≪万国人形大博覧会:(1)≫
神聖なるカルマの叫びなのか、抗しようもない自覚なき トラウマの鳴咽なのかは
解らないが、一点の曇りなき その真摯なる心は 自ら沸き上がる慟哭に押しつぶされそうになりながらも、必死に受け止めようと苦悩する。
そんなカクテルグラスのような繊細な心を持ちながらも、自らの慟哭の十字架を背負う者を人は敬意を込めて[ DOLLER ]と呼ぶ。
「本日はご来塔いただきまして誠にありがとうございました。このエレベーターは、地上150mの大展望台から1分で一階コンコースまでまいります。又の都内観光際にも東京タワーへのご来塔、お待ち申し上げております。」
先端までの高さ333m。昭和33年に完成してから今日まで、自立鉄塔としては今だに世界一の高さを誇示するかのようにイルミネーションを輝かせて聳え立つ、その大鉄塔からの眺望の価値は、しかしそんな肩書きなど一切必要とはしない。
全周囲の壁面が展望ガラス窓に覆われた、来塔客がすべて帰った後の,大鉄塔の大展望台から見下ろす帝都の街並みは、さながら宝石を撒き散らしたベルベットの上にいるような錯覚を、見る者に与える。
だがそんな息を飲むような神秘的な光景の中に溶け込んではいたが、天に向って光りの鋭角を突きつけるイルミネーションに見惚れる間もなく、あわただしく動き回る不粋な人間達がいるのも又仕方がない事だろう。
【 万国人形大博覧会 】
大鉄塔が見下ろす輝きの洪水の一角には、光に相対する闇を形成するような緑地帯に仮設されたカラフルなイベントテントも、風に飛ばされたピーチパラソルのようにしか見えなかった。
その大仰な横断看板が掲げられたイベントテントは、かの大鉄塔の名物でもある常設イベント「蝋人形館」よりも、主催者のこだわりが伝わってくるような リキの入ったディスプレイが評判となっており帝都では、ちょっとした見世物となっていた。
「社長?このケースはこっちに置きっぱなしで良いんですか?中のアレ、チェックしましょうか?」
「そこじゃ邪魔になるから あっちの隅の方に置いて???、、、えぇ!!!?」
「そんなに驚かないで下さいよ。知ってますよ。アレが入れてあるんでしょ。さっき中を見たら、まだ表面がペタペタしてましたし、まだ『定着』って言うの、してないんでしょう?、、、なんたって[汚ギャル]が そのまんま大人になったようなもんでしたからね、だから予定より洗濯に手間がかかっちゃたらしいんですって・・・」
「たしかに あれは酷かったけど・・・・それ、、今のハナシ、、チーフに聞いたの
?」
「ええ、さっき、、、社長ったら携帯電話、置きっぱなしだったしゃないですか。着信表示を見たら「チーフ」って表示がされたんで、出てみたんですけと、何だか僕の声と社長の声ってよく似てるらしくて、話してる間中ずっと人違いされてて、一方的に切っちゃったんですよ。」
「ふーん、、あの人らしいわ、、ね、、」
「だけどあんな[汚ギャル]の出来損ないでも、ちょっとブリっこしてりゃ今の馬鹿オトコは、コロコロ引っ掛かっちゃうんだから世も末ですね・・・」
「だからこそアタシ達のビジネスがボロ儲け出来るってのも皮肉な話なんだけどね・・・・・・・(まいったわね、、チーフにも・・・)」
「社長の前で言うのもなんですけど、、、産れた時に、たまたま”へっこんでた”って言うだけで、ただ何の苦労も努力もしないでオンナを垂れ流しにしてるだけでなく、風呂も碌に入らなきゃ、トウモロコシみたいにした髪の毛も荒れ放題ってのは、ボクに言わせたら 女性への冒涜ですよ」
「なるほどねぇ、、、なんとか助けてあげた・・・・・」
「そんな思いやりなんか無駄ですよ、、コイツら自分の「オンナ」ってものを手入れもしないまんま売り物にしちゃってワガママ放題なんだから。それを野放しにして、誰も注意しないもんだから、それを見て「オンナの特権」だと勘違いする女装者まで現れる、、悪循環も良いところじゃありませんか。僕は許せません。」
「たしかにね、、自分の心の貧しさが解っていない、、ティシュ一枚ほどの価値も
ないプライトにしがみついてる人達が多すぎるわ。純真無垢な人達ほど、ごめんなさい と繰り返すのに、肝心の馬鹿な当事者は しらん顔を決めて呆けている。(・・・・・・だから・・・だから、助けてあげたいんじゃないの・・・)」
「社長」と呼ばれた女性が 溜め息まじりにそうつぶやいたのを、興奮して一気にま
くしたてるバイトの青年?少年?、、あどけない表情と遅い変声期のまま、その輪郭と鼻筋に匂い立つような美を浮き立たせる彼は気が付かない。
