柏木奈々緒の診療カルテ(6)氏名なきカルテ(2)
福助二世
カツコツカツコツカツコツカツコツ 、、、、
「むぐんんんっっっうむむっっ!!!!」
「ううんんふんんんんっっっっ!!」
いくら僕が必死になって猿轡の奥で哀願しても、言葉にはならない・・・
・ああ早くしないと あのニセモノのナナオが逃げてしまうよ・・・・
偽者のナナオのハイヒールの音はどんどん遠ざかっていってしまうのに
彼女は、そんな僕の必死の哀願なんか無視して ソッポをむいてしまった。
その横顔・・・誰かに似ている・・・つぶらな瞳をキラキラと輝かせて、どこか清楚で可愛いらしい顔をした少女、、、だけど、今、僕がニセモノのナナオに診療着と言われ身に着けている このランジェリー・・・たしか この女の子の服だって・・・こんなの、彼女のイメージからは不似合いな気がするんだけど・・・・
まだ 幼さすら残る華奢な身体つきで見るからに従順そうな 優しい顔立ちの女の子
が、こんな娼婦スタイルを?・・・・たしか沙弥さんって言うんだっけ・・・でもどこかしら立ち振る舞いには、高貴で気高いような、、なにか得体の知れないプライドみたいな雰囲気がにじみ出ている・・・僕と同い年じゃないみたいだ・・・
「何をジロジロながめているのよ!ふん!あんたみたいな変態に そんないやらしい
眼で見られたくなんかないわ。」
「うむむぐぐっっ!むむんっううう!」
(違うよ!そうじゃないんだ・・・)
僕はそう言ったつもりだったけど、その言葉は、僕の喉の奥からくくぐもった声に
なって猿轡から漏れただけだった。
舌は全然動かせない、口の中に押し込まれたパンティは僕の唾液をタップリと吸込んで膨らんているのに、それを吐き出す事ができないように、がっちりと歯に噛ませられたボールギャグ。唇を引き千切りそうな程に堅く引き絞って噛まされたそのストラップベルトはどんどん僕の頬の肉に食い込んでくる。今の僕にはこれを 自力で振りほどく事なんか絶対にできそうにない。
それでも僕は、一枚だけでもいいから、この厳重な猿轡を振りほどこうとして、必死に顔を振り、舌で詰め物を押し出そうとしたけれど、頬や唇に食い込んだ猿轡がより一層きびしく僕の歯を割るだけでしかなかったんだ・・・。
「うっ・・ううっ・・むむんんっっ・・」
ボン、、ボブンボンボンボン
その鈍い金属音は、更衣室の方から響いてきた。
?彼女、沙弥は音を頼りにしてロッカールームへ行った。数台ならんだグレーのロッカーの一つから その音はしていた。ロッカーの中に誰かいる?
沙弥が 少し緊張しながらロッカーの扉を開けると、案の定、中から人間が出てき
た。
「きゃっ!、、、ど、、どうしたの!??」
それは白衣を着た女性、それも多分若い女性だと思うが、口と顔の半分には猿轡が嵌められていて詳しくは解らない。
「ううう・・・ぐむっっっ・・・」
猿轡と前髪で ほとんど顔の表情の分からない その女性は安堵の呻き声を上げた。
「大丈夫ですよ。今すぐ助けてあげる・・・」
「うむんんん・・・・・・むむふんんんんっ・・・・・・」
緊縛された女性の顔は鼻と口を覆って猿轡は念入りで 顔の下半分を覆う その猿轡ごしに見てもはっきりと頬の膨らみが分かるくらいに 彼女の口の中には、きびしい詰め物がされているのだろう。 鼻がひしゃげるほどの猿轡なので、息が苦しいのだろう、彼女は小鳥があえぐような弱々しい呻き声をたてるのがやっとだ。だが、その女性の瞳は怒りの色をたたえていた。
手足は手足で、足首と、背中に回した手首には金属製のガッチリした拘束具を嵌められている。
「うううううっふふ〜っ、助かったわ、、、ありがとう、、、」
「えええ!!、、、あの、、柏木せんせい、、、ですか?、、、」
沙弥は ロッカーの中で縛られていた女性の猿轡をとりながら恐る恐るたずねた。
その女性の顔は、なんと さっき外に出ていったばかりの柏木奈々緒だったのだ。
話は少しだけ前に戻る。まだ リックや沙弥がクリニックに来る前の事だ。
柏木奈々緒は新しいフィルムスキンのデーターを入力する為に1人、クリニックに
いた。
「なるほどね、、その材質の化学式と成分はそうなっていたんだ・・・」
「え!?」
マウスを手にしたまま柏木奈々緒は呆然とした。
「あ、、あなた、リック?、、いえ違う、、いったい何の真似・・」
柏木奈々緒は、その言葉を最後まで話す事ができなかった。背後から伸びた手は、
無造作に柏木奈々緒の左手を 捻りあげると アっと言う間に柏木奈々緒は床に引きずり倒されていた。
「痛い!なにすんのよ!あなた誰なの?」
「ふ、ふ、静かにしなさいな、今から私が柏木奈々緒よ。よろしくね。」
どういう事なんだ?柏木奈々緒の背中に馬乗りになって そう、宣言する女?・・の
顔、、それは やっぱり柏木奈々緒だった!
