待?いいや、その鳴咽はむしろ恐怖に近いものに聞こえた。そんな声を敏感に感じ取ったのか、二世はベッドから離れると、冷たい眼で由希を見下ろしながら言いはなった!

「うるさいよ。もう、貴方には喋る自由はないんだよ。第一そんな女の姿で、こんな俺に手も無く縛られて猿轡をされている怪盗などに人格はないんだって事が まだ解らないのかなぁ。」


「・・・むんっ・・・うむんっっ・・・」


すでに始まっていた 異変はこの瞬間まで解らなかった。
いくら由希が抗議の声を上げようにも、詰め込まれたパンティストッキングを口奥からさらに押し上げるようにして膨れ上がった不思議な弾力は、由希の舌と唇の動きだけでなく、顎を外そうとしているように際限なく膨れていく。ここまで言葉を完全に封じ込められてしまっては、もはや由希はわずかな呻き声しか出す事ができない。

不思議な事に、そんな由希を満足げな笑みを浮かべて見下ろす二世の瞳には、さっきまでの刺すような冷たい輝きはすっかりなくなってまるで別人の、、いやいつもの二世になっていた。

嗚呼やはり、、この二世は、このアジトに侵入した かの怪盗であったのか!、、、
今ベッドの上で無抵抗をさらす由希の運命は?

だが二世は無残な緊縛姿でベッドに横たわる由希には指一本触れようともぜず、
壁面に取り付けられた内線モニターのスイッチを入れると、

カチャッ、、、ピッピッツツツツツツ、、ピンッ

<<<<館内一斉通信!館内一斉通信!>>>>

<<<こちら二世である。全スタッフに告ぐ。侵入者の身柄は確保した。
警務隊は大至急0211号室に集合せよ。くりかえす、侵入者の身柄は確保した。
警務隊以外の全スタッフはマニュアルに従い、撤退準備に入れ!以上!>>>


ピンッ、カチャッ

なんだって?この二世はホンモノだと言うのか?騙されるな、今の館内放送をした二世が本物だと言う証拠はどこにもないんだ!だがインターコムのスイッチをカットした二世はベッドに横たわる由希の方を向いて、我々が想像もしていなかった事を話し出した。


「さてと、、、それにしても、、最初は信じられませんでしたよ。まさか あの大怪盗にして変装の名人でもある伝説の貴方が、、、まさか!まさか盗み出したクローン技術を応用して自分の細胞を若返らせたなど、、、いくら うちの二代目からの情報だと言ってもね。」


「・・・・・・・」

「もうお分かりのようですね、そう、私達は知っていたんですよ。センパイ。貴方が そろそろ ここに来る事はね。。。そしてセンパイ、、貴方の狙いは、やはり二代目が手に入れたあのアンドロイドのノウハウだ!いかがですか?図星でしょ?

ですが、変装のターゲットに由希を選んだのは大失敗でしたね。俺は彼女の身に着ける物すべてに繊維状の発信機を取り付けてあるんです。そう、、それは衣類だけじゃない。彼女以外の人間がいかに彼女そっくりに変装しようと無駄なんですよ、、、入り口のコンピューターボイス、、覚えていますか?あれね、、ニセモノの場合だけ,、○○【本人】です。って言うようになっていたんです、、、ふふふふふ、、解りませんでした?我が片腕の由希は センパイが監禁した地下倉庫からすぐに救出させていただきました。」


ピン!ガララララララッ

「遅くなりました、あら?、、、先程はどうも!ご立派なモノを・・・それにアタシよりも、綺麗に変装していただけて光栄ですわ。」

「?、、、?!、、、ふおっ!」

すでに撤収を決めたアジトの出入り口のロックはすべて解除されてフリーパス状態だった。そこに飛び込んで来たのは、さっき館内で二世達のIDチェックを行った、あの警備スタッフの1人だった。だが?

「これじゃ解りませんか、、じゃ、、由希、早く そのマスクを取りなさい。」

「は、、い、、、でも、、い、、けない、、蒸着時間、、長すぎた、、か、、しらっ、、、えいっ!」
ビュニュウゥゥゥゥッビュン、、ペリペリペリペリリリリリッ、、、
チュリルッ、ベョン 

「ふうぅぅぅ やっと剥がれましたぁ、、」

なんと言うべきか、警備スタッフが毟り取ったフェイスマスクの下から現れた、その顔は、牧瀬由希 本人ではないか!すると 今まで牧瀬由希に変装していたのは、まさに福助二世、本人だと言う事になる・・・すべてが解った・・・今まで彼が冷たい眼差しを送っていたのは由希にではなく、由希に変装した 伝説の怪人へのものだったのだ。

「やれやれ、、センパイ?いかがですか?改めてご紹介しましょう。俺の片腕として修行中の、、おいっ」

「あっ、はい、、牧瀬 由希と申します。今後ともよろしくお願いいたします。
先程は主人が大変お世話になりまして・・・・」

「こらこらっ!なんだそれは?」

「うっ!・・・・くっぶぉぉぉ」

「まったく、、本当はせっかく伝説の大先輩とこうして お会いできたんですし、
もう少しお付合いしたいんですけど、貴方の侵入を許してしまった以上、このアジトは今日限り撤収しなくちゃならないんで時間がないんです。由希、こちらの大先輩の縄、、そろそろ、、な。」


「そうそう、さっきのシャワーの効果がそろそろ効いてる筈ですから、そのロープは外してさしあげますわ。、ごめんなさい、最初に口に入れたスキンバルーン、、サイズを間違えたみたい、、ドライヤーで加熱したら取れると思います。口の中の水分を吸収して膨れるだけで害はございませんの。」

「センパイはご存知でしょうけど、さっきシャワーでコーティングしたフィルムが完全に硬化して表面がマネキン化する前に、なんとかした方がいいですよ。あれ、一度硬化すると一週間はそのままなんで・・・それじゃ私達はこれで撤収させていただきます。センパイは警官隊が来るまでに何とか自力で脱出されるか、さもなかったら大人しくしているんですね。マネキン人形にしか見えなくなりますから。それじゃ!」

彼らはそう言うと 伝説の大先輩を残して部屋を出て行った。


{二世、、あの、、、}

「ん?、、なんだ?」

{いえ、、さっき、あの伝説の大先輩が私に変装していた時にされた手綱、、
なんですが、、}

「む、あれか、、、あれがどうしたんだい?」

{はあ、、あれってあの大先輩をからかう為に思い付いただけなんですよね、、
まさか、、その、、私にまで あんなコト、、、}

「さあな、、その前に試験の続きが残っているんだがね・・・」

{え!まだ続きですか、、、}

「ああ続きだ、由希、、お前が無事でよかった!」

{はむっ!うん、、、}


その夜、由希は二つ、夢を見た、、、
一つは 二世と彼女がKissをした夢を。

何度も、何度も、教わってもいないのに舌を絡めて、、淫靡に、、
思えば長かった・・・
それはつきつめれば同性との、、
でもそのKissは、、なぜかお互いのルージュの香りがする 、、
その不思議なKissは、
始めて自分が生きている実感をともなった、、、
そんなKissだった、、、、
由希は思った。

やっと、やっと・・・、楽になれた、、、、と。

そして もう一つの夢とは、、、残念、、もうページがない、、、、。

≪出でよ 人形遣い≫
<地獄のニンフ:笑うマネキン人形>
<完>
【前へ】  【続く】
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