もしかしたら、すでに都会の雑踏さえも、神秘的な光景に摩り替えてしまう妖魔のマジックは、その「万国人形大博覧会」にまでトリックを仕込んでいたのかも知れない。だが そのトリックの意味を理解するには、この【 万国人形大博覧会 】と言うイベントを一度見ていただいた方が良いのかも知れない。この日の昼間のイベント会場の様子を 巻き戻して観てみることにしよう。
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この日は連休休日の初日ということもあって、会場内はカップルや家族連れの客などでけっこう混雑していた。正午を少し過ぎたばかりのイベントテントの周囲には、入場を待つ行列が出来ていたのである。その行列の中ほどで騒ぎはおきた・
・・・
「むかつくんだよ。この くそ爺ぃはよぅ、、横はいりなんかしてんじゃねーよ」
老人
「そ、、そんな、、先程、マゴをトイレに連れて行くから、、と、、そう、、」
「せぇなぁ、、聞いてねぇんだよ。図々しいなぁ、うざったい事 言ってんじゃねぇ
よ。こんなモン見る立場かよ、良い歳しやかって、ばあぁぁか。」
行列が出来るような場所では大なり小なり、こんなトラブルはおこるものではあるが、いささか気になるのは、老人にこんなヒドイ罵声を浴びせているのは、オトコではなかった・・・
愚図る孫をつれて、用足しにいった老人が列に戻ろうとした時、その後ろにいた若いカップルの「女」の方が、そう毒づくのを耳にした、バイトの彼が仲裁に入った時には、群集の前で罵倒されて列から離れる老人と泣きじゃくる子供を尻目にして、意地悪そうに笑う女性とそれを見ながら何も言わずに、ヘラヘラと笑っている男が、会場に入ってしまった後だった。
会場内の長い通路を歩きながらも その女性の態度は目に余った。禁煙にもかかわらず咥えタバコはする、吸い殻は火の点いているまま周囲に投げ捨てるなど、傍若無人を繰り返す女性には、案内嬢の忠告など屁の役にもたたなかった。
女
「ねえねえ、見てみなよ、この人形、なにか生きてるみたいじゃん」
男
「ほんとだぜ、なんか気味悪いっぐらいリアルだよな。涙流してるトコなんかお前よりイロッポかったりしてな。」
女
「バッカじゃん、こんなのコンピュータで動いてんに決まってんじゃん。涙なんか
流すかよ、ダッセー。本気にしてんの バカじゃん」
男
「なんだよ、お前 こんな人形にヤキモチ焼いてんのかよ・・」
女
「ざけんじゃねーよ。だれがよ?こんなボロ人形で高い入場料取りやがってよ。オレの方がゼンゼン綺麗に決まってんだろう、変わってやりたいぐらいだぜぇ。」
変わってやりたい?、、、いったい何と?、、、おそらくそんな疑問を持たれただろう読者諸君の為に、少しだけ、このイベントの陳列イベントを紹介しておこう。
[万国人形博覧会]と言うイベントタイトルから考えたら、さぞ凄いゴージャスな人形達が仰々しく展示されているとお思いだろうが、それは入り口から奥にむかう通路に、数え切れないヌイグルミが 壁からアーチ型の天井まで、隙間なく貼り付けて展示された 4〜5m程度の空間がその期待に応えて代理をつとめているだけであり、そこから奥は、子供連れの家族は 、子供を連れて来た事を後悔しても無理のないような、猟奇奇譚絵図とその登場人物を[人形]に置き換えただけのシロモノだった。
たとえばこうだ。
【魔女裁判】とタイトルプレートがあるスペースには、被害者の女性のつもりなんだろう。その等身大の女性の人形は黒いストッキング、体にぴったりとした派手なスパンコール付きのドレス、肘まであるロング手袋の扮装で、手足を縛られ猿轡をされ、さらに動けないように、足首と手首は背中の十字架に見立てた柱にしっかりくくられて、炎をイメージしたプラスティックの業火にあぶられている。
その西洋的なイメージの隣の【女囚拷問】と言うスペースでは、亀甲縛りに似た、女囚縛りの上で両腕が背中に捻りあげられ、腰から両足首も揃えて何重にも縄が掛かけられた姿で、天井の梁から吊り上げられた江戸時代の装束で、全身を捻らせ苦しみから逃れようと豆絞りの噛み猿轡を噛み締める女囚[人形]が、めらめらと炎をあげる松明型のランプに照らし出されている。
おおむね そんな内容の展示物が、このイベント【万国人形大博覧会】の中心なのだが、それを夢中になって見ている間に、いつの間にか あのヒンシュク カップルの男は、連れの女と はぐれて途方にくれていた。たしか真っ暗なトンネルのような通路に入る直前までは、ちゃんとオトコの隣にいた筈なのに?