柏木奈々緒がいくら必死にもがいても、やはり女性だった。
「あなたね、正体不明の産業スパイって。いったいだれなの?」
「さあ、なんの話かしら?私は柏木奈々緒、このクリニックの院長よ。ふふふ、ねぇ?どう?この白衣、似合うかしら、うふふ」
「あなたね!」
「さてと、、、悪いんだけど私も忙しいの。この辺で おしゃべりの時間はおしまい
よ。」
「う、ふぐうううう!!!は、はなし・・・な・・」
「働き過ぎは美容によくないわよ・・・・・・おやすみなさい・・・・」
柏木奈々緒の口と鼻に甘い刺激臭のする湿った布が押し付けられた。麻酔薬・・・
「うう・・むむんん・・・!!」
必死にもがく柏木奈々緒・・・だがそれは荒くなる呼吸で麻酔薬の効果をあげる手伝いをしただけの事だった。抵抗も空しく柏木奈々緒の意識は混濁していった。
それから何時間ぐらい経ったのだろう・・・失神からさめた柏木奈々緒は、暗くて狭い場所に閉じ込められていた。手足を動かす事も喋る事もできない。ただもがいて助けを待つしかなかったのだ。
沙弥が柏木奈々緒に化けた謎の怪人に騙されていた事に気がついた時はすでに遅すぎた。当然ながらクリニックの玄関にパトカーの到着を待つ、柏木奈々緒の姿など
ある筈もなく、又呼ばれてもいないパトカーは来なかった。
リックはまだ縛られたままの姿で 放置されていた。それはホンモノの柏木奈々緒の
考えでもあった。
ハイクォリティな娼婦姿で 椅子にむごたらしく縛り付けられているリックの女體は
とてもチャーミングだった事も理由のひとつだった。たしかに裸体ではない、下着の上からの少年の女装緊縛も一興ではある。そのイミテーションではあるが、少年の胸は女性のたおやかな感触が強調され、その身体や、ストッキングの脚に巻き付く縄、、、女體を着たリックの本来、可愛いであろう その口を幾重にも塞ぐ猿轡・・・・・
「ふうん、、リック、あなた重傷よ・・・」
柏木奈々緒のその言葉にリックは何も応える事は出来なかった。それが猿轡のせいではない事は言うまでもないだろう。それは自分も多少は気づいていたのだ。だからこそ、人一倍、気を配っていた。もしかしたら、自分にはこんな性癖があるかも知れない。リックの心の中にそんな予感は間違いなくあった。
同級生の羨望を集めると同時に、先輩の嫉妬・妬みすら買っていたハイスクールのクイーン牧瀬由希の姿になり、もう二度も・・・緊縛・・・猿轡・・・今回の股縄責では不覚にも特種ボディスーツの内側を汚すほど濡らしている・・・人格破壊・・・この地獄の凌辱にリックはすでに、自分の精神が犯されていると思っていた。、、、そして、それでも良いと・・・・
「でも、まさか・・・・。」
クリニックにカウンセリングに来たつもりが、気が付けば自分から緊縛され、猿轡を噛まされた不自由な格好で身動き出来ないままの恥ずかしい姿・・・・それは怪盗と呼ばれる犯罪者の手によってされたものであり、その姿をDrの柏木奈々緒だけでなく、ほとんど初対面の同級生の女性に見下ろされているなんて・・・・2人の女性の顔には下卑た笑いが浮かんでいるようにリックには見えていた。
リックは、これから襲い来るかもしれない陵辱を想像したくなかった。
今、2人の女性とリックの間隙には、一瞬だが沈黙が存在した。この不安定な精神的均衡が、いつ崩壊してもおかしくはない状態だったし、万一それが一度崩れれば、雪崩のようにリックを押し流すことだろう。
「ふふふふっ、もう大丈夫なのよリック・・・・」
「むんううううううッッッッ」
僕は猿轡の奥で呻きながら縛られた手足を動かした。
「何よ、あたしなんかずっとロッカーの中で暑くて苦しかったのよ。第一ね、キミみたいに自分から望んで縛られた訳じゃないんですからね。そりゃあ、キミは面白かったでしょうけど、こっちは大変だったんですからね。」
「ほくぅ、、ふっくううう、、」
「こーら、何小さくなってるの?さっきは、あの怪盗もいたから助けを呼びたくても呼べなかったけど貴女の声はぜーーんぶ聞こえてたのよ。貴女の喋っている事、神妙なふりをしてこんな緊縛をおねだりしたのは、どこの誰だったのかしら?』
そう言うと柏木奈々緒がいたずらっぽく僕を睨んだ。
「ふーん、、この{由希ちゃんの中味}が同級生の男の子だなんて信じられないけ
