質問 041118a: 「適者生存」って何ですか?

karthaus@photon.chitose.ac.jp

English


答え:「適者生存」とは個体群の全ての子孫から環境にもっとも適応したものが生き残るという意味です。
「適者生存」は進化論の基本原理である「突然変異及び淘汰」における淘汰の仕組みです。淘汰なしでは、進化なし。
では「適者生存」は進化の議論に利用できるでしょうか。
いいえ。ここに詳しい答えがあります。

「最も適した個体」が生き残るのだというのは本当でしょうか?「適応できない個体」は死ぬのだということではないのでしょうか?いえ、これは言語学の意味論などではなく、非常に大きな違いがあります。このことについて、一緒に見ていきましょう。
 あなたが2羽のウサギを飼っていて、足の遅い方が狼に食われてしまうとします。このウサギは病気かまたは両脚がちゃんと動かないために、仲間のウサギより走るのが遅いかもしれません。こうして、子孫を残す前に狼に食われてしまうため、より弱い方の遺伝子は次の世代に広がることはないのです。さて、とても走るのが速いウサギでも、赤ん坊のときは狼に食われてしまうリスクを負っています。このウサギが成長したなら、最も適した個体となって生き残り、子孫を残すことになります。しかし、ウサギは赤ん坊のうちは自分より弱い兄弟と何ら違いはありません。
 「適者生存」は、繁殖能力を持つ年齢に達した時に、その個体が生き残っているかどうかによって決定されますが、その個体が生き残るか否かが、繁殖能力を持つようになる前に決定づけられることがしばしばあります。
 もう一つ別の例を見てみましょう。1匹の鮭は4千個の卵を産みます。平均するとわずか2匹だけが生き残って親になり、産卵したり、精子を放出したりします。なぜ生き残ったわずか2個の卵が最適の親になるのでしょうか。4千個のうちの2個の卵がたまたま成長して大人の鮭となるだけのことではないでしょうか?適応できない個体(小さめのヒレや弱い嗅覚の個体)は、必然的に途中で死んでしまいます。しかしたとえそれらを備え、潜在的に泳ぐのが速い個体であっても死ぬのです。このように、自然淘汰は、最適な個体を生存させ、より高等な種へと進化することにはなりません。むしろ、適応できない個体が死ぬことは、集団が非常に安定して存続することを確実なものとするのです。より弱い個体は選り分けられるのです。ですから、適者生存は進化のメカニズムとはならないのです。


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