いないのは当然だ。
そのトンネル通路に入ってすぐ、あの馬鹿女は壁からニョキニョキと伸びた何本もの手で抱きすくめられると、鼻と口に麻酔薬を沁み込ませた布を押し付けられ失神していたのだ。多分、その馬鹿女が気が付く頃には自由なんか なくなっているだろう、なぜなら、そいつは誰も頼みもしないのに、自分から立候補してしまったんだから・・・「変わってやりたいぐらいだ・・」・・・と。
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「こんなバイトができるなんて、ホント良い勉強ですよ。さてと、そろそろ[定着]が出来たんじゃないですか?」
「そう、ありがと。それじゃさっきのケースの中の2流品、加工しちゃおうかし。
君、足の方を持ってくれるかしら。そ、、、ふぅ、、何を喰ってんだか知らないけ
ど、こいつって見掛けよりは重いわねぇ。、、、」
「ふうぅ〜、 こんなに汗ビッショリかいちゃいましたよ、、、僕、興奮してるのか
な。」
独身用の洋服ダンスぐらいの大きさのケースから、2人が引っ張り出した「アレ」とは、等身大の人形、、か? だが顔がよくわからない。シルエットからすると女性のように思える、その人形の顔には頭からスッポリと黒革の全頭マスクが被され、大きくて頑丈そうなジッパーは後頭部で鍵止めされていた。
「あははっ、これだけ頑丈な猿轡じゃ、眼が覚めた時に、どんな大声をだしたって 大丈夫でしょう。こんなコトしたって!えいっ!」
あまりの息苦しさと太股を千切るように抓られた痛みに、あの馬鹿な女は真っ暗闇の中から引っ張り出されたような、不快な目覚めを強制された。夢の中・・・・?真っ暗闇の中で、まだ朦朧とした頭を振る・・・たしか、博覧会の会場で後からいきなり消毒薬のような匂のする布を口と鼻に押し付けられて・・・それ以降は思い出せない。
その女は今までに経験した事のないような不思議な感触が肌を覆っている事に気が付いた。その感触を何かに例えるならば、首から上を 瞬間接着剤のシャワーでも浴びたようなものだろうか、だんだんと頭がはっきりしてくるにつれて、その女は、のうたりんなりに、自分がどんな状況におかれているかを理解してきたらしい。
なにか真っ暗な闇の中に押し込まれている。
それがなにを意味する闇なのか想像もつかない。
喉が砂漠のようにカラカラに乾いて、口の中もざらざらしている。
落ち着いてみれば その暗闇は頭と顔を覆った 革の頭巾のよって目隠しをされているからなのだが、どちらにしたって 両手を背中に回され重ねて交差して縛り上げられ、肘も腕も身体に固定されて縛されていては、頭巾にせよ眼隠しにせよ、それを自分で剥ぐ事は女には絶対にできない。
観音開きに開いたケースの中にあった女體のシルエットを持って拘束された「アレ」は、まるで物でもしまうようにケースの中にふたたび乱暴にケースの中に入れられていた。
「何、興奮してるの?そんなの君らしくもないわね。これぐらいの事、自分から立候補したんなら当然のことじゃない。世の中、半端じゃないのよ。それに こんな汚物、じゃなかった[汚ギャル]なんか抓ったら指が腐るわよ。」
「は、はい、、、すみません、、、頑張ります。」
「その意気、その意気、頑張るのよ。それじゃ仕上げちゃうから、、そうね、、C−3のディスプレイの前にケースごと移動しちゃいましょ。」
その密閉されたケース中にまで蒸気となって飛散した汗と涙は、密着した全頭マスクの下で、容赦なく女の化粧を流れ落とししてるのだろう、すでにマスクの下端から流れ落ちる汗には溶け流れた化粧品の色に染まって滴り落ちてケースの床を汚していた。
ゴドン、ゴロゴロゴロ、ガッコン、、、、、
それだけではない。応急に作られるイベントテントの床は、見かけは立派で内容は大昔の「見世物小屋」と大差はない、、公園の更地の通路なのだ。普通ならなんでもないだろう 例えば縁石の小さな段差、レンガタイルとアスファルトの間の小さな溝、、、、それらはケースの底にある車輪にとっては、大きな障害なのである。そしてその障害はケースの中の[アレ]にとっては、さらに何倍もの大きな衝撃となって伝えられる。
全身に食い込む荒縄の縛めは、その振動の度に全身にギシギシと食い込み、嫌応なしに全身が悲鳴をあげ、頭が砕けるほどの激痛を呼ぶ。だがそれを伝えようにも、全頭マスクの下に執拗に嵌められた厳重な猿轡は、悲声はおろか、わずかなうめき声すらをあげることも”立候補者”に許そうとはしない。
割れるような頭の痛みが薄らぎ、吹き出した汗にぐっしょりと濡れた全身が宙に浮いたように感じてくる、失神と言う名の解放が”立候補者”を救おうとしたその瞬間、
『なんだよ?そのケースの中の、、ここに使うの?』