ど、そうと解ってこうして緊縛された姿を見ると なんだか興奮するわね。私も由希
ちゃんをこうして縛り上げて辱めたいって思う事、ありますから、、、ふーー
ん、、」
「それが男の子が変装してるなんて 解ったら沙弥さんのヤリタイ放題、、、?かな
?ふふふ。」
「えー先生、沙弥、そんなコト、、、でもどうしようかしら。この男の子、お家に帰してあげようかしら。それともこのまま私がテイクアウトしちゃおうかな。」
縛られて猿轡を嵌められたままの僕を眺めながら沙弥さんが言った。ナナオは泥棒に入られたと言うのになぜか上機嫌で言った。
「でもマヌケな怪盗よね、あのデーターはとっさにダミーのデーターに切り替えていたのも知らないで一生懸命、ディスクにコピーしていたけれど、あんなもの起動したら その瞬間に マヌケな怪盗さんのシステムなんか、アッと言う間に分解しちゃうの。あはははははは、いい気味だわ。」
「せんせいってサスガ!本当はこの子が男だって、さっき聞いたけど かえって周り
にはカモフラージュ出来ていいかもね。何しろ アタシ目立ち過ぎるから。」
沙弥はそういうと腰に手をやりポーズを作った。ふっくらとした女らしい胸にきゅっと締った腰、格好良く上がったお尻、スカートの下の伸びやかな脚はパンティストッキングをより魅力的に見せてくれる。
「ほら 女の子どおしなら こんな事も、、、ね」
沙弥は穿いていたスカートをずりあげると、ダークブルーのパンティストッキングを穿いた脚が奥まで見えた。
「ほーら、アタシの脚、、綺麗でしょ。今、キミが穿いているパンティとこれ、色違いのお揃いなのよ、、この体も最高でしょ・・・・』
パンティストッキングを通してレースのパンティを穿いた沙弥の股間が丸見えにな
る。
「私、興奮したわ。私ね、縛られた女の子が大好きなの。そうやって下着姿にして
ね、手足を縛って猿轡を嵌めて転がしたり、、ふふふふ、、そうしておいて、その女の子に好き勝手するのが面白いのよ・・・でも、キミなら・・・・」
「ふむうううううううんんんんっっっっ!!」
「そうやって縄で縛られて凌辱されると最高の悦楽を感じるって人間、、いるのよ
ね。女體を着て 倒錯の世界で恥しいほど酔いしれる・・・ステキな世界よ・・・リック・・・キミの精神(こころ)を解放してあげる事はなにも恥ずかしい事ではないわ。」
「奈々緒せんせいの言うとおりよ。ねぇ恥かしい?私みたいな同級生に見られて?
そんな縄で縛られて、まるで調教されているみたい、、、」
「ふっうくう、、、ふううう」
「照れてるの?ふふふ、、そんなリックも可愛いわ、、、あら?そのストッキング伝染しちゃってるじゃないの・・・待っていて!私 新しいの買って来てあげるから、せんせい ちょっとお買い物に行ってきますね。」
沙弥は柏木奈々緒の返事も待たずに、クリニックを飛び出して行った。
「やれやれ、最近の女の子ってドライねぇ、、、それにしてもリックも気に入られたものね。、、、あら?、、リック?、、、そのストッキングの間に挟んである紙切れは・・・何かしら?、、さっきまではなかったのに・・・手紙?」
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Dear Dr柏木奈々緒
今回は貴重なデーターをありがとう。これで私達の変装もより完璧に
なると言うものだよ。
恐らく「切れ者」と噂の女医さんの事だから、簡単には行かないだろう
と思い、念の為に 2人がかりでお邪魔して正解だったようだ。
沙弥と牧瀬由希とか言う少女は そちらの倉庫に監禁してある。
ちなみにリックが哀しむといけないので、今回は何もしていない。
それでは
怪盗 二代目福助&福助 二世
PS:あのリックとか言う少年、そのうちスカウトにうかがう。
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柏木奈々緒は 黙ってその手紙を握り締めていた。
氏名なきカルテ(2)
福助二世
<完>
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【続く】
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