ハシャン、、、、パカッ
『どうすんだい!そんなクズ、、、おんや!、、、なんでバイトが、ここに?』
『・・・・あ!・・・・まさか・・さっき・・・・の・・』
けして感動をするようなシーンではなかった。相手を確かめもせずに、企業秘密を自分からバラしてしまった、、そんな大きなミスに気が付いて息を飲み言葉を失っているチーフだったが女社長は何も言わない。
当のバイトの少年は、突然 無言になった2人の理由もわからないまま、ケースの中の撮影用のヤワな縛りでも、大掃除のホコリ除けのマスクのような猿轡でもない!まぎれもない完成した”被虐体”をケースから取り出そうと悪戦苦闘していた。
いかに苦しかろうと悶える事も叫ぶ事も厳重な猿轡に禁じられて苦む”オンナ”の四肢の痛みはもはや絶頂に達し、その内臓をもすべて吐き出してしまい汚辱感が、
その全身から脂汗となってしたたる。唯一の自由は覆われたマスクの下で、不様に涙を流す事しかない、ただその涙すら嵌められた猿轡にほとんどが吸収されてしまったのだが。
「うっ・・・うぅっっ、、、・・・・」
なかば意識を失いながら弱々しく呻いたのは ケースから出された”被虐体”ではなかった。もはや周囲の2人がいったい何を喋っているのか聞き取ることもできなかったのは バイトの彼自身だった。
消えかける意識の底で、彼が最後に耳にした言葉は あの女社長の
、、、、これが本当に「助ける」ことになるのかしら、、、、、だった。
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【 Witch Barmaid】
「よしと、そのタイトルプレートを取り付けたら、明日からのスペシャルイベントの準備はOKと。さてと、、、、次の準備をしなくちゃね。アナタがあんなミスさえしなかったら こんな残業なんかしないで、久しぶりに今夜はゆっくりと出来たんだけどね・・・・・・」
フレアスカートのフリル越しに黒いパンティの股布がチラチラと見え隠れしシームのついた黒いストッキングをガーターベルトで吊った、好事家ならば、思わずヨダレを垂らしそうな、本格的な懐古奇譚の古風なメイド衣装を身に着けた人形は、それだけでも充分に魅力的だったが、ここは【万国人形大博覧会】の会場なのである
。
床に散乱した銀のトレイと食器の横で、[人形]は椅子に腰掛けて、太い縄で縛り付けられている。その両手は椅子の後ろで手首を一つにまとめて縛られ、大き目の乳房の上下にも、それが[人形]だから良いようなものの、命ある人間だったらアバラ骨がへし曲がり、それこそ呼吸なと不可能なほど、これでもか!と言わんばかりに、その胴体に食い込んで胸縄をかまされている。
腕は腕で、その[人形]の胴体にピッタリと圧着して固定され、メイドの黒いミニスカートから出たふとももは膝の上下に縄が幾重にも巻き付き、さらに格好の良いふくらはぎの下、きゅっとしまった足首も一つに縛られて、さらに[人形]を良く見ると、その手首と足首には、厚くて頑丈な黒革製の枷が、ガッシリと嵌められており、その枷の一つ一つには小さな南京錠が嵌められ、気のせいだろうが震える[人形]に振動してカチカチと小さな音を立てている。
たとえ、その[人形]に意思があったとしても、縄と拘束具で厳重に固定されていては自由になる術はないし、特種プラスティックでコーティングされた[ドールスキン]の奥に隠れた猿轡は言葉の自由をも封殺していた。
そんな事には何の興味もない照明の下で、大きく開いた黒光りするブラウスの内側に、真珠の粉をまぶしたような汗をきらめかせて[人形]は、ただ妖念を醸し出していた。
『す、、すまん、、あんまり声が似ていたもんで、、、つい、、その、』
「謝ってすむ事じゃないけど、こうなったら仕方ないわ、この子には辛いかも知れないけれど、こっちの馬鹿オンナみたいに、晒し者にされながら死んでいく様なペナルティも与えたくないし・・・少しは責任感じなさいよ。」
『うん、、、すまん、、』
「う、、はう、ふうんぅぅ、、、」
「心配しないでいいわ。あの馬鹿オンナみたいな扱いは君にはしません。でもね、、私達の仲間でいてもらうには、少し改良が必要なの、、、そう、、経験って授業でしか得られない、、改良が、、、だから我慢するのよ。」
「チーフ?彼に着せた「スキムボディスーツ」は身体にピッタリ圧着してるわよね?」
『お、おう!バッチリさ。こいつ元々肌が綺麗だから、女装者だったらこれでもOK過ぎるぐらいさ。』
「バイト君、聞こえるかしら?それじゃこれから、その上に「モノ微粒子ラテックス」を吹き付けるから、しばらく呼吸しちゃ駄目よ。肺の中に入ってしまったら厄介だからね。それが完全に定着したら「ドールスキン被膜」の完成、君はこれから[お人形]になるの。これしか君を助ける道はないの。良いわね!」
シャッシヤヤャアァァァァァァァァァ、、、シャシャシャシャァァァァァ
パシュンパパパパシュウウゥゥゥゥウ
パピシュゥゥゥゥゥ、、、シャッシャッシャッシャッシャッシャッ
ビシユュュュュュュユユュュ、、ビュッシュゥゥゥゥゥゥ
最初は軽やかな、次第に粘性を帯びた被膜溶液が、あのケースの中に不思議なファッションスタイルで立たされている少年に照射されていく。
不思議なファッションスタイル・・・
そう、、シンボリックな個所からご説明しよう、、、彼の股間には「性転換パット
」とでも表現しようか、女性のヴィーナスラインをリアルに刻印した低速度凝固シリコンで造られた肌色のパットが、ハードサポートの下半身シリコンタイツで着けられていた。
これだけでも、すでに彼の下半身は女性のラインに変身していたのだが、それ意外にもウエストから胸を覆って隙間なく圧着されたロングブラジャーのようなウエストサポートが強制的に彼のウエストラインに理想的な「くびれ」と、セクシーなシルエットを惜しみなく与えていた。・・・とりわけ、その胸は恐ろしいまでに少年の変身を静かに、だか確実に強制した。・・・幼児期、、思春期、、開経期、、妊娠・出産期、、閉経期と移り変わる女性の人生の中で、胸、バスト、おっぱい、場合によってさまざまな呼び方で親しまれている乳房。
その女性のからだの中で、明確なアイデンティティを語る不思議の肉塊は、そのシャワーを浴び始めて見る間に、少年が身に着けたウエストサポートの胸の中の空洞に、みっしりとした質量を注入しながら、女性の幼年期あるいは男性の標準的なものから、思春期以降の乳腺が発達して、乳房としてふくらみをおびてきた。
少年こうした胸の変化は、増加する胸の質量と共に小さな ときめきとなって、女性としての心理や精神科領域につながっていっているのを少年はまだ 解らなかった。
今少年は[人形]と言う名の「女性」を着用しているのだ。身体にだけではない、その心にも。。。。すぐにでもマニキュアを塗れる手入れされた爪も可憐な細い指。それは両腕まで すっぽりと包んでいるラテックスのロンググローブの成果だったが女性としてのドールスキンマスクをすっぽりと被った少年の顔は、その科学の皮膚にぴったりと被われて無毛の頭は、少年に出家した尼僧のような妖しくも神々しい印象さえ与えていた。
シュウウゥゥゥウウウゥゥゥゥゥ
ぼっわあぁぁぁあああぁぁぁぁあぁぁぁ
ひゅううううう、かこおうぅぅぅぅううううぅぅぅぅぅぅぅ、、んんんんん
「ふううぅぅ、、、ボディは これで できあがりね。最高だわ。。。思った通り
、、」
送風機による機械乾燥が終わって余熱の脱気に入ったケースをまんじりともせずに見守っていた女社長がそう言って静かに微笑むが、隣にいるチーフには言葉が無かった。そこには永年、このビジネスに携わって来た彼でさえ信じられない“女體”が出来上がっていたのだ。
脱気による排熱にまじって、特種シリコンの匂いのない匂いと洗剤の香りがテントの一角に漂うなか、その完成したばかりの[人形]は、まるで高貴な人物の遺体
でも扱うような慎重さで、ケースから取り出されると、傍らの木箱に毛布を引いた上にそっと座らせられた、、、?!、、この[人形]は、柔らかい!
「突然の事だったんで物足りないでしょうけど、そのドールフェイスマスクは塗装済みのセミオーダータイプだからね。このウイッグを被ってしまえば、、こんなもんかしらね。フルオーダーじゃないと・・・でも あの本物なんかより何1000倍もステキだわ。何より中味の[あんこ]がゼンゼン違うんですもの。それじゃこのセミロングのを被りましょ。」
「むぐうううっっっ!・・・・・・・・」
少年は激しいショックを受けた。喋ることが出来ないのだ!彼は必死になって女社長にそれをうったえたのだが・・・
「何かしら?悪いけれど、声帯弛緩剤を注射してあるから、お喋りは出来なくってよ。、、、あのね、、あの電話のお陰で、君はもう、あのバカ女の処理も なにもかも知ってしまったのよ。もう後戻りはできないの。私達の仲間になるか、それとも死ぬまで、ああやってディスプレイの中で[肉人形]でいるか、、覚悟を決めてちょうだい。」
「・・ふぉふえっ、、、・・・」
「仲間になって生きるなら、こっちの洋服、、全部あの馬鹿オンナから脱がせておいた物をしばらくは身に着けてもらいます、、、そして、あの馬鹿オンナと同じ運命を望むなら、そっちの娼婦の衣装、、、どちらでもかまわないわよ。」
2つの空のディスプレイステージに、それぞれ置かれた服と下着、、そのどちらかを選択しなくてはならない少年にとって、それはどちらにしても今までの生活との別れでもあった。
しばらくの沈黙の後、少年は意を決して用意されていた 女物の下着を身に着け始めた。まずパンティを穿いてブラジャーを手にした、、、どちらもお世辞にも上品とは言えない扇情的なデザインと色、、、その少年の体型は、着せられた[人形]の皮膚の威力で、サイズの小さい女性の下着を着られる程になっていたではないか。
彼女と同じ女性サイズのブラジャーを身に着けると、その上からひらひらと薄い生地のキャミソール着けてから、黒いストッキングを穿く。サラサラしたシルクの膚触りの黒い薄絹の筒にそっと少年は自分の爪先を入れた。
ストッキングによじれや伝線が出来ないように、丁寧にとても丁寧に爪先を合わせてそっと穿き上げた。その脚からは女の脚線をより際立たせる妖艶が漂ってきた。
だが・・・・・
少年の脚だった筈のそれは、ブラックのストッキングで陰影を施されて、ガーターベルトとの白い肌とのコントラスを際立たせ艶めかしく変貌して男をもとめている。嫌応なしにそれを見つめるしかない、結果、少年の勃起を抑える為に貼り付けられた性転換パットの下で、少年は自分自身を熱くたぎらせてしまう。
良いのか?・・・・・・
まだ終わりではない、、行きずりの男を誘うように胸が大きく開いたブラウスを着て、レザーのスカートを穿く。強靭なドールスキンの被膜は、少年のそれとくらべて5センチ以上は細いウエストサイズのスカートを丁度よくしてしまっている。少年はスカートの後のジッパーをそっと引き上げた。
嗚呼・・・・・だがその衣装は、、、、まぎれもない、、、娼、、婦、、、、少年は[人形]と言う女性をまとってウツセミの生を求めるより、死を選択してしまったのか・・・・生きてほしかった・・・あなたのような少年ほど・・・共に歩いてほしかった・・・・
「良いのね?・・・本当にそれで・・・ブーツを・・履いたら、この鏡をごらんなさい・・・」
沈んだような女社長の声に、少年は鏡を見た。その中には女囚縛りで拘束されている[人形]の手前で、はにかんだように俯いた娼婦・・・
違う!そうではない!なんとそこには[人形]の中に閉じ込められた筈の、あの 「のうたりん女」の姿が同時に映っていた。少年は自らの意志で生きる事を選択した!
だが複雑な気持ちでもある。いや世も末と言うべきかハタチそこそこの、どこにでもいる歳頃の女性の普段着?デート着?は、常識ある者が見たなら、そっくりそのまま売春婦にトラバーユしても通用するような、、いいや、、今時の娼婦だったら逆に大手有名ホテルのドアマンが最敬礼で出迎えてしまうようなファッションに身を包んでいる事だって珍しくはないのだ。、、、とにかく良家の令嬢と呼ぶには、いささか無理があるファッションをお好みになっていた。
鏡の中は、微笑みながら 「あの女」になった少年に寄添う女社長の姿が現れて 少年に何か言った。
「生きてくれてありがとう、、、でも、、これからが大変よ。」「チーフ!その娼婦のコスチューム片づけてくれて良いわ。それから、この娘のバッグと携帯をこっちに頂戴!、、あの ふぬけ男の留守電がピィピィうるさいのよ。」
【 あのピコピコか、、なんならオレが電話しようか?元はと言えばオレの電話が原因なんだし・・・】
「あら、珍しく殊勝なコト言うのね、それじゃオネガイ、ひさしぶりにチーフの艶っぽい声も聞きたいしね、へへへへ。」
【社員を冷やかしてんじゃないっての、それじゃ久しぶりに、、えほっ、おほん、あっあー、】
トルルルルル、、トルルルルル、、トルルルルル、、チャ
【あぁ、、もしもしぃ?アタシだけどさぁ、あんた どこにフケちゃってんのよ?アッタシすっげぇ ムカついてんだけどさ、チョベリバなんてもんじゃないよ。ちょっと!】
「-※※※※--※※※※--※※※※--※※※※-」
【ざっけんじゃねーよ。てっめー!さっきまで探してたなんか適当なコト言って、ナンパなんかしてたんなら ぜぇってぇ許さねぇからさぁ、え?どこに居たって言いじゃん。ばぁっか!】
「-※※※※--※※※※--※※※※--※※※※-」
【カレシずら してんじゃねえんだよ。アタシ、あのテントでバイトすっからぁ、、明日あのテントに来いよな、、絶対だぜ、、おう、、じゃあなぁ。。】
ブチン、、ツーーーーツーーーーツーーーーツーーーー
その筋の方達のお電話だろうか、、、だが、あの「のうたりんオンナ」のカレシは
そんな口調の電話に何の不審も持ってはいないらしいことの方が驚きでもあるんだが・・・・
(おーい、止めて良いかい?このフィクション・・・筆者は哀しくなってきた・・・)
「ねえ、、、チーフ、、、今の何なの?」
【だぁから、あの馬鹿オンナのカレシと電話したんじゃん。】
「スゴイのね、、今の若い人達って、、あたし自信なくなってきた・・・・でも、君は違っていたわね・・・・」
「あふあぁん?ぁっふえ?」
少年が驚くのも無理はない、そのチーフの電話の声を聞いたらだれでもそうなるだろう、なぜならチーフの声は、まぎれもなく「女性の声」になっていたのだから。そして女社長は又、少年を観察してもいたのだ。
「隠さなくっても良いのよ、こんなバイト料も安くてハードな仕事なのに、君ったらいつも楽しそうに一生懸命やってくれていた、、わたし、何度も見たのよ。人っ気のなくなったブースで、君が[人形]を見つめている真剣な表情には、いやらしさなんか微塵もなかったもの。」
「さてと・・・意思確認は出来たって訳だから、、それじゃそろそろ試験に入ろうかしらね。そのブラウスのスカートを脱ぎなさい。チーフ?あれは?」
【ん、、そこに用意してあるぞ。でさ?俺も支度するの?】
「何よ、面倒臭そうな顔しちゃって、、一応しておいてよね。」「脱いだわね。それじゃここの椅子に腰掛けて、手首を後ろに回しなさい。まずは、動けないようにしてと。」
スチールパイプの椅子に座らせてた少年は下着とブーツだけの自分の姿に恥じらいを見せていた。女社長はそんな少年のメンタル面の変化を内心で喜びながらも、無表情を装って少年を縛りはじめた。
最初に椅子の背に回した少年の腕を、両肘がひらかないように縄をかませて
から、その縄尻を胸の上下に巻きつけて、胸と腕を一体にしてガッチリと固定してから、やっと手首を一つに縛る。この縛り方には女社長の少年への思いやりが込められているな・・・チーフは自分の準備の合間に、見た「縛り」の手順からそう感じた・・・。
なぜか?、、普通なら抵抗力をなくす為に縛る、、その為には手首から先に縛るのが当然だし、あまり読者の危険負担を考えないSM雑誌の「縛り方教室」とか自称ちんけな「ご主人様」が陥るパラドックスとしても、それが常道だと勘違いしているのが現状だが、S役とM役の双方が、緊縛プレイ夢中になり過ぎるあまり、万一緊縛されているM側がなんらかのパニックや身体的な危機に陥った時の事を真剣に考えるならば、手首を最初に解けるような順番で、拘束することを念頭におかなくてはいけない。
その為には、手首を一番最後に縛る・・・その点をチーフはしっかりと見ていたのだ。
女社長の手さばきは見事だった。上半身を縛り付けると同時に別な縄で、少年の胴体をスチールパイプ椅子にがっちりと縛り付けた。続けて少年の足首に幾重にも縄を巻きつけてから膝の上下も一つにくくった。途中で少年が もがいても足を動かす事ができないように、パイプ椅子の足と少年の足首を縄で繋ぐ徹底ぶりには、それを見ていたチーフも感心していた。
少年の穿いているストッキングが、足首のあたりで よじれて淫靡な波皺になっている。足首から準々に絞り上げるようにして掛けられた縄は、女性の柔らかい肌に変身した少年の女體にギシギシと食い込んで、その音はさらなる興奮を助長していった。
「本当はこうされるのも 嫌いじゃなかったのね。それじゃ[お人形]になった君にぴったりの猿轡をプレゼントしてあげるわよ。口を開けてご覧なさい。ほら!」
「・・・むむんんっっっ・・!!」
どんなにもがいてみても、もうどうしようもない。すでに決心を固めていたとは言っても、これからの人生の変化を強制された上に、こうして手足を縛られただけではなく、今、まさに言葉も奪われようとしている少年は無意識にそれを拒んでいた。
「う、うぐぅぅぅ、、、」
「解るけど、どんなに もがいても無駄なのよ。[お人形]さん。」
それでも自由の残った首を振って、必死に抵抗してしまう [人形]に封印された少年の頬を力任せに掴み絞る女社長の力は、頬の肉がバリバリと千切れそうなぐらいの激痛だった。いくら逃出そうとしても、少年の足首に巻かれた縄はしっかりと椅子の脚に結束されており何の抵抗も出来ない。
その瞳に涙を溢れさせながら戸惑いを見せる少年に対して、女社長はなおも少年の両頬をつかみ力をこめると、少年が頭をのけぞらせて大きく口を開けた。
今だ!、、そんな女社長の声が聞こえそうな絶妙のタイミングで、すかさず少年の口に詰め込まれた布切れ。だが女社長の体当たりに近いアクションに、自由の効かない少年と彼女はバランスをくずして、そのまま2人とも転んでしまった。
ストッキングを吊ったガーターベルトの一本がその反動で外れて穿いていたパンティの端が丸いヒップの頂点から股間の方までズリ下がっていた。
「ごめんごめん、痛かったかしら?」
猿轡を噛み締めて、涙をこらえて顔を振る少年は、口に詰め込まれた布切れの為に、その叫び声は 湿めってくぐもった呻き声に変わってしまっている。
だが口では なだめながらも、女社長の手は少しも休む事がなかった。
用意してあった手拭いを少年の唇を割って 「噛み猿轡」を噛ませた女社長は、詰め込んだ布切れを自分で吐き出せないようにスポーツテーピング用の布テープを貼った。最初は口の上を一文字に。その次に大きくバツ印を描くように口の回りに貼ると、大きめのネッカチーフで、その少年の鼻と口を完全に覆うような猿轡をがっちりと嵌めて、頬がくびれるほどに固くギシュギシュと絞り音がするぐらいに引き絞るとようやく首の後ろでぎっちりと結んで縛った。
「んぐうっ・・・・!」
その猿轡が与える苦痛に思わず呻き声を漏らした少年だったが、後ろ手に縛られていては払いのける事も出来ずに、ただもがくだけしかなかった。下着姿で縛られて猿轡をされた[人形]の中には、少年が封じ込められている事を想像すると、不思議な興奮してしまうのは筆者だけであろうか。
「さてと・・・どう?こんな本格的な猿轡、、嬉しいでしょう。、ねえ?これ何かしら?君のバッグにしまってあったんだけど・・・・」
「あふっ!」
「さっき着替えさせる時にも見てしまったけど、これ、、[マネシタ電気]の[ソレヨ]でしょ?それに[毛抜き]・・・君の脚、、それから顔、、年頃の男の子にしたら、いつもツルツルで顔なんか剥きたてのユデタマゴみたいだった。」
「・・・・・・」
「あら、そんなに眼をウルウルさせちゃって、君って可愛いのね。、、、さぁ、あっちの出来損ないの[人形]は・・・・」
女社長が、その顔に浮かべていた微笑みがスッと消える・・・その視線の先には、あの女囚の[人形]が、ディスプレイベースの上で静かに佇んでいた。
念入りに縛られた肢体はそれだけでも呼吸すら危うい程なのに、さらに荒縄で天井から吊下げられて、足袋に包まれた足先はゆうらゆぅらと宙を舞う。全身に食い込む荒縄の苦痛を猿轡を噛み締めて耐える表情には苦悶を張り付かせている・・・
それは観る側にしてみたらあくまで[人形]が演じる奇譚のヒトコマでしかないし、その展示ブースを通り過ぎてしまえば、ものの数分もしないうちに、次のアトラクションに心は奪われてしまう、だからこそ主役は[人形]なのであり、又[人形]でなかったら、いくらそれが趣味だからと言っても、生身の人間であればとうに失神してしまっている程の肉体的虐待なのだ。
「1日頑張って疲れてるみたいだね、、眠いんじゃないのかい?それっ、揺りかごだよっ!」
ギシッ、、ギシシュン、、、ギシシュン、、ギシシュン、、
{・・・・・・・・・・}
キシシュッッ、、ギシュッッ、、ギシュッッ、、、
「ふん、、そうやって何の能もなくぶらさがってるのが、お前にはピッタリさ!それからこれは、うちの大切な[人形]の顔に煙草の吸い殻を押付けてくれた御礼だよ!その[女囚人形]の顔が元どおりに治るまで、そこでそうして代役をしてもらうからね、それっ!」
ギシシュン、、、ギシシュン、、ギシシュン、、
、、、キシシュッッ、、ギシュッッ、、ギシュッッ、、、
{・・・・・・・・・・・・・・}
テント内に響くのは、女社長の狂ったような叫びと、彼女に思いっ切り 押されて、まるでブランコの様に揺れる、天井の梁から、ぶら下がった[人形]が奏でられる縄のきしむ音だけだった。
その大きな揺れは遠心力に素直に従って、吊り下げた[人形]をくくってある縄に集中させ、体重の何倍もの負荷をプラスして、ふたたび[人形]のボディに喰い込んでいく。その失神も出来ない程の激痛にも[人形]の表情は何も変わらないが、振り子のように揺れつづける[人形]の瞳から流れ出た幾筋もの液体だけが、観客のいない床に滴り落ち続けた。まるで生身の人間のように・・・
「ああ、いい気味だわ。、、さてと、君の方はできあがりよ。暫くそうして感触を楽しんでいてね。あの馬鹿オンナと同じ顔の[お人形]に詰め込まれて縛られたご気分はどうかしら。」
「ふんぐくうぅぅぅっ・・・!!!」
「でも、明日になってカレシが迎えに来た時に、同じ顔が二つもあったら、いくらなんでも変でしょ。だから仕方がないのよ。、、あら?そろそろ時間かしら。」
パイプ梯子に縛り付けられて身動きのとれない[人形]は頬に食い込むほどの厳しい猿轡をはめられたまま 身動きもしなくなった。気のせいだろうか?その頃から やけにその[人形]の露出している肌の部分が輝きと光沢を増して、まるでガラス細工か陶製品のような雰囲気になってきたように見えてしまうのは・・・
・・・・そろそろ時間かしら。・・・・女社長がポツリと言った一言がやけに気に掛かる
≪万国人形大博覧会(1)≫
<完>
【続く